h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2003.01.04

A statistical analysis of basal cell carcinoma *

 皮膚に発生する悪性腫瘍のうち比較的高頻度に見られる基底細胞癌(BCC)について統計的観察をおこなった.
 1990年1月から2001年5月までの11年5カ月間に川崎医科大学附属病院形成外科において治療した基底細胞癌の48患者49症例を対象として年齢・部位・臨床および組織分類・切除範囲・切除後の再建方法・再発の有無などについて若干の文献的考察をふまえて検討した.
 男女比は1.3:1,年齢は13~98歳(平均63.4歳),初診までの期間は平均3.6年であった.
 腫癌の長径は4~100mm(平均15.1mm)であった.部位は顔面が最も多く眼宮部が19例(38%),鼻部が13例(26%)を占めており,いわゆる胎生期顔裂線に一致する傾向にあった.臨床分類は結節型・結節潰瘍型の2型で85%を占め,組織型ではsolidtypeが75%を占めた.
 腫瘍辺緑からの切除距離は5mmが最多で18例(42%),次いで3mmが8例(19%)などであった.脹周囲19例に限ると切除辺緑は3~5mmが11例,3mm以下が8例であったがいずれも再発は見られなかった.
 再建方法は局所皮弁が最多で33例(67%)続いて単純縫緒が8例(16%),植皮が6例(12%),遊離皮弁が2例(4%)であった.
 再発例は頭部,顔面発症の2例であった.(平成14年12月3日受理)

2003.01.03

Effects of nitric oxide on hemodynamic change by adminstration of hypertonic saline dextran in canine hemorrhagic shock *

 Hypertonic Saline Dextran(HSD)は,出血性ショックや熱傷ショックに対して少量bolus投与(4ml/kg)で心拍出量(CO)を増加させることが知られている.その作用機序としては,循環血費量増加作用,末梢血管拡張作用,心収縮性増強作用が報告されているが,その一方で投与直後に起こる著明な末梢血管抵抗(SVR)の減少と一過性の平均血圧(mBP)の低下の原因は未だ解明されていない.我々は,このHSD投与直後のSVRの減少に血管内皮由来弛穣因子である一酸化窒素(NO)が関与しているという仮説を立て,イヌ出血性ショックモデルにnitric oxide synthase阻害剤であるL-NMMAを投与することで,これらSVRとml主Pの反応がどのように変化するのかを検討した.
 雑種成犬をLrNMMA投与群(n=6)とコント日-ル群(n=6)の2群に分け,両群とも大腿動脈から脱血して約30分間mBPを50mmIIgに維持した.その後,L-NMMA投与群には5mg/kgのL」ⅥⅥMAを静脈内投与した.コントロール群には同量の生理食塩液を投与した.次いで両群に4ml/kgのHSDを30秒間で投与し,直後の循環動態を反復測定分散分析法で比較検討した.
 脱血前,脱血後,HSD投与の前後における心機能には2群間で有意な差は見られなかった.HSD投与直後の循環動態では,両群ともml主Pは急激に低下し,それに引き続いてCOの増加が認められた.SVRの変化については両群間で有意差を認めた(p=0.017).すなわち,コントロール群では投与直後より投与前借の20%近くまで急激に減少した後,90秒頃から増加した.一方L-NMMA投与群ではSVRは40~120秒の間でコントロール群に比べて緩徐に減少し,120秒以降ゆっくりと投与前借の60%まで増加した.
 LNMMAによるSVR減少の抑制効果は部分的であったことからHSD投与直後のSVR減少の一部にNOが関与していることが示唆された.(平成14年10月29日受理)

2003.01.02

A morphological study of TUNEL positive dying cells in the developing inner ear of mouse embryos (the second report) – Ultrastructural classification – *

 胎生期マウスの内耳に出現する死細胞にはTdT一mediateddUTPnickend-labeling(以下TUNEL)光顕レベルでアポトーシス細胞死(ACD)と非アポトーシス細胞死(NACD)を示すものが存在し,内耳全体の総死細胞数に対して前者は約90%,後者は約10%発現する.cis-diammine-dichloroplatinum(以下CDDP)負荷によって,総死細胞数に著変なくACDが約70%,NACDが約30%となり,NACDを示す死細胞の発現が増加することを見出し,前報に報告した(川崎医学会誌 28(4):287-296,2002).本研究の目的は光顧的にTUNEI.陽性死細胞が確認された切片を再包埋して電顕観察し,胎生期マウス内耳におけるACD,NACDについてその超微形態的特徴を明らかにすることである.続いて内耳全体を可及的に電顕観察することによってACD,NACDを示す死細胞に対する貪食処理様式,核正常であるためTUNEI.法で検出不可能な死細胞存在の有無についても検討した.これらの結果から,ACDを示す死細胞はClarkeの分類によるtypel死細胞すなわちアポトーシスによる死細胞であり,NACDを示す死細胞はtype2死細胞すなわち自己貪食による死細胞で,さらにtypel死細胞は隣接細胞に貪食処理されていた.また,これらはCDDP負荷によっても変化しないことが明らかとなった.(平成14年10月28日受理)

2003.01.01

 

2002.04.07

A case of stercoral colonic perforation *

 宿便性結腸穿孔は比較的稀な疾患である.今回我々は本症例の1例を経験した. 症例は66歳,女性.腹痛を主訴に来院した.来院時腹部所見は板状硬で左下腹部に強度の圧痛を認め,腸音は減弱していた.単純X線写真にて両側横隔膜下に遊離ガス像を認め,下部消化管穿孔,汎発性腹膜炎の診断にて緊急手術を施行した.手術所見では下行結腸から直腸内に硬便が充満していた.S字結腸に穿孔部を認め,その近傍に腸管内から脱出した便塊を認めた.手術はハルトマン手術を施行した.切除標本では穿孔部は楕円形であり,手術所見,病理組織学的所見とあわせて宿便性結腸穿孔と診断した.術後は経過良好であった.手術から12ヶ月後,人工肛門閉鎖,下行結腸直腸吻合術を施行した.                               (平成14年10月18日受理)

2002.04.06

A morphological study of TUNEL positive dying cells in the developing inner ear of mouse embryos- CDDP-induced change- *

 昨今の細胞死研究において,核のDNA断片化を検出するTdT-mediated dUTP-biotinnick end labeling (以下TUNEL)法で陽性死細胞の中には形態学的に“アポトーシス様”と判定される死細胞だけでなく”非アポトーシス様”と判定される死細胞も存在していることが明らかとなってきた.本研究は内耳形態変化が最も多く”自然細胞死”が高頻度に発現すると考えられる胎生12日目マウスの内耳を材料として,個体発生における“プログラム細胞死”で“アポトーシス様”と”非アポトーシス様”と判定される死細胞の占める比率を明らかにし,内耳毒性を有するcis-diammine-dichloroplatinum (以下CDDP)投与の影響を観察した.対照群5匹5耳とCDDP負荷群(以下CDDP群)5匹5耳で観察されたTUNEL陽性死細胞を“アポトーシスの定義に基づいて,光顕的にアポトーシス細胞死(以下ACD)と非アポトーシス細胞死(以下NACD)を示す死細胞に分類し,各検体における総死細胞数に対する比率(以下ACD率, NACD率)を算出した.その結果,対照群におけるACD率は約90%であり, NACD率は約10%であった.またCDDP群では対照群と比較して総死細胞数に著変は無かったが,前者が約70%,後者が約30%と発現率に変化が認められた.それによってACDは分裂・増殖と同様に発生期に必須であり,NACDの増加は内耳毒性に対する防御反応と推察された.   (平成14年10月28日受理)

2002.04.05

Carcinogenesis and change in the biliary epithelium in a hamster CDDB model without carcinogen *

 膵胆管合流異常症は,胆道系癌が発生することで前癌状態として認識されている.その発癌機序の一つとして,膵液の胆管への逆流が関与していると考えられている. そこで我々は,ハムスターに外科的に胆汁・膵液・十二指腸液が確実に胆道内に逆流する処置を加え,いわゆる膵胆管合流異常症モデル(cholecy stoduodenostomy with dessection of the extrahepatic bile duct on the distal end of the common duct 以下CDDBモデル)を作成し,胆汁,膵液を含む十二指腸液の逆流が,胆道上皮へ及ぼす影響を検討した.術後,全てのハムスターに基本飼料を与え,水道水を自由摂取させた.そして発癌剤を投与することなく6ヶ月および12ヶ月以上観察した. 病理組織学的には,6ヶ月観察の6例全例に胆嚢上皮の過形成を認め,1例では高度の腺管の異形成が認められた.そして胆嚢粘膜の増殖細胞の検出をPCNA LIを用い測定した結果, CDDBモデルは,手術非施行例に比べ高値であった.肝外胆管上皮は炎症細胞の浸潤はあるものの過形成は認められなかった.肝内胆管,膵管上皮には特別な病変を認めなかった. 12ヶ月以上観察できた14例の胆嚢では,全例に胆嚢上皮の過形成がみられ,異形成はみられなかった.一方肝外胆管では,上皮の過形成が14例中半数の7例にみられ,1例に肝外胆管癌の発生を認めた.しかしK-ras遺伝子変化はみられなかった.6ヶ月に比べ12ヶ月の長期観察では肝外胆管にも変化がみられた. この実験結果より,発癌剤を投与しなくとも, CDDBモデルは逆流した膵液と胆汁を含む十二指腸液が長期間にわたり直接粘膜に接触すると,胆嚢上皮と胆管上皮の細胞回転が亢進し,過形成,異形成が発症し,さらには発癌に至ることが示された. すなわち,この実験モデルは,発癌物質を投与することなく胆道の前癌状態から発癌にいたる過程を観察でき,発癌機構を解明できる有用なモデルとなる可能性がある.                               (平成14年10月18日受理)

2002.04.04

effects of inversed ratio ventilation (IRV) on intracranial pressure (ICP) in dogs with pulmonary edema *

 雑種成犬にて肺水腫モデルを作成しコンプライアンスの低下した肺で, inversed ratioventilation (IRV)がintracranial pressure (ICP)に及ぼす影響を検討した.人工呼吸器の吸気/呼気比(I:E比)1:2での測定値を対照値として, ICP,体血圧,肺動脈圧,中心静脈圧,心拍出量,肺コンプライアンス,血液ガス分析,最高気道内圧(peak inspiratory pressure, PIP),平均気道内圧(mean airway pressure, mAWP)を測定した.その後に,オレイン酸(0.05 ml/kg を30分間で持続静注)で,肺水腫を作成し,動脈血酸素分圧(Pa0 2)の低下を確認した後にI:E比を1 :2, 1.7:1 , 2.3:1,4:1と順次吸気時間を延長させ,再度,対照値のI:E比1:2に戻した.対照値の時と同じ測定項目をそれぞれのI:E比で測定した. ICP (mean±SD, cmH 2o)はオレイン酸投与前I:E=1:2で10.0±3.2,投与後は12.5±4.2と有意に上昇したが,吸気時間を延長させてもICPは10.0±2.9, 11.1±2.2, 11.3±2.7, 12.3±2.9と有意の変化を認めなかった.オレイン酸投与によりPao 2, 心拍出量は有意に低下し,肺動脈圧は有意に上昇したが,その他の測定項目は各I:E比間で有意の変化を認めなかった. 以上のことから肺水腫の発生に伴い肺コンプライアンスは低下し, PIPの上昇とともにICPは上昇したが,その後吸気時間を延長させたIRVで換気してもPIPは変化せず,ICPには影響を及ぼさなかった.この結果は,肺コンプライアンスの低下した頭蓋内圧亢進患者へのIRVの適応の可能性を示唆した.         (平成14年10月15日受理)

2002.04.03

Chemopreventive effects on carcinogenesis in a hamster model (CDDB model) *

 〔目的〕膵・胆管合流異常症に最も類似したモデルであるハムスター膵・胆管合流胆道発癌モデルを作成し,発癌物質であるN-nitrosobis (2-oxopropyl) amine (以下BOP)を投与後,発生する癌に対し,5種類の化学予防物質を投与し発癌抑制効果を検討した. 〔方法〕雌性7週齢Syrian golden hamsterに外科的処置を加えハムスター膵・胆管合流胆道発癌モデルを作成した.術後4週目より発癌物質BOPを10 mg/kg 週1回,6週間皮下注射した.その後通常飼育した無治療群(no therapy ; n =12),飲水に化学予防物質としてcimetidineを術後21週の実験終了まで投与した群(cimetidine ; n =13),同様にFOY-305投与群(FOY-305 ; n = 13), ranitidine投与群(ranitidine ; n = 9), etodolac投与群 (etodolac ; n =16), MGN-3投与群(MGN-3 ; n =8)をそれぞれ作製し病理組織学的に化学予防効果を検討した. 〔結果〕(1) etodolacは膵carcinomaと総病変数,肝外胆管atypical hyperplasia, 肝内胆管atypical hyperplasia およびcarcinoma,胆嚢atypical hyperplasia と胆嚢総病変数を抑制した. (2) cimetidineは膵hyperplasiaと総病変数,肝外胆管atypical hyperplasia と総病変数,胆嚢総病変数を抑制した. (3) ranitidineは膵hyperplasiaを抑制したがその他の病変において有意差を認めなかった.(4)FOY-305は,膵hyperplasiaと総病変数,肝外胆管atypical hyperplasiaと総病変数,肝内胆管atypical hyperplasia, 胆嚢atypical hyperplasiaと胆嚢総病変数を抑制した.(5)MGN-3投与群は胆嚢atypical hyperplasiaのみ抑制したが,肝内胆管hyperplasiaで病変数の増加傾向を示した. 〔結論〕これらの実験結果により,(1)COX-2選択的抗炎症作用を持つetodolacは本発癌モデルにおいても発癌予防効果があることが示された(2) cimetidineは同じhistamine type-2 receptor antagonist であるranitidineとの比較検討において,発癌予防効果はcimetidineのみ有するE-selectin阻害作用を介するものが主と考えられ,逆流する十二指腸液の減少は少ないものと推測された.(3)本発癌モデルは膵酵素の活性化が胆道上皮に与える影響が大きいことより, FOY-305におけるserine系protease inhibitorの膵酵素活性阻害作用が癌の発育進展に抑制的に作用したと考えられた.(4)これら発癌予防効果を有する3剤は経口摂取可能で副作用もみられなかったことより化学予防物質として有用であると考えられた.                    (平成14年9月27日受理)

2002.04.02

Essential role of macrophages and macrophage-related proinflammatory cytokines in indomethacin-induced enteropathy in rats *

 [背景一目的]ラットにインドメタシンを経肛門的に投与すると, Crohn病に類似した腸間膜付着側の小腸縦走潰瘍が発生する.近年,この小腸縦走潰瘍の発生に腸内細菌叢由来のリポ多糖が重要な役割を担っていることが報告された.そこで,本研究では小腸縦走潰瘍の発生におけるリポ多糖の標的細胞であるマクロファージの関与を検討した. [方法]6週齢の雄性Wistar系ラットに,ジクロロメチレン・ビスフォスフォネートを含有するリボソームを腹腔内に投与しマクロファージ除去ラットの作製を試み,インドメタシン24 mg/kg を注腸した後の小腸潰瘍性病変を評価した.また,マクロファージ非除去ラットにtumor necrosis factor-α, interleukin-6, interleukin-1βの中和抗体を単独または併用で腹腔内投与し,インドメタシン起因性小腸縦走潰瘍を評価した.さらに,マクロファージ除去ラットにリコンビナントtumor necrosis factor-α, interleukin-6, interleukin-1βを単独または併用投与した時のインドメタシン起因性小腸縦走潰瘍への影響を観察した.小腸潰瘍の評価は,インドメタシン投与の24時間後に摘出した全小腸を観察し,小腸全長に占める縦走潰瘍総長の比率(ulcer index),および組織学的傷害スコアで評価した. [結果]ジクロ囗メチレン・ビスフォスフォネート含有リボソームを投与すると,小腸組織内マクロファージは有意に減少した.このマクロファージ除去ラットでは,小腸縦走潰瘍のulcer indexが無処置群の19.6%に抑制された.マクロファージ非除去ラットでも,抗tumor necrosis factor-α, interleukin-6, interleukin-1β中和抗体を投与するといずれも用量依存性に小腸縦走潰瘍の発生が抑制され,併用投与ではさらに抑制効果が増強し,3剤すべて併用すると87.5%の抑制率となった.さらに,マクロファージ除去ラットにリコンビナントtumor necrosis factor-α, interleukin-6, interleukin-1βを投与することで小腸潰瘍が再現された.また,組織学的傷害スコアはすべてulcer index と相関していた. [結論]ラットのインドメタシン起因性小腸縦走潰瘍モデルでは,マクロファージの存在下で催炎症性サイトカインの産生を介して小腸縦走潰瘍が誘発されている.                               (平成14年9月24日受理)

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