h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

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1984.03.01

Histopathological Study on the Cardiac Amyloidosis

110例の全身性アミロイド症心臓の病理組織標本を研究した. 110例の内,アミロイド変性が見られたのは104例(94.55%)であった.原発性アミロイド症と続発性アミロイド症の病変の程度は骨髄腫を合併するものより強かった.心内膜層,心筋層,心外膜層,心弁膜及び特殊心筋などを詳細に検索して,心臓のアミロイド変性はまず心臓の血管病変と密接な関係にあることがわかった.しかし心臓アミロイド変性の発生病理には特定の細胞だけが関与しているのでなくて,血管内皮細胞,心筋細胞,特殊心筋細胞,心内膜内皮細胞,線維芽細胞などの非特定性多種類な細胞が関与しているものと推定した.

1984.02.19

A Case of Secondary Hyperparathyroidism Accompanied by Remarkable Calcification in the Cardiovascular System

慢性腎不全で血液透析を開始して8年になる患者の二次性上皮小体機能亢進症を経験した.症例は32歳,男性. 3年前より全身?痒感,関節痛,下痢を訴え, 1年後には心膜の石灰沈着による収縮性心膜炎を併発し,心外膜切除術をうけた.術後一時的に症状は軽快したが,心膜の石灰沈着,?痒感,関節痛がなお進行してきたため,手術目的で来院した.入院時,血清Ca 4.6mEq/1, P 3.4mEq/1, PTH-C末端25. 6ng/ml, Al-P 960I.U./lで,心膜,動脈の石灰沈着,頭蓋骨,手指骨,長管骨に変化を認めた.四腺の上皮小体を全摘し,一腺の一部を左前腕の筋肉に移植した.摘出上皮小体総重量は2.30g,組織学的にはび漫性過形成であった. 術後, Ca剤,活性型ビタミンDの投与により血清Ca値をコントロールした.臨床症状は早期より著明に改善された.この症例の経過を報告し,本疾患の手術適応を中心に考察を加えた.

1984.02.18

A Case of a Foreign Body of Long-term Persistence in the Respiratory Tract

症例は11歳男児,咳嗽を主訴に約2カ月間気管支喘息として加療を受けていたが,難治性のため近医にて胸部レ線を施行したところ,右肺門部に異常陰影を指摘された.全身状態良好で,深呼吸時に右前胸部に喘鳴を聴取.異物は割ピンであり,右主気管支より全身麻酔下にventilation bronchoscopyを用いて摘出した.

1984.02.17

Squamous Cell Carcinoma of the Renal Pelvis

全身に広範な転移を伴い,全経過10カ月で死亡したが,生前の確定診断が困難であった腎盂扁平上皮癌の2剖検例を経験したので報告する.第1例は右鼠径部リンパ節腫大を,第2例は腰痛を主訴として入院し,両者とも腎盂腎炎,尿路結石を合併したが,顕微鏡的血尿のみで肉眼的血尿はなく,排泄性腎盂造影上,前者では排泄障害が,また後者では腎盂の描出がなかった.文献的考察から,腎盂扁平上皮癌はその発生は稀であるが,本報告例でみられたように予後が非常に悪く,尿路感染症または結石症を伴うことが多いと一般にいわれているので,それらの合併を伴い排泄性腎盂造影上に異常のある患者に対しては,いつも本症の可能性を考慮して注意深く検討する必要があると思われる.

1984.02.16

Adriacin Ointment Therapy for Metastatic Skin Cancer

乳癌の皮膚転移例に対する福田らのアドリアシン軟膏療法に注目し,耳下腺未分化腺癌の皮膚転移例に使用したところ好結果を得たので報告した.基剤としてはポリエチレングリコール(PEG)を使用し,0.5%のアドリアシン軟膏を作製した. PEGは吸湿性,混合性及び主薬の皮膚面からの吸収にすぐれており,抗癌剤の軟膏作製における基剤としては適していると思われた.アドリアシンは全身投与では非常に強い副作用をきたすが,軟膏として使用した場合副作用は全く認めなかった.一方アドリアシン軟膏は皮膚面からよく吸収され,すぐれた抗腫癌性を示したが,単独では効果に限界があった.今回COMFP療法を併用し,好結果を得たが他の抗癌剤との併用を考慮し,改良を加えるのが今後の課題と思われた.

1984.02.15

Two Cases of Retarded Depression Following Anxiety Attacks

典型的急性不安発作で始まり,不安神経症としての臨床像を完成させたのちに,ある期間をおいて,抑制症状を主とする典型的うつ病像を呈した2症例を報告した.いずれも,うつ状態の時期には先行した不安神経症像は全く消失していた.治療的には,抗うつ剤による薬物療法を中心とした,うつ病に対する治療によって, 2症例とも完全寛解に達した.このような症例の診断学的位置づけについては治療反応から,うつ病とすべきであろうが,先行する神経症像をうつ病の前駆症状ないし仮面うつ病相とすべきか,不安神経症とうつ病の合併と考えるべきか,尚,今後の検討を要する.

1984.02.14

A Case of Intermittent Cauda Equina Claudication

馬尾性間歇性跛行の1例を報告した.症例は56歳,女性.間歇性跛行,両下肢のしびれ感を主訴に入院した.腰椎Ⅹ線写真で, L4椎体の軽度の前方へのすべり,骨棘形成を認めた.ミエロゲラフィーとメトリザミドCTでは,L3~4,L4~5,L5~S1椎間部に一致して脊椎管腔の著明な狭窄を認めた.本例は先天性素地の上に変性が加わって発症した混合型腰部脊椎管狭窄症による馬尾性間歇性跛行と考えられた.

1984.02.13

A Neuropathological Study of Shy-Drager Syndrome

Shy-Drager症候群を呈した1剖検例について述べ,本症例とShy & Dragerの報告例との比較検討および本症候群の独自性について考察を行った.症例は遺伝歴を有しない60歳女性で, 45歳頃より下肢のしびれ感,軽度の知覚鈍麻で発症し,起立性低血圧,尿失禁,起立・歩行障害を来し,無呼吸発作の後は急速に全身状態が悪化し,約15年の経過で死亡した.病理学的には主に,小脳,黒質,橋,オリーブ核,脊髄,交感神経節,骨格筋に変性が認められた.小脳では虫部,両半球にPurkinje細胞の著明な脱落とBergmannグリアの増殖があり,髄質では脱髄と,ゲリア増殖がみられた.黒質の神経細胞は中等度脱落し,メラニン顆粒は一部遊出していた.橋では橋底部が萎縮しており,橋核神経細胞脱落と横橋線経の脱髄がみられた.下オリーブ核の神経細胞は著明に萎縮脱落していた.脊髄では中間外側核および背側核の神経細胞の高度の脱落,前核細胞の軽度の脱落,仙髄Onuf核の萎縮,前・後脊髄小脳路の軽度の脱髄がみられた.本例はShy & Dragerがfu11 syndromeとして述べた症状のうち主なものを伴っており,臨床的にはShy-Drager症候群の診断がつけられた.しかしShy-Drager症候群の例が本例の如くOPCAに近い症状を現わすことは多くあり,さらにShy-Drager症候群と診断された例の中にはparkinsonism様症状を呈することも少なくない.本例は臨床的には強い神経症状を伴ったShy-Drager症候群であるが,神経病理学的にはOPCA型の病変をもつmultiple system atrophyであることが確認された.

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