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Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2003.02.07

A case of primary torsion of the greater omentum *

 特発性大網捻転症は大網の-部が捻転し血行障害に陥るもので,まれで術前診断が困牡な疾患である.今回,我々は本症の1例を経験したので報告する.症例は25歳男性,右季肋部痛を主訴に来院した.手術既往はない.炎症反応が高値で,右側腹部に強い圧痛,皮跳痛および筋性防御を認めたため,十二指腸漬癌穿孔を疑い緊急手術を行った.しかし,冒,十二指腸には異常を認めず,右側大網の一部が時計方向に3回転捻転し壊死に陥っていたため大網部分切除術を施行した,本症はまれな疾患であるが,急性腹症の鑓別診断として念頭に置く必要がある.また腹腔鏡下手術が可能であったと考えられた.
(平成15年7月28日受理)

2003.02.06

A morphological and immunohistochemical study on the relationship between central macrophage of erythroblastic islands and sinusoidal macrophages in the mouse fetal and neonatal liver *

 胎生造血期の肝臓に分布するマクロファージと生後の肝常在性マクロファージであるクッパー細胞との関連を検討するため,胎子期から新生子期のマウス肝臓を用い,ラット抗マウスマクロファージモノクローナル抗体F4/80免疫染色と鉄染色による光顕観察ならびに電子顕微鏡観察を行い比較した.肝臓単位面積あたりのF4/80陽性細胞数は肝臓形成初期から生後早期まで急速に増加するが,生後4日と生後13日との間で有意に減少した.F4/80陽性細胞は胎生11日からすでに肝臓内に少数存在し,原始類洞腔でスカベンジャーマクロファージとして大小様々な細胞断片を取り込み,細胞質には鉄陽性封入体が認められた.肝臓造血最盛期にF4/80陽性細胞は造血巣内の赤芽球島中心マクロファージとなり,赤芽球からの放出核をはじめとして大小の封入体を含み,多数の鉄陽性封入体を含有した.造血退縮期の胎生19日で, F4/80陽性細胞は造血巣内に存在するほか,造血細胞と離れ肝細胞間に孤立性に分布した.孤立性のF4/80陽性細胞の多くは鉄反応陽性を示したが,ほかに鉄陰性で小型球形の単核細胞が認められた.生後早期に肝細胞間に孤立性に分布する小型のF4/80陽性細胞は鉄反応陰性であり,高い核一細胞質比を示した.生後13日の肝臓で, F4/80陽性細胞は造血系細胞とは離れ,生後のクッパ-細胞と同様に頬洞壁に限局し,鉄陽性封入体を含まなかった.新生子期の肝臓には,アポトーシスならびにdarkcell formationの過程を経て細胞死にいたる大型マクロファージが認められた.新生子期は肝造血の退綿に伴って肝臓マクロファージにも著しい変化がみられる特異的な期間であり,卵黄嚢に由来する胎生マクロファージの少なくとも一部は新生子期の肝臓内で細胞死に陥り消失すると推察された.生後早期の肝臓内に出現する鉄反応陰性の小型単核細胞が,類洞腔に常在するマクロファージの前駆細胞と考えられた.(平成15年9月19日受理)

2003.02.05

Microarchitecture of trabecular bone in type 2 diabetic rats – Three-demensional analysis using microcomputed tomography – *

 従来より2型糖尿病は, l型糖尿病と異なり骨董減少の頻度が低く,骨粗軽症の原因としては疑問視されてきた.ところが,最近2型糖尿病が骨折リスクの増加と関連していることが報告され,その原因として骨董以外の要因の関与が示唆されている.そこで本研究では,糖尿病における骨微細構築の変化を2型糖尿病ラットを用いて検討し,糖尿病性骨粗軽症における海綿骨微細構築を部位別および週齢別に検討した.
 対象には, 14週齢, 28週齢, 42週齢および56週齢の2型糖尿病ラット(OLETF,各群n=7-ll)およびコントロールラット(LETO,各群n-8-ll)を用いた.屠殺後,第5腰椎椎体,腰骨近位および遠位骨幹端を,マイクロCTにてスライス厚14.1-18.6Mm,画素径17.6-23.2(jmの条件で撮像した.得られた三次元画像データから海綿骨の骨体積比,骨梁の厚さ,敬,間隙と連結性,骨梁パターン因子,構造モデル指標を算出した.また,第3腰椎椎体を圧縮し,その破壊強度を求めた.
 すべての週齢で体重および血糖値はOLETFラットの方が高値を示した.骨体積比は,14週齢の腰椎およびすべての週齢の腰骨遠位骨幹端でOLETFラットの方が高値を示した.一方, 42週齢と56週齢の腰骨近位骨幹端ではOLETFラットの方が低い骨体積比を示した.また, 28週齢, 42週齢, 56週齢において,腰椎はOLETFラットの方が棒状で連結性の低い骨梁構造を,腰骨遠位骨幹端は板状で連結性の高い骨梁構造を示した.椎体の圧縮強度は42週齢と56週齢においてOLETFラットの方が低値を示した.
 これらの結果は,糖尿病ラットでの骨変化には部位による差が大きいことを示しており,また,荷重負荷の影響が少ない腰椎などでは,海綿骨微細構築の劣化が骨強度の低下に強く関与していることを示唆している.(平成15年8月9日受理)

2003.02.04

Prevention of pancreatic β-cell damage by pharmacological intervention with diazoxide and pioglitazone in obese diabetic mice *

 糖尿病の管理において膵β細胞機能をいかに保護するかは重要な課題である・本研究では肥満糖尿病モデル動物C57BL/KsJ励+/励+マウス(以下曲+/曲+マウス)にKATPチャネル開口薬diazoxideとthiazolidinedione系薬剤pioglitazoneによる介入を行い,膵β細胞機能障害の抑制効果およびその機序を比較検討した.6週齢曲十/曲+マウスにdiazoxide(100mg/kg・BW/day,経口)とpioglitazone(100mg/kg・迅W/day,経口)による12週間の介入を行った結果,血糖値は有意に改善した(p<0.05vs非介入).膵ラ氏島の組織学的変化を検討したところ,両薬剤とも%膵ラ氏島面積を同一週齢の非介入励十/励十マウスのそれと比較し,有意に増大させた(pく0.001).またβ細胞比率は非介入マウスでは加齢と共に有意な減少(pく0.01)を認めるが,薬剤介入により非介入と比べて有意に増大した(pく0.01,piogutazonevs非介入).さらに10週齢マウスに2週間,薬剤介入すると血糖,中性脂肪,遊離脂肪酸は低下するが,血中インスリン値はdiazoxideで増加,pioglitazoneではむしろ低下していた.血中アデイポネクチン値は介入により増加したが,pioglitazoneでより顕著であり,両者併用ではさらに著明な増加をみた(p<0・001vs非介入).インスリン感受性はpioglitazoneで有意に増強したくp<0・01YS非介入)が,diazoxideでは増強効果を認めなかった.Pioglitazoneにより膵ラ氏島内中性脂肪含量は減少する(p<0.05YS非介入)が,dia甜Xideでは変化をみなかった.膵ラ氏島のグルコース応答性インスリン分泌反応は,薬剤介入により改善した(pく0.05vs非介入).励+/曲+マウスの膵β細胞様能障害は両薬剤のいずれによっても抑制されることが明らかになったが,その様序としてdiaz醗ideは膵β細胞に直接作用し,高血糖の持続による膵β細胞のオーバーワークを抑制することでその機能を保護するものであり,加えて糖毒性の改善も細胞機能保護に寄与していると考えられた.一方,pioglitazoneはインスリン感受性増強による糖毒性の改善に加えて,勝β細胞における脂肪毒性の抑制も関与するものと思われた.(平成15年6丹9円受埋)

2003.02.03

Immunohistochemical study of HSP27 in ovarian cancer, 2nd report -determination of optimal evaluation method – *

 卵巣癌におけるp53,KiL67,heatshockproteins(HSP27,70,90)の発現を免疫組織化学的に検索し予後因子となりうるか否かを検討した.
 1985~99年にかけて当院で治療し予後を追及しえた上皮性卵巣悪性腫瘍97症例に対して現在のWIIO分類に従って再評価し,その中で卵巣癌と診断した68例を対象にした.残りの29例は境界悪性腫瘍であったため予後の検討からは除外したが,卵巣癌との発現の違いに関して比較検討した.
 まずUNIVERSALGRADINGSYSTEMによる悪性度評価を行い,その腫瘍像を反映したホルマlJン固定・パラフィンブロックを用いてp53,Ki-67,HSP27,HSP70,HSP90の発現を免疫組織化学的に検索した.そして組織型,腫瘍組織分化度,進行期,再発及びKaplan-Meyer法による生存率との関連を統計学的に解析した.
 境界悪性群に比べ悪性群でKi-67の発現が有意に高かった(p<0.01).p53は賛液性腺痛で他の組織型と比べて強く発現している傾向がみられたが,HSP27,Ki-67では組織型による発現の差はみられなかった.HSP90を除くすべてのマーカーは悪性度とよく相関していた.HSP27とp53では有意差はないものの進行癌での発現が早期癌に比べ高い傾向にあり,また再発群では非再発群と比べ発現が高い傾向があった.生存解析ではHSP27陽性群は陰性群と比較して有意に予後不良であった(p=0.0119).p53では陰性群と比べ陽性群で生存率が低い傾向がみられた(p=0.0534).多変量解析では進行癌(Ⅲ・Ⅳ期癌)(p<0.0日,HSP27陽性群(p<0.05)で有意に予後不良であった.
 以上よりHSP27の発現は卵巣癌の予後不良因子となることがわかった.(平成15年6月9日受理)

2003.02.02

Treatment for advanced colorectal cancer with high-dose levofolinate and 5-fluorouracil *

 2000年8月から2002年8月までに再発・進行大腸癌14例に対して,高用量レポホリナート/フルオロウラシル(LV!5-FU)併用療法を行った.投与方法はレポホリナート(LV)(2007250mg/m2:2hr)+フルオロウラシル(5-FU)(500-600mg/m2=bolus)週1回を6週間施行し2週間の体薬にて1サイクルとし,2サイクル以上を施行した・評価判定は腫瘍マーカー(CarCinoembryonic antigen:CEA)値を用いた.また,奏効期間(time to progression=TTP)も同時に評価判定方法に加えた・14例中10例は外来投与が可能であった.有害事象は消化器症状8例,色素沈着4例,白血球減少3例であった.治療前には全例にCEA値の上昇を認めた.評価可能な14例のうち有効(PartialResponse=PR)4例,不変(No Change:NC)6例,進行(Progressive Disease=PD)4例であった・TTPは全例で平均6.2カ月,中央値は6カ月であった.PR,NC,PD症例の平均はそれぞれ7・25,8.83,1.25カ月であった.高用量LV!5-FU併用療法は有害事象が少なく,安全に外来投与が可能であると考えられた.(平成15年6月2日受理)

2003.02.01

Protease activity in programmmed cell death during chick limb development *

 高等動物の肢芽の形態形成過程において,プログラムされた細胞死(Programmed Cell Death以下PCD)が起きることが知られているが,その分子機構については不明な点が多い.我々は器官培養法を用いて,指間組織のPCDに対する種々のプロテアーゼ阻害剤の影響を調べた.死細胞を染色するナイルブルー生体染色法により,カテプシンLの阻害剤がナイルブルー陽性顆粒の集積を抑制することを認めた.そこで,カテプシンLがPCDに関与しているか否かの確認のため,DNA断片化の検出を行った.カテプシンL阻害剤によってナイルブルー陽性顆粒は減少したが,DNAラダーの形成やTUNEL陽性細胞の出現には影響がなかった.このことはカテプシンLの阻害剤はPCDを抑えているのではなく,マクロファージ様細胞への死細胞の取り込みを抑制していることを示唆している.次に,指間組織中の種々のプロテアーゼの活性を測定したところ,培養前と比べて確かにカテプシンLの活性は上昇していた.さらに活性化したカテプシンLの局在を調べたところ,貪食される前の死細胞とマクロファージ様細胞が貪食した死細胞に一致していた.このことから,活性化したカテプシンLは死細胞中に局在していることがわかった.このカテプシンLが死細胞内のタンパク質を分解し,その分解された物質が細胞表面に何らかのシグナルを送り,マクロファージ様細胞に認識され,貪食されたと考えられる.また,カスパーゼに関しては,個々の阻害剤によるナイルブルー陽性細胞抑制の効果が見られなかったが,カスパーゼ3/7の活性のみ10倍に上昇していた.このことから,細胞死のシグナル伝達経路の中にカテプシンLからカスパーゼ3/7にシグナルが送られている可能性があると考えられた.(平成15年5月8日受理)

2003.01.07

A case of tongue edema associated with radiation-induced ulcer with low level of C1 inhibitor activity *

 66歳の男性が囁下困難を伴う突然の舌の腫脹を自覚した.組織内照射による舌癌治療の既往があるために,再発疑いで3週間前に右側舌潰瘍から細胞診を受けていた.細胞診はクラスIで,悪性所見は認めなかった.放射線性粘膜潰癌を伴う血管神経性浮腫(クインケ浮腫)の診断のもとにトラネキサム酸,d-マレイン酸クロルフェニラミン,エビネフリンを授与した.6日後には舌浮腫はほとんど消過した.舌腫脹時の検査成績では,CII50,Cl,C3,C4は基準値内であったが,補体第1成分阻止因子活性は低値を示した.家族歴はなく遺伝性血管神経性浮腫が疑われたが,舌浮腫の消退後は同因子活性は基準値内に回復していた.(平成14年11月13日受理)

2003.01.06

Three-dimensional analysis of the maxillofacial configuration of unilateral cleft lip and palate patients before and after lip repair *

 同一術者,同一術式によって初回口唇裂手術を施行した片側性完全口唇顎口蓋裂患者の顎・顔面形態を,三次元計測装置を用いて計測し,術前の顎・顔面形態の特徴ならびに術後の経時的変化を分析し,次の結果を得た.
1.初回手術前にHotz口蓋床を装着することで,顎前方部の各傾斜角度,特にSmaller Segmentの傾斜角度及びSmal1ersegmentとLarger Segmentの差の移動が大きく,術前のHotz口蓋床装着の有用性が示唆された.
2. 初回口唇裂術後,顎裂前後差・前歯部傾斜角度・Sma址ersegmentの傾斜角度およびSmaller segmentとLargersegmentの差・歯槽基底部最大幅径の移動が大きく,手術およびHotz口蓋床装着等のなんらかの外力が特にこの部位に加わっていると示唆された.
3.術前術後の顔面形態は,顎前方部の形態に影響しており,特に顎裂幅・前歯部傾斜角度・Smaller segmentの傾斜角度・Larger segmentの傾斜角度及びその差・歯槽基底部最大幅径の矯正は術前までに十分行う必要性があると考えられた.
4.術後の鼻腔底の長さが非対称性になる原因の一つに,患側キューピット弓頂点の患側鼻翼基部からの距離が影響していると考えられた.
5.術後の患側鼻翼基部下垂を防ぐために,基部の寵定位置を健側よりも若干高めに矯正する必要があると考えられた.(平成15年3月19日受理)

2003.01.05

Prognostic and predictive values of HER1 and HER2 overexpression in breast cancer *

 増殖因子受容体HERl,HER2の過剰発現は,乳癌の20-40%に認められ,予後不良因子として知られている.また,HERl,HEK2を過剰発現する乳癌はホルモン療法に耐性を示し,化学療法(アントラサイクリン[A]やタキサン[T]系薬剤)に良好な反応を示すことが報告されており,治療効果予測因子としても注目されている.さらに最近,HERl,HER2のシグナル伝達を阻害する薬剤が開発され,臨床応用が始まっている.そこで,HERl,HER2の治療効果や予後の予測因子としての有用性を検討した.<対象と方法>1991年~1999年に川崎医科大学乳腺甲状腺外科で根治手術を行った原発乳癌420例のうち,再発後の治療経過が判明している52例を対象とした.原発乳癌標本を用い,HER2,p53,Ki67を免疫組織化学的に検討し,HERlはリガンド結合法にて測定した.治療効果や予後との相関は,単変量及び多変量解析にて分析した.<結果>HERl,HER2,p53の陽性率は,各々30.8%,19.2%,26.9%で,Ki67高標識例は46.2%であった.治療効果や予後との関連をまとめると,1)HERlやEER2陽性症例は,A系薬剤に奏効しやすいが,再発後生存期間は短く,予後不良であった.2)HER2陽性症例は,T系薬剤に奏効しやすいが,予後とは無関係であった.3)FERl陽性症例は,ホルモン療法に奏効しやすいが,無進行期間や再発後生存期間は短く,予後不良であった.4)Ki67高標識乳癌症例は,ホルモン療法の治療効果とは無関係であったが,再発後生存期間は短く,予後不良であった.
<考察>HERlやHER2陽性乳癌は,化学療法やホルモン療法に比較的良く奏効するが,早期に耐性を獲得し,患者を早期に死に至らしめることが示された.今後は,HERlやHER2陽性乳癌に対して,HERlやHER2のシグナル伝達阻害剤の併用が考慮されるべきである.(平成15年2月7日受理)

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