h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1984.02.05

A Study of the Effect of Ca-antagonist on Myocardial Ischemia Part 1 : Clinical Study

狭心症は,冠動脈の機能的・器質的障害にもとづく心筋の酸素需要と供給の不均衡によ り生じる一過性の心筋虚血状態である.狭心症には,その病態により心筋の酸素需要増加 に対し供給が不十分な結果生じる労作狭心症と,需要とは無関係に主として冠動脈攣縮に より供給が一義的に減少する結果生じる安静狭心症とが存在する.その治療には需要を減 じる薬剤または供給を増加させる薬剤ないしは攣縮を抑制する薬剤が適応となる. Ca2+拮抗剤であるdiltiazemを用い冠動脈造影にて有意冠狭窄を証明した11例につい て,トレッドミル運動負荷法を用いて運動耐容能を検討した.Diltiazemは運動負荷試験 4時間前にそれぞれ30mg, 60mg,90mgの1回投与を行った.Diltiazemは最大運動時間,狭心痛発現時間, ST低下(0.1mV)発現時間をそれぞれ有意に延長させた.これらの延長はdiltiazem投与量の増加とともに明らかとなった.Diltiazem投与により安静時および一定運動負荷時の収縮期血圧・心拍数・pressure-rate productはともに減少したが,最大運動時の値はいずれも有意な変動を示さなかった.またST低下(0.1mV)時 のpressure-rate productは有意ではないが増加傾向にあった. 以上の成績より,diltiazemの運動耐容能に及ぼす効果には,主として心筋酸素需要量の低下による因子が大きいが,冠血流量増加や心筋細胞レベルでの保護作用など虚血心筋 に対する効果も関与している可能性が示された.

1984.02.04

The Effect of PCMB on Na -K -ATPase Activity

グルタチオンの酸化に適切な薬物であるP-chloromercuribenzoic acid (PCMB)を10-4Mで作用させ Tyrode’s solutionで5時間培養後のブタ水晶体のNa+-K+-ATPase活性,Na+/K+ratio, ATP含量並びにグルタチオンについて測定した.結果は次のとおりである.1) 10-4M PCMBを作用させた場合,インキュベーション5時間後にはNa+/K+ratioは0.21から0.67まで上昇した.2)ブタ水晶体のNa+-K+-ATPase活性は牛水晶体のそれに比べて高く,両者の間には明らかに有意差が認められた(p<0.1%).3) 10-4M PCMBを5時間作用させると,ブタ水晶体のNa+-K+-ATPase活性は36%抑制された.4) 10-4M PCMBを5時間作用させると,ブタ水晶体のGSH含量は16%抑制された.5) 10-4M PCMBを5時間作用させると,ブタ水晶体のATP含量は6%抑制され,一方ADP含量は27%抑制された.

1984.02.03

A Study of the Neurophysiological Effects of Lithium

正常者と躁うつ病患者について,治療濃度域のリチウムによる神経生理学的影響を検討するためVEP, SEP, CNVおよびMCVを用いてmultimodalな研究を行い,以下の結果を得た.1) 正常者群では CNV振幅とSSEP・N18振幅の増大,SEP・P24潜時の延長並びにVEP振幅の増大が認められ,CNVとSEPの変化は可逆的であった.2)両群のCNV振幅と患者群のSEP・N18振幅は,血漿リチウム濃度との相関が認められた.3)患者群のCNV振幅は,服薬中正常者の場合と同程度であり,非服薬患者では,きわめて低振幅であった.4) MCVは正常範囲内にとどまった.以上の結果からCNVとSEPの振幅増大がリチウムに特異的な反応であり,これらの所見は,服薬期間中持続するものと考えられた.リチウムの神経系への影響は,末梢よりも中枢に対して優勢であり,皮質のみならず皮質下に対しても広範に作用していることが示唆された.

1984.02.02

Comparison of Stretch Reflex of the Paraspinal Muscles in Normal Subjects and Hemiplegics

正常者30例,右片麻痺20例,左片麻痺20例について,第1 ・第2腰椎棘突起間を電磁ハンマーにて叩打することにより第1 ・第3腰椎の左右両側背筋から伸張反射を誘発して筋電図に記録し,その潜時,閾値,振幅の比較と体位・頭位・筋層の影響について検討を加え体幹筋の動態を明らかにすることを試みた.1.片麻痺群は,正常群と比較して背筋伸張反射の潜時は短く,閾値は大きく,振幅は小さい測定値を得た.ただし,表面電極誘導のLlレベル腹臥位, L3レベル背臥位における振幅は,左片麻痺群が大きい.片麻痺群間の比較では,表面電極誘導において,左片麻痺群は,右片麻痺群と比較し,背筋伸張反射の潜時は短く,閾値は小さく,振幅は大きい.針電極誘導では,レベルと筋層により測定値が異なり,振幅については,浅層で右片麻痺群,深層で左片麻痺群が大きい.2.体位の影響を振幅についてみると,正常群では,右側の背筋に見られLlレベルでは背臥位, L3レベルでは腹臥位で亢進し,片麻痺群では,右側の背筋では腹臥位,左側の背筋では背臥位で亢進した.3.頭位の影響を振幅について見ると,正常群では,頭位より抑制され,深層筋では左向きで右側の背筋,右向きで左側の背筋の抑制が見られた.片麻痺群では,深層筋において,右向きで右側の背筋の亢進,左向きで左側の背筋の抑制を認めた.4.筋層の影響を振幅について見ると,正常群では, L3レベル両側の背筋で浅層にて亢進を認め,片麻痺群では,右側の背筋において右片麻痺群では浅層で亢進し,左片麻痺群では深層で亢進を認めた.以上の結果より,背筋と四肢筋の中枢制御機構はかなり異なるものであり,その因子として,背筋と四肢筋の筋線維構成とその機能の差によるものも考えられる.また,背筋伸張反射は,麻痺側に関係なく緊張性迷路反射,緊張性頸反射の影響を受けていると考えられ,これも四肢筋と背筋の中枢制御機構の違いを示唆するものと思われた.今回の実験では,筋層については,特に左側の背筋の脊柱起立における械能の重要性を示すものと考えられる.

1984.02.01

Deactivation of Contractility Induced by Active Shortening in Frog Skeletal Muscle

骨格筋が短縮するとその収縮能が低下する,あるいは,短縮の制限されるときは収縮能が増大し延長する,という特性を説明するために,短縮中の筋に新たな負荷を急激に加えたときの負荷維持能力およびその後の短縮速度を測定した.等張力性強縮の短縮しつつある筋に追加の負荷を急に加えると,その筋は一たん引き伸ばされた後,再び新しい負荷のもとで短縮する.もし,負荷の増加が短縮の初期になされるならば,この負荷の増加にともなう伸展は小さいけれども,負荷の増加が短縮の後期にあたる減速期になされるときは,伸展は増大される.負荷の増加分と伸展量との比は,これは短縮しつつある筋の剛度に相当し負荷維持能力を示す値であるが,短縮が進むにつれて減少し,また,負荷の増量分が増すにつれて減少する.負荷が与えられて一たん伸ばされた後,筋は再び短縮するときの短縮速度は,通常の等張力性短縮の速度よりも小さい.短縮したことによる収縮能力の減退が,一度もとの長さに引き伸ばされた後もなお数百msecの間残存していることが示唆される.

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