h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1982.02.11

Pleuropneumonic Patients with Severe Chest Pain : Report of Three Cases

臨床症状,胸部Ⅹ線像,臨床経過の極めて類似した胸膜肺炎の3例を報告した.症例は37歳, 50歳, 52歳の男子で,いずれも発症前は健康で,突然の胸痛,発熱,咳嗽で発症しており,喀痰は少なく膿性でなかった.胸部Ⅹ線像では,比較的均等な浸潤影と胸水および胸膜の肥厚像が特徴的であった. 3例とも胸水の穿刺排液は困難であり,少量の滲出液を認めたのみで,症例1のみ培養でPeptococcusが認められた.いずれも臨床経過は類似しており,抗菌剤投与により1~2週間の経過で改善した. これら3症例の検討により,以下のことを考えた; 1)突然の激烈な胸痛をきたす疾患として胸膜肺炎が存在する. 2) 1年3カ月の間に,このような胸膜肺炎を引き続いて3例経験しており,最近増加している可能性がある, 3)病因を確定することはできなかったが,異なった病因により類似の病態が引き起こされた可能性もあり,今後このような症例に対しては,宿主側および病原側の両方からの詳細な検索が必要である.

1982.02.10

Studies on the Dynamics of Human Chorionic Gonadotropin Accumulation to the Gonad

Human chorionic gonadotropin (hCG)の性腺集積性に着目しその動態をSprague-Dowley系ラットについて検討し次の結果を得た. 1.全身各臓器の集積を125I-hCG/131I-HSA比により表わし経時的に観察した結果125I-hCGの単位重量当りの集積は,卵巣>腎>尿>精巣となった,また卵巣の集積は投与後2時間から6時間にかけ高値を持続するのに対し,精巣の集積は投与30分より6時間まで漸増したが低値であった. 2. 72時間後の各組織における125I-hCGの残留量は腎が最大であったがその値は0.138土0.013% dose/g of tissueであった. 3. 125I-hCG投与2時間後の投与量に対する各臓器当りの分布量は卵巣2.4%,精巣1.9%,腎12.5%,肝8.1%,肺0.8%,脾0.8%であった. 4.卵巣の集積と性周期の関係については, proestrusが最も高い値を示したが他周期との有意差はなかった. 5.各組織の有効半減期はfast phase 3.0-6.8, slow phase 16.2-30.1時間であった. 6. 125I-hCGに対する性腺内結合部位数は卵巣と精巣では単位重量当り卵巣が精巣の23.8倍であったが性腺全体ではほほ同じとなった. 7. FSH前処理により対照の約4-10倍hCG結合部位が誘導された.

1982.02.09

Autoradiographic Study on Epidermal Proliferation Following the Immune Complex Induced Reaction

Horseradish peroxidase (HRP)で感作したモルモットの腹部皮膚にHRP 100μg,10μgをそれぞれ皮内注射し,又,同様にbovine serum albumin (BSA)で感作したものにBSA 100μgを皮内注射し,Arthus反応を惹起させた.そして1, 4, 8, 24, 48,72時間後に生検し, 3H-thymidineを使ったオートラジオグラフィーで表皮基底細胞の標識率を算出し,Arthus反応が表皮のDNA合成能に及ぼす経時的な影響を未感作のモルモットにHRP 100μg, BSA 100μgを皮内注射したものと比較検討した. さらにモルモットの健常腹部皮膚にHRPとantiHRP IgGにより調製した不溶性immune complexを皮内注射し,抗原のみを皮内注射したものと比較検討した.これらの結果は以下のごとくであった. 1. HRP 100μgで惹起したArthus反応では, 1, 4, 8時間後に標識率は減少し,未感作のモルモットにHRP 100μgを皮内注射した群に比べ著明に低値であった. 2. HRP 10μgで惹起したArthus反応では, 1, 4, 8時間後において減少傾向はなく,HRP 100μgで惹起した群に比べ著明に高値であった. 3. BSA 100μgで惹起したArthus反応では, 1, 4, 8時間後において減少傾向はなく,未感作のモルモットにBSA 100μgを皮内注射した群に対し, 1時間後は低値であったが,4, 8時間後では差はなかった. 4. 24時間後,すべての群で標識率は高値を呈したが, 48時間後も,対照群が著明に減少したのに対し,Arthus反応群では高値を保持した. 5.健常皮膚へのimmune complexの皮内注射4時間後の標識率は抗原だけを皮内注射した群より低値であった. 以上の結果より Arthus反応は24時間目以後,表皮のDNA合成能を高める一方,強い反応を惹起した時は8時間目までそれを抑制することが示唆された.

1982.02.08

Usefulness of Amyl Nitrite Inhalation Test with Systolic Time Intervals in Evaluation of Coronary Artery Disease – Clinical and Experimental Studies –

① 冠動脈疾患(CAD)の精査の目的で入院した77例の患者に,左室収縮時間(STI)を指標として亜硝酸アミル(AN)負荷を行ない,これがCADの冠予備能を把握する手段として臨床的に用い得る可能性について研究を遂行した. ② 臨床的研究では, AN負荷によるSTIの変化率とCADの重症度との関連を検討した. ③ AN負荷時,対照群(25例)ではET/PEPは著明に増加(2.91→4.01)した.一方CAD群(52例)では低値(2.52→2.96)にとどまり,両群間の差は推計学的に有意(p<0.001)であった.④ CAD群におけるET/PEPの変化率(⊿ET/PEP)は,多枝病変群が一枝病変群に比し低値であった. ⑤ ⊿ET/PEPは,一枝病変群では安静時駆出率と正相関(r=+0.53)を示したが,多枝病変群では相関を示さず,駆出率が正常でも⊿ET/PEPが低値にとどまった例が多く,心ポンプ機能以外の因子の関与も考えられた. ⑥ 心カテーテル検査で,対照群ではAN負荷により dp/dt・maxが著明に増加し,CAD群との間に有意差がみられた. ⑦ 実験的研究では,冠狭窄犬(25頭)を作成し, ANの冠血流量および局所心筋収縮機能に与える影響について検討した. ⑧ 冠動脈非狭窄時, AN負荷により冠血流量および心筋短縮率は著明に増加した. ⑨ 一方冠動脈狭窄時には,冠血流量および心筋短縮率はAN負荷後早期に軽度増加したのみで,両者ともその後負荷前より低値を示した.この変化は冠狭窄の程度を増すに従って明らかになった. ⑩ これらの結果から, AN負荷による⊿ET/PEPの異常反応に関与する因子として, a)心ポンプ機能の良否 b)冠狭窄の病変数と程度の両者が考えられた. ⑪ AN負荷試験によるCAD検出率は, JET/PEPの増しが30%未満を基準とすると,感受性92%,特異性84%,陽性適中率92%であり,また本法の再現性も良好(r=+0.93)であった. ⑫ 以上の成績から,STIを指標とした AN負荷試験がCADの冠・心予備能を把握する一手段として簡単かつ安全に臨床に用いうる可能性が示された.

1982.02.07

A Follow-up Study of Psychogenic Impotence

昭和49年以後約7年間に,川崎医科大学附属病院精神科を受診した機能性インポテンツの68例に対し,郵送によるアンケート方式で予後調査を行い,転居などによる住所不明12例を除く56例中20例(35.7%)により回答を得た. 20例の内訳は,新婚インポテンツ9例,神経症性インポテンツ8例,その他の心因性,精神病性,精神遅滞性インポテンツの各々1例であった. 調査結果により,新婚インポテンツでは殆ど全例が性能力,性生活に満足し,パートナーとの関係も良好であった.しかし,神経症性インポテンツでは,未だ性能力,性生活に対し不満足と答える例が3分の2を示し,また,パートナーとの関係も悪い傾向がみられた. 以上の点から,新婚インポテンツでは予後が良い傾向がみられ,神経症性インポテンツでは予後は必ずしも良くない傾向がみられた.また予後を左右する因子の1つとして,パートナーとの対人関係が重要であることが示唆された.

1982.02.06

On Induction Process of Experimental Mouse Plasmacytoma

パラフィン・アジュバント腹腔内投与で誘導されるマウス形質細胞腫の発生過程の病理像を観察した.腫瘍発生にウイルスの関与が疑われているため,マウス白血病ウイルスであるGrossウイルスをBALB/cの哺乳マウスに接種して,その影響をみることにしたが,初期の変化には全く関係がない.本報告では腫瘍化の前段階の変化,すなわち実験的形質細胞腫発生の場である腹腔oil-granulomaの病理形態的動きを中心に,全身臓器の変化について記載した.

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