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Online edition:ISSN 2758-089X

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2003.04.03

Cord blood transplantation for patients with advanced hematological malignancy *

 我々は4例の進行期造血器悪性腫瘍症例に対して臍帯血移植を施行した。1例は生着不全、1例は生着後急性GVHD(graft versus host disease)にて死亡した。2例は2003年12月現在、移植後それぞれ、17ヶ月、14ヶ月を経過し無病生存中である。移植成功のためにはCD34陽性細胞数の十分な確保と移植前処置にTBI(total body irradiation)を用いることが重要であり、急性GVHD対策としては十分な免疫抑制剤の投与が必要と考えられた。(平成16年1月16日受理)

2003.04.02

Endovascular stent grafting for aortic aneurysms: Initial experience in seven patients *

 大動脈癌に対するステントグラフトによる血管内治療は近年急速に普及しつつあり,本邦においても手技料が認められ,その有用性が報告され始めている.今回我々の施設でステントグラフト留置術を施行した7例においてその有用性について検討した.結果, 7例のうち手技中の動脈壁損傷によると思われる腹部大動脈解離による死亡例が1例あったものの,その他の6例では問題となるような合併症はなく,初期成績についてはこれまでの他施設の報告と比較してもおおむね遜色のない成績であった.
 現時点では大動脈癌に対するステントグラフト留置術は従来手術ハイリスク症例に対してはよい適応である.しかし,デバイスの問題や遠隔期成績など残された問題も多く,今後のステントグラフト留置術の発展のためにはそれらの問題を克服し,適応基準を明確にすることで確立された治療法になるものと考える.(平成16年1月13日受理)

2003.04.01

Examination of allergen specific IgE antibodies by CAP-RAST in 2000 and 2001 *

 2000, 2001年の川崎医科大学耳鼻咽喉科で実施した特異的血清IgE抗体検査(CAP-radioallergosorbent test,以下CAP法)の結果について検討した. 2001年は2000年に比べ約6.5倍のスギ,ヒノキ花粉の飛散が見られ,この結果スギ花粉に対する抗体陽性者が多く見られた.これに対してハウスダストやコナヒョウヒダニといった通年性抗原の陽性率は低下していた.花粉量の変化に関係なくゴキブリやユスリカといった昆虫抗原やカビに対する陽性率に大きな変化はなかった.また,岡山県下では10年前に比べてスギ陽性者が増加,反対にブタクサやヨモギはその陽性率は低下していた.
 陽性率の推移を連続して観察することは医療従事者とアレルギー性鼻炎患者の両方に有用なものと考えられた.(平成15年12月17日受理)

2003.03.07

Effctss of coronary blood flow on intracoronary temperature *

 急性心筋梗塞症例では,安定狭心症例や不安定狭心症例に比べ冠動脈壁温度が高いと報告されており,その機序として動脈硬化病変における炎症が推測されている.同程度の炎症反応であれば,冠動脈血流量も壁温度に関与するのではないかと推察されるが,そのような報告はなされていない.近年,温度センサー付き圧ガイドワイヤ-が開発され,血管内の温度変化を計測することが可能となった.温度センサー付き圧ガイドワイヤーを用いて冠動脈閉塞により冠動脈内温度が変化するか,動脈硬化を有さない成犬を用いて検討した.全身麻酔を行った成犬の右内顎動脈からカテーテルを挿入し, X線透視下に左前下行枝(LAD)末梢まで圧ワイヤ-を挿入した. LAD近位部をPTCA用バルーンで閉塞し,閉塞部より末梢の冠動脈内温度を閉塞後の時間経過に沿って計測した.また perfusion balloonを用いて冠血流を維持した状況で同様の計測を行った.冠動脈閉塞により温度は有意に上昇し(0.01±0.02℃ VS.0.23±0.04℃, p<0.0001),閉塞解除により温度は速やかに低下したが(0.01±0.03C), perfusion balloon使用下で冠血流を維持した場合には温度変化は認められなかった(0.01±0.02-Cvs.0.02±0.03-C, p-NS).冠血流を遮断することにより冠動脈内温度の上昇が認められ,冠血流自体がradiatorとして作用していることが推測された.(平成15年10月27日受理)

2003.03.06

Gene expression analysis of skeletal muscle from mutant caveolin-3 (P104L) transgenic mice: apoptotic signaling trends *

 caveolinは細胞膜のフラスコ状陥入構造であるcaveolaを構成する膜貫通蛋白であり,そのうちcaveolin-3は主に骨格筋に発現するisoformである. caveolin-3遺伝子異常による常染色体優性肢帯型筋ジストロフィー(limb-girdle muscular dystrophy : LGMDIC)の分子発症機構の解明を目的として Sunadaらはヒトcaveolin-3遺伝子変異(Pro 104 Leuミスセンス変異)を導入したトランスジェニック(Tg)マウスを作製した. Tgマウスは病理組織学的に明らかなミオパチーを発症しており,モデルマウスとして有用である.Tgマウス骨格筋では変異caveolin-3 mRNAが過剰に発現する一方で,筋形質膜に局在するcaveolin-3蛋白の欠損が確認されたことから caveolin-3遺伝子変異がdominant negative効果を持つと考えられる.また,従来caveolin-3はnNOSと結合し,その活性を抑制させることが知られているが, Tgマウス骨格筋ではnNOS活性が増加し,筋変性の病態にnNOS活性上昇が関与することが考えられる.このTgマウスにおける筋変性の分子機構解明をすすめるため, DNAmembranearrayおよびgene chipを用いて発現プロファイル解析により病態関連遺伝子のスクリーニングを行った.さらにスクリーニングにより得られた候補遺伝子のうちアポトーシス関連の遺伝子発現をNorthern blot法により解析した,その結果,病態関連遺伝子のスクリーニングで,多くの遺伝子の発現上昇および低下が確認された.また Northern blot解析により,アポトーシス関連遺伝子としてCOXWaLおよびCIDE-A,またアポトーシス抑制遺伝子としてDad-7, Ribophorin IおよびRibophorin Eの発現上昇がみられた.アポトーシス関連遺伝子とアポトーシス抑制遺伝子の発現上昇がみられたことは,骨格筋細胞にアポトーシスを生じるメカニズムが働く一方で,アポトーシスを抑制し筋細胞死を防御するメカニズムがともに働いていることが示唆される.このことから caveolin-3遺伝子変異を導入したTgマウスでは,筋細胞内のアポトーシスシグナル伝達経路の変化が,筋変性の病態に関与している可能性が考えられる.
(平成15年10月25日受理)

2003.03.05

Effects of paraquat on cardiac function *

【背景と目的】
 重症パラコート中毒では急性期にショック状態から離脱できず死に至る症例も少なくない.しかし,パラコートの循環動態への影響に関する報告は少なく,特にinvivoにおいて心収縮性を直接評価したものはない.そこで,本研究では心臓の負荷条件による影響を受けにくいとされている左室収縮末期圧容積関係(left ventricular end-systolic pressure-volume relationship ; ESPVR)を用いて,パラコート中毒急性期における心臓機能-特に心収縮性の変化について検討した.
【方法】
 小動物のESPVRは曲線となるため従来のEesやEmaxなどの指標をそのまま使用することができないので ESPVRを中等度の左室容積(mid-range left ventricular volume ;mLVV)まで積分したPVAr  を定量的な指標として用いた.
 18匹のウイスター系ラットを6匹毎の3群に分けコントロール群,パラコート100mg/kg投与群(PIOO群),パラコート200mg/kg投与群(P200群)とした.開胸下に圧チップセンサーカテーテルとコングクタンスカテーテルを左心室に挿入し,測定したESPVRよりPVAr  を算出し心収縮性の指標とした.同様に左室拡張末期容積(Ved)を前負荷,収縮末期圧を一回抽出量で除した実効動脈エラスタンス(Ea)を後負荷の指標とし,パラコート投与前,投与後10, 15, 20, 25, 30分の心拍出量, PVAmLW, Ved, Eaの変化を観察した.コントロール群には5%ブドウ糖液を授与した.
【結果】
 PIOO群, P200群ともにパラコート投与10分後からPVAn  は有意に上昇していた.P200群ではVedの低下, Eaの上昇,心拍出量の減少がみられhypovolemiaに類似した循環動態であった. PIOO群では, Ea, Ved,心抽出量は有意な変化はみられなかった.
【結論】
 パラコ-ト投与後急性期は,む収縮性が上昇しており,循環動態はhypovolemiaに類似していた.(平成15年10月21日受理)

2003.03.04

An effective enucleation method for murine embryonic stem cells *

 胚性幹細胞(embryonic stem cell以下ES細胞)は,自己複製能とすべての細胞に分化する能力を有する細胞である. ES細胞の核を脱核し患者由来の体細胞核を導入することができれば,既存のES細胞を患者自身の遺伝情報を持つES細胞に造り換えることができる.これによって現在の臓器移植における免疫拒絶の問題を回避できると考えられるが,現在のところES細胞から効率よく核を除く方法は報告されていない.そこでES細胞の脱核法を検討したL マウスES細胞(E14TG2a-EScell)にアクチンを脱重合させるためサイトカラシンBを作用させ,その核を除くためにディスク脱核法と重層遠心脱核法の2種類の遠心法を行った.
 ディスク脱核法により9,000rpmでは約23%, ll,000rpmでは約42%の核を脱核できた. Ficollの25%, 20%, 10%, 5 溶液を重層し,その上にES細胞を乗せて28,500rpm60分間の遠心による重層遠心脱核法では約40%の効率で脱核できた.脱核したES細胞を大量に得る方法としては,重層遠心脱核法が良いと思われた.今後は,電気融合法やセンダイウイルス(HVJ)法を使って,脱核した細胞に体細胞の核を導入する技術を確立しなければならない.(平成15年10月20日受理)

2003.03.03

Experimental study on the control effect of interleukin-10 for secondary damage after acute spinal cord injury *

 脊髄損傷の病態は,神経細胞および神経伝導路の直接外力による損傷とその後に引き続いて起こる二次的損傷に大別される.二次的損傷の進展メカニズムのなかで,マクロファージやマイクログリアなどが放出するサイトカインによる急性炎症反応は,その進展を助長する大きな因子の-つである.また多量の一酸化窒素(NO)は神経毒性があり,活性化されたマクロファージやマイクログリアは誘導型NO合成酵素(iNOS)を発現しNOの産生涯となり,二次的損傷の進展に影響を与える.
 本研究では抗炎症性サイトカインであるInterleukin-10 (IL-10)を急性脊髄損傷ラットへ全身投与し,これによるマイクログリア活性に及ぼす影響について検討し,また組織障害の進展とマクロファージの分布について時間的空間的に評価した.実験にはラットを用い,第7胸椎レベルで椎弓切除後 30gの重錘を1cmの高さから落下させるWeight drop (Allen)法で急性脊髄不全損傷モデルを作成した.脊髄損傷30分後にIL-10を2 Hg/mlを1 ml左大腿静脈から投与したIL-10群と生理食塩水を1 ml投与したコントロール群の2群に分け,それぞれ損傷24, 72時間後に潜流固定を行い,抗OX-42抗体,抗EDl抗体,抗iNOS抗体を用いて免疫組織学的に検討を行い,さらに血清NOx値を測定し,また運動機能障害も検討を行った.
 その結果IL10を全身投与することで壊死組織の進展が抑制され,マイクログリア活性は抗OX-42抗体を用いた免疫染色により24時間後, 72時間後共に細胞形態から活性化の抑制が示唆された.また抗EDl抗体陽性マクロファージ/マイクログリアは両群ともに72時間後に著明に増加していたが,頭側4mm,頭局側6mmと損傷部から離れるにつれてコントロール群IL-10群に有意差を認めた.また貧食形態を有するマクロファージ/マイクログリアは同時に抗iNOS抗体にも陽性であった.受傷前, 30分後, 24時間後, 72時間後と血液を採取し, NOの代謝産物であるN02, NO3-を測定したところ,コントロール群IL-10群ともに受傷後30分には増加を認め,その後次第に低下し,受傷後24時間では両群間に有意差はなかったが, 72時間後では有意差を認めた.さらに24時間後と72時間後に運動機能障害の評価を行い,コントロール群IL-10群とも24時間と比較して72時間後には有意に改善していたが,両群間には差は認められなかった.
 以上の結果からIL-10を全身投与することで,起急性期ではあるがマクロファージ/マイクログリア活性化の抑制により炎症反応の悪循環を断ち,その結果二次的損傷進展の軽減効果が示唆された.(平成15年10月14日受理)

2003.03.02

Role of mitochondria and mitochondorial DNA damage due to oxidative stress in progressive renal disease *

 糖尿病を筆頭として多彩な原因で慢性腎不全が招来されるが,その進展過程には,共通機序が存在すると考えられている.さらに腎内で産生される活性酸素による酸化ストレスの元進が共通機序の一部を構成していることが示唆されている.進行性腎障害におけるミトコンドリアDNA (mtDNA)の酸化的障害,およびミトコンドリア機能異常の存在とその意義について検討した.
 従来,腎内での活性酸素産生を直接検出する事は不可能であったが,活性酸素反応性色素であるdichlorofluorescein-diacetateと共焦点レーザー顕微鏡を用いることにより,腎組織において産生された活性酸素を可視化することに成功した. 5/6腎摘(Nx)ラットでは,コントロール群と比較し,糸球体内での活性酸素生成の有意な増加を認めた.次に,核酸の酸化的障害を8-hydroxy-deoxyguanosine (8-OHdG)を指標として検討した. 8-OHdGの尿中排雅量はNx作成直後には,減少するが組織障害の進展に一致し増加を認めた.腎組織における8-OHdGの局在を免疫組織化学により検討したところ 8-OHdGの蓄積は主に糸球体上皮および内皮細胞に認められた.細胞内では主として細胞質に局在しており,mtDNAへの酸化的障害の蓄積が推測された. mtDNA遺伝子の発現変化を検討すると,呼吸鎖complex I , II構成分子であるNADH dehydrogenase 2及びcytochrome bの遺伝子発現がNx群において低下していた.
 次に,培養糸球体上皮細胞を用いて mtDNAの酸化的障害が細胞機能に与える影響について検討した.ミトコンドリア呼吸鎖酵素群complexI及びⅢの特異的阻害薬を用いたところ,細胞内に活性酸素生成の元進を認めた(p<0.05).また,糸球体上皮細胞を活性酸素により処理することにより,ミトコンドリア膜電位の低下とapoptosisの誘導を認めた.  以上の結果より,進行性腎障害において,糸球体内での活性酸素生成の先進と,その結果生じるミトコンドリア及びmtDNAの酸化的障害が,組織障害の進展に関与していることが明らかとなった.(平成15年10月14日受理)

2003.03.01

Essential role of macrophage-related matrix metalloproteinases in indomethacin-induced enteropathy in rats *

【目的】 Crohn病の実験モデルである,インドメタシン誘発ラット小腸漬癌モデルにおけるマクロファージ関連matrix metalloproteinases (MMPs)の関与について明らかにする. 【方法】 6週齢の雄性Wistar系ラットに,インドメタシン(Indo) 24mg/kgを注腸し小腸縦走漬癌を誘発した.小腸全長に対する全小腸縦走潰癌長の占める割合であるUlcerIndex (UI)と組織学的損傷スコア- (HDS)を用いて小腸縦走潰癌を経時的(投与6, 12, 24時間後 3, 7H後)に評価し,小腸漬癌部におけるMMP-2, -3, -9の発現について, Western blotting, zymography,免疫染色を用いて検討した,さらに小腸漬癌抑制におけるMMP阻害剤の効果を検討するために,まず広域MMPs阻害剤(GM6001)をIndo投与の3時間後に1 , 5, 10, 30mg/kgの用量で腹腔内投与し, 24時間後の小腸漬癌の程度をUIおよびHDSで評価し MMP-3, -9の発現についても Western blotting, zymography,免疫染色で検討した.次に選択的MMP-3阻害剤について,用量を変えて腹腔内授与し,同様に小腸漬癌の程度を評価した. 【結果】小腸漬癌は UI,HDSともにIurio投与24時間後に最大値となったが MMPsではMMP-3が24時間後で最大値を示し,小腸漬癌の肉眼的・組織学的変化と最も相関していた. MMP-9は6-12時間に MMP-2では主に3-7日後に発現のピークを認めた. GM6001は,用量依存的に肉眼的・組織学的に小腸漬癌の発生を抑制L MMP-3の発現は漬癌の程度と相関をもって抑制されていた.さらに選択的MMP-3阻害剤は,用量依存性に肉眼的・組織学的に小腸漬癌の発生を抑制した. 【結論】本研究により,ラットのIndo誘発小腸縦走漬癌発生に,マクロファージ関連MMPs,特にMMP-3が強く関与していることが明らかになった.この結果から,選択的MMP-3阻害剤はCrohn病の治療に応用できる可能性がある.(平成15年10月6日受理)

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