h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2024.05.30

A case of huge thyroid cyst with colorless and transparent fluid

甲状腺嚢胞は臨床上よく遭遇し,その嚢胞液は褐色であることが通常であるが,今回無色透明の嚢胞液を貯留していた腺腫様甲状腺腫の1例を経験したので報告する.90歳の女性.他院入院時のCT 検査で巨大な甲状腺腫瘤を認めたため当科紹介となった.頸部超音波検査で右葉に巨大な嚢胞性腫瘤を認め,嚢胞液細胞診を施行した.良性の嚢胞と診断されたが,無色透明であったため嚢胞液の生化学検査を施行したところwhole PTH は4 pg/mL 未満,サイログロブリンは5,432 ng/mL であったため,甲状腺由来の腫瘤と診断した.術後病理結果は腺腫様甲状腺腫の診断であった.腺腫様甲状腺腫を中心とした甲状腺内の嚢胞液は淡黄色や褐色調であることが一般的で,嚢胞液が無色透明の場合は副甲状腺嚢胞を最も考える.甲状腺由来の嚢胞で貯留液が無色透明であった大変珍しい症例を経験した.

2024.01.22

Parathyroid adenoma diagnosed following a more than 10-year disease-free interval after initial treatment

原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT)は,腺腫,過形成,癌によって引き起こされる.多くは腺腫が原因となり,通常は単発であるが,稀に多腺腺腫を伴うことがある.今回我々は,初回治療から10年以上の無病期間を経て発症した副甲状腺腺腫の1例を経験した. 症例:45歳,女性.家族歴に特記事項なし.X-12年,原発性副甲状腺機能亢進症 (PHPT) に対し,左上下副甲状腺摘出術施行.左下副甲状腺腺腫の診断であった.以降は他院にて,血液検査で経過観察を行っていた.X年から高Ca 血症の再燃を認め,同年,右上下副甲状腺摘出術+副甲状腺自家移植を施行した.病理組織学検査,臨床経過から右下副甲状腺腺腫の再燃と診断した.既往歴に直腸神経内分泌腫瘍があることなどから,MEN 1遺伝子検査を行ったが,変異は認めなかった.副甲状腺腺腫はPHPT の原因で最も一般的であるが,ほとんどが単発で発生し,多腺腺腫は稀である.また,本症例は初回治療から10年以上経過し出現しており,極めて稀な症例と考える.

2023.12.21

Preoperative suspicion of parathyroid carcinoma based on clinical findings in a patient with primary hyperparathyroidism

副甲状腺癌は臨床頻度が少なく穿刺吸引細胞診も禁忌とされている事から術前診断に苦慮する場合がある.今回,臨床所見から術前診断時に副甲状腺癌による原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT)を疑って手術を行った症例を経験したので報告する.症例は73歳女性.発熱と熱中症のような全身倦怠感にて前医受診.採血検査にてCa 14.0 mg/dL. intact PTH 748.と上昇あり当院糖尿病内分泌内科紹介受診.当院受診時採血検査では,intact PTH 896 pg/mL, Alb 3.8 g/dL, IP 2.1 mg/dL, Ca 14.1 mg/dL. PHPT の診断にて当科紹介受診.頸部超音波検査(US)で左下副甲状腺は辺縁不整,内部粗造,一部に嚢胞様構造を伴い,内部血流の増多を認めるとともに,17.6×27.7×32.4 ㎜と著明に腫大していた. その他の副甲状腺には腫大を認めなかった.99mTc-MIBI シンチグラフィでは,上縦隔に認める腫瘤に一致し強い集積亢進があり,頸部造影CT では縦隔上部に内部LDA を伴う腫瘤性病変を認め,周囲組織や血管と接しているが,明らかな浸潤は指摘できなかった.血清Ca 値の異常高値と辺縁不整で一部被膜外へ突出するUS 所見から,副甲状腺癌を疑い手術を勧め左下副甲状腺摘出術を行った.術後病理組織検査で,腫瘍成分が線維性被膜内に浸潤する像や,被膜外に浸潤傾向を示す部位があり,部位によっては明らかに結節外に進展していると認識できる成分もみられ被膜浸潤と認識できる病変があり,副甲状腺癌の診断であった.原発性副甲状腺機能亢進症における副甲状腺癌の発生頻度は低いが,根治を図る上でも初回手術時に周囲組織を含めたen bloc 切除を行う必要があり,術前診断の時点で副甲状腺癌の診断基準を考慮し的確に診断する事が重要であると考える.

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