h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2001.03.06

Characteristics of Japanese families with adlescents suffering from eating disorders determined by evaluating expressed emotion *

 家族の「感情表出(Expressed Emotion : EE)」は、精神障害の患者に対して家族が表出する感情の内容を概念化し評価したものである。 著者は、摂食障害患者の家族に対しカンバウェル家族面接(Camberwell Family Interview : 以下CFIと略記する)を用いてEEの評価を行い、その特徴を検討した。・対象および方法 対象は、1998年4月から2000年3月にまでに川崎医科大学精神科を受診した25人の摂食障害患(16人は神経性食思不振症:以下ANと略記する、9人は神経性大食症:以下BNと略記する)の母親である。これらの母親に対しカンパウェル家族面接に摂食障害の症状項目加えてEEの評価を行った。・結果1. 25人のうち11人(44%)が高EEを示し、いずれも高い「過度な情緒的巻き込まれ (emotional over-involvement : 以下EOIと略記する)」を認めた。AN患者の母親群と BN患者の母親群間では、「批判コメント(以下批判と略記する)」と「EOI」の表出に差は認められなかった。 2.この研究の対象群と日本の精神分裂病患者の家族と躁うつ病患者の家族を比較した場 合、対象群の母親は低い「批判」と高い「EOI」を示した。 3.対象群の母親のEEの評価尺度の分布をイギリスとオランダの摂食障害の母親と比較し たところ、他の2力国の母親に比べて、対象群の母親では「批判」の表出が低かった。・考察 高い「EOI」を示した母親の特徴が、従来述べられてきた摂食障害の家族の特徴と一致すると考えられた。日本の他の精神障害患者の家族との比較で、対象の母親群が低「批判」と高「EOI」を示した要因について、摂食障害患者の痩せなどの危機的な身体症状が母親の批判的な言動を抑制し、懸念や心配の結果過保護的な行動や過剰な情緒的反応を引き起こしている可能性や、ライフサイクルの観点から、摂食障害患者の多くが親からの過保護行動を受けやすい年代である思春期・青年期に属することなどが考えられた。 また、3国間の母親のEEの評価尺度の分布比較では、社会文化的な要因として、欧米と日本における母親の子どもに対する養育態度の違いが反映している可能性が考えられたo そして本邦においては、摂食障害患者の治療に際しては、母親の高い「EOI」に配慮した家族への介入が必要であることを述べた。           (平成13年9月3日受理)

2001.03.05

An experimental study of the kinetics of neuronal nitric oxide synthase during the early phase of cerebral ischemia in focal cerebral ischemic rats *

 脳虚血早期の神経細胞障害の原因の一つとなる神経型一酸化窒素合成酵素(neuronalnitric oxide synthase ; 以下nNOSと略す)について,脳内における虚血部位とnNOSの発現部位に関して検討した.その結果, nNOS messenger RNA (以下mRNAと略す)は虚血負荷によってその陽性細胞の増加を認めず,非虚血側と比較しても変化が認められなかった.しかし, nNOS自体は虚血中心部では虚血負荷1時間後から,虚血辺緑部では4時間後からその陽性細胞が増加することが明らかとなった.また発現したnNOSの活性を調べるため,虚血側内頚静脈より血液を採取しNOの代謝産物であるNo2-, No3-を測定したところ,虚血2時間後から有意な増加が認められ, nNOSの選択的阻害物質である7-nitroindazole (以下7-NIと略す)投与によりその増加が抑制された.これらの結果からnNOS発現は虚血により促進され,主にその調節はmRNAレベルではなく翻訳の過程と考えられる.発現部位は虚血時間の延長とともに虚血中心部から辺縁部へと発現領域が広がり,発現したnNOSが酵素活性を持っていると考えられる.したがってnNOS由来のNOによる神経細胞障害は時間経過とともに,虚血中心部から辺縁部へと広がっていくことが示された.                        (平成13年9月3日受理)

2001.03.04

Review of 10 years’ clinical experience of severe acute pancreatitis *

 当教室で経験した重症急性膵炎43例について臨床的検討を行った.症例は男性28例,女性15例で,年齢は22-86歳(平均57歳)であった.重症急性膵炎の成因はアルコールが最も多く,胆石,特発性の順であった.治療については21例に保存的治療が行われ,残りの22例には膵酵素阻害剤の持続動注療法などの特殊療法が行われた.短期予後に関しては,死亡例が5例で,このうちアルコール性が4例,開腹手術後が1例で,致死率は12% (5/43例)であった.長期予後については,経過観察中に50%の症例で何らかの併発症が発生していた.胆石例については胆石残存例で高頻度に膵炎再発がみられるため,可能な限り胆摘術あるいは切石術を行うべきであろうと考えられた.アルコール性の症例は高頻度に膵炎再発や慢性膵炎への移行がみられた.継続飲酒例では2例に重症急性膵炎が再発しており,これらの症例に対しては禁酒の励行など日常生活の管理や指導を含めた厳重なフォローアップが必要であろうと思われた.            (平成13年9月3日受理)

2001.03.03

A new method for determining HCV RNA genotype using 5′ UTR sequence *

 HCV genotypeの分類は,ウィルス量とともにC型肝炎治療におけるインターフェロン治療効果の予測にきわめて重要である.遺伝子型の分類にはHCVのコア領域を型特異的プライマーによるPCRを行って診断する方法や,免疫血清学的にELISA法を用いた分類が一般的である.しかし,ウィルス量が少ない血清においては遺伝子型の分類が不十分である.今回,アンプリコアHCVモニターv 20にて得られたPCR産物のダイレクトシークエンシングによる5’非翻訳領域(5′ Untranslated region ; 5’UTR)の塩基配列の検討により,遺伝子型を正確に診断できる方法を考案した.諸種のHCV陽性血清290検体を用い,この方法(5’UTR genotype法)によりgenotypeの分類を行い, type-specific PCR法(岡本法)や, serogroup分類(Kohara法)との対比を行った. Genotypeは, 5’UTRの-167, -163, -161の3個所の塩基の組み合わせにより,1bはT, A, G, 2aはT, G,G, 2 bはT, G, Aに相当することが明らかとなった.岡本法と本法との対比では290検体中289検体(99.7%)に合致していた.一方, serogroup分類では,41検体(14.1%)に型分類判定不能とされたものがあったが,本法ではこれらの検体についても正確に型分類が可能であった.各型別の血清を段階希釈し,本法によるgenotype判定可能なウィルス量について検討したところ,いずれの型においても100 copy/ml 前後のウィルス量までは判定可能であった.本法は一度の検査でHCV RNA定量とgenotype分類が同時に測定しうる有用な方法であると思われる.               (平成13年8月18日受理)

2001.03.02

Suppression of membrane permeability transition in fetal rat liver mitochondria and its role in oxidative stress *

 胎児の組織は出生前後に著しい酸素ストレス下におかれる.胎児から新生児への適応過程においてはこの酸素ストレスに対して何らかの生体防御機構が存在することが推定される.新生児肝においては少ないスーパーオキサイドディスムターゼやカタラーゼなどの抗酸化酵素が出産時や酸素ストレスに対する防御に関与していることが知られている.しかし,これらの抗酸化酵素が誘導される前(出生前後)に酸素ストレスに対してどのような防御機構が存在するかということに関しては不明である.最近の研究により,酸素ストレスが細胞のアポトーシスを誘導することが明らかとなった.胎児肝のミトコンドリアでは電子伝達反応に関与する構成成分が未成熟であり,様々な点で成人のものとは異なることが報告されている. 本研究では,胎仔,新生仔および成獣ラットの肝ミトコンドリアを用いて,その代謝特性と酸素ストレスによるアポトーシスとの関係を解析し,周産期医学的意義を考察した.その結果,胎仔肝のミトコンドリアではmembrane permeability transition (MPT)が起こりにくく,シトクロームCが流出されず,酸素ストレスによる肝実質細胞のアポトーシスが回避される機構が存在することが判明した.胎仔の他の臓器でも類似の機構で酸素ストレスに抵抗している可能性が考えられる.ミトコンドリアはエネルギー産生を介して細胞の生を保証すると同時に,アポトーシスを介して細胞の死を演出している.胎仔のミトコンドリアは成獣ラットのそれに比べて組織のミトコンドリア依存性アポトーシスを抑制するという特性がある.この機構が出生直後の酸素ストレスに対する防御反応に大きな役割をはたしているものと考えられる.              (平成13年8月1日受理)

2001.03.01

Magnetic resonance imaging of temporomandibular joint disorders *

 Magnetic Resonance Imaging (MRI)は,顎関節症の診断において主に関節円板の形態と転位の評価に用いられるが,さらに関節腔内貯留液の増加,関節頭骨髄の病的変化の描出にも用いられる.また,従来の顎関節造影や顎関節鏡と比較して,非侵襲的に臨床病態像を得ることができる. 本稿では顎関節症のMRI診断について,その役割と撮像法,読影のポイントを述べ,また川崎医科大学附属病院における顎関節症MRIの現況を交えて概説する.                               (平成13年8月18日受理)

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