h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

2000.01.01

Usefulness of the neurosurgical emergency teleconsulting system *

 遠隔地病院では,緊急を要する脳神経外科疾患の患者が来院した場合に必ずしも脳神経外科医が待機しているわけではない.そこで,我々はテレコンサルテーションシステムで画像を伝送することにより,脳神経外科医による読影のもと搬送の必要性を決定するシステムを構築した.このシステムは,CT画像を8mmビデオで撮影し,これをNTT社製VM-8でアナログ電話回線を使用して伝送する方式である. そのためにコンピューターやISDN回線,他のデジタル回線は必要とせず,非常にシンプルな構造で安価である.実際に53例の画像伝送を行ったが,1画像あたりの伝送には約40秒で,1例につき2~3画像伝送し臨床情報を入手しても約5~10分を要するのみであった.また伝送されたCT画像の画質は搬送の必要性を判断するには読影上まったく問題はなかった.当院から遠隔地病院までは約100 km 離れていて,搬送には1時間を要する.この1時間を利用し治療準備やスタッフの招集を行い,早期に治療を開始できたことは脳神経外科患者の救命救急治療に対して非常に有用であった.今回,これらの使用経験を報告し,今後の問題点と課題について検討した.         (平成12年1月21日受理)

1999.04.07

effective nutritional therapy for nonspecific multiple ulcers of the small intestine *

 症例は36歳,女性.26歳の時,小腸X線検査で回腸に多発潰瘍が認められたため,病変部を含めて遠位回腸が切除された.病理学的には特異的所見のないUL-Ⅰ~Ⅱの多発潰瘍で,臨床経過と併せて非特異性多発性小腸潰瘍症と診断された.その後再発し,下痢・貧血・低蛋白血症が持続したため当科へ入院した.小腸X線検査では,回腸に不整形で辺縁鋭利な潰瘍が多発し,さらに高度の狭窄・偽憩室・皺壁集中・管腔の硬化像が認められた.治療として中心静脈栄養療法を行ったところ,下痢は軽減し,便潜血は陰性となった.小腸X線検査で開放性潰瘍の略治が確認されたことから,昼間の栄養剤の経口摂取と夜間の経管成分栄養による経腸栄養療法を開始した.この過程で排便回数の増加と便潜血陽性がみられたが,治療前に比べ臨床症状は著明に改善した.退院後も在宅で経腸栄養を継続し,検査上軽度の貧血・低蛋白血症と便潜血陽性が認められたものの,臨床経過は良好と考えられた.本症はきわめて稀な難治性疾患で,外科的切除後もその多くは再発することが知られているが,栄養療法により長期間臨床的な緩解状態を維持することができたので報告した.                         (平成11年12月1日受理)

1999.04.06

Influence of nitric oxide on hemodynamic changes induced by intravenous administration of hypertonic saline dextran (HSD) in anesthetized dogs *

 7.5% NaCl + 6 %低分子デキストラン溶液(HSD)は,出血性ショックや熱傷ショックに対し少量bolus投与で心拍出量を増やし末梢循環改善作用のあることが知られている.この作用機序としては循環血漿量増加作用,末梢血管拡張作用,心収縮性増強作用などが考えられているが,その詳細は明らかにされていない.本研究ではHSD投与後にみられる血行動態と心機能の変化に,血管内皮由来弛緩因子である一酸化窒素(NO)の関与について検討した. 12頭の雑種成犬をコントロール群とNO合成酵素阻害薬であるL-NMMAを投与したL-NMMA群の2群に分けた.コントロール群は生理食塩液100 ml のみを, L-NMMA群は1mg/kg を生理食塩液100 ml に溶解しそれぞれを30分で投与した.その後にUSD 4 ml/kgをbolus投与し,10分間の血行動態とbolus投与前後の心収縮性(収縮末期圧一容積関係)を比較検討した. L-NMMA投与前後ではコントロール群に比べ血管抵抗が有意に上昇したが,その他の血行動態は両群で差がなかった。HSD投与後の血行動態の変化では, L-NMMA群で心拍数が10%程度増加する以外は血管抵抗も含め両群で差がなかった.またHSD投与前後では心収縮性も血中NO濃度も両群で差がなかった. 今回の検討結果では,HSD投与10分間にみられる血行動態の変動はL-NMMAの投与で抑制されなかった.従ってHSD投与により出現する血行動態の変動には,NO以外の血管拡張因子の関与の可能性があると考えられた.      (平成11年10月30日受理)

1999.04.05

A basic study superselective transcatheter arterial chemotherapy and chemoembolization (III) – a new drug carrier: liposome -CDDP- *

 目的:新しく調整したリポソームーシスプラチン懸濁液(liposome-CDDP {cis-Diamminedichloroplatinum} emulsion : Lip-CDDP)とVX2腫瘍をもちいて,超選択的動注化学療法(superselective transcatheter arterial chemotherapy : STAC)およびイミペネム・シラスタチン懸濁液(imipenem-cilastatin sodium : IPM/CS)併用超選択的化学微小塞栓療法(superselective transcatheter arterial chemo-microembolization : STACME)を行い結果を分析するとともに,既報のシスプラチン(CDDP)単体投与の結果と比較し,抗癌剤封入脂質製剤の有用性を検討した. 材料と方法:体重4kgの雄性日本白色家兎耳介にVX2腫瘍細胞浮遊液を移植.移植14日後に,①耳介動脈からLip-CDDPのみを超選択的に動注したSTAC/Lip群(n=9)および②IPM/CS懸濁液2ml先行投与後を超選択的に動注したSTACME/Lip群(n=9)の2群を設定し,投与直後,5分後,15分後の腫瘍,腎,血液プラチナ(platinum : Pt)濃度を測定した.また,移植7日後の担癌家兎を用い, STAC/Lip群(n=3)およびSTACME/Lip群(n=3)の薬剤投与5日後の腫瘍成長率,および腫瘍と腎Pt濃度を測定した.併せて,以前報告したCDDP単体投与におけるSTAC (STAC/Cis群)およびSTACME (SRACME/Cis群)の結果と比較検討した. 結果:投与直後,5分後,15分後のSTAC/Lip群の腫瘍内Pt濃度は,それぞれ17.0±1.6μg/g,18.7±2.6μg/g,12.9±1.8μg/gであり, STACME/Lip群においては18.2±1.4μg/gi 14.3±4.4μg/g, 20.9±2.1μg/gであった. CDDP単体投与との比較では,15分後にSTACME/Lip群はSTAC/Cis群, STACME/Cis群と比較してそれぞれ有意に高い濃度を示した(p<0.05). 投与5日後におけるSTAC/Lip群とSTACME/Lip群の腫瘍成長率は, 88.0±23.8%,22.9±8.8%であり,両群間に有意差を認めた(p<0.05).CDDP単体投与との比較では,STAC/Lip群とSTACME/Lip群は, STAC/Cis群(p<0.01)および対照群(p<0.01)と比較して有意に成長が抑制されていた.投与5日後の腫瘍内Pt濃度は, STAC/Lip群,STACME/Lip群ともに0.99土0.22μg/g, 1.27±0.14μg/gと比較的高い濃度を維持しており,CDDP単体投与と比較して有意に高い値を示した. 結論:リボソームを用いたCDDPのSTACおよびSTACMEは,長期にわたる腫瘍内Pt濃度の維持と,優れた腫瘍成長抑制効果を示し,効果的な投与法であることが示唆された.                             (平成11年10月26日受理)

1999.04.04

Eaxamination of microglial morphology in normal brains and anoxic encephalopathy *

 正常脳におけるmicrogliaの各抗体の染色性と無酸素性脳症におけるmicrogliaの反応性について,ヒトの大脳後頭葉組織を用いて検討を行った. 抗体はRCA-1 lectin, LN-1 , HAM 56, CD68 KP-1 , CD45RA LCA, CD45RO UCHL-1 を使用した.症例は正常脳5例と無酸素性脳症群20例のホルマリン固定パラフィン包埋切片を使用した. 評価方法は,染色されたmicrogliaを形態から4段階に分類し,後頭葉皮質第4層から第6層の部分で,光学顕微鏡の40×10倍の視野で5回計測を行い評価した. 結果は,正常脳の各段階のmicrogliaは,中等度変化群と高度変化群が多く,軽度変化群,無変化群の順であった. RCA-1 lectinとLN-1は形態変化が軽い程microgliaがよく染まり, HAM56, CD 68 KP-1 は形態変化が強い程よく染まった. CD45RA LCA, CD45RO UCHL-1 に染まるmicrogliaはみられなかった. 無酸素性脳症群では,無変化群と軽度変化群には増減はみられなかった.中等度変化群は2週間後で増加し,高度変化群は1ヶ月で増加した. 以上のことから,microgliaの評価には複数の抗体を組み合わせる必要があることおよび,正常脳での形態が無変化群ばかりでなく,中等度変化群と高度変化群が多いことが明らかになった. 無酸素性脳症では,無変化群及び軽度変化群では増減がみられず,中等度変化群,高度変化群は1週間後に増加がみられた.このことから,無変化群が刺激に応じて変化していくのではなく,正常脳でも存在を認めた中等度変化群と高度変化群が増殖する,というmicrogliaのpopulationが複数存在する可能性が示唆された.  (平成11年10月5日受理)

1999.04.03

An ultrastructural study of renal plasma cells in aged mice *

 生後6ヶ月以降のマウス腎臓には皮髄境界領域に孤立性のリンパ組織が高頻度に出現し,これらの腎臓リンパ組織には免疫担当細胞として,リンパ球やマクロファージとともに多数の形質細胞が含まれる.腎臓形質細胞の超微形態的な特徴と腎臓内での分布を明らかにすることを目的として,生後180日齢及び1年齢のマウスを用いて,腎臓リンパ組織と腎臓間質に分布する形質細胞を電顕レベルで観察した.形質細胞は腎臓内で皮髄境界領域の血管分岐部周囲の結合組織内に集合するほかに,皮質尿細管問や被膜直下の狭い結合組織内にも単独ないし数個がグループを作って散在する.皮髄境界領域のリンパ組織内には,成熟形質細胞の他に大型核の形質芽細胞や形質芽細胞の核分裂像も認められ,形質細胞は腎臓内で局所的に活発に増加している.皮髄境界領域リンパ組織内の形質細胞の中には,核内染色質が核膜の内側に強度に半月状に凝集する細胞死が認められる.死細胞の粗面小胞体は球状に断片化し,死細胞はマクロファージに取り込まれる.成熟形質細胞の核は核小体や核内小体を含む.核内小体は核の染色質問領域に出現し,一般に径0.1~1.0μmで核小体より小型である.形質細胞における核内小体の出現頻度は42.2%で極めて高く,細胞死の徴候を呈する形質細胞にも認められる.腎臓形質細胞の核内小体はその超微形態から4型に分類され,最も多いのは細線維型で,全体の77.1%を占め,次いで細線維顆粒型で18.6%を占める.形質細胞の腎内における分布と核内小体の意義を考察した.                               (平成11年9月21日受理)

1999.04.02

assessment of cytokines in inflammatory bowel disease: Comparison between local mRNA expression and clinical findings *

 背景:Crohn病(CD)と潰瘍性大腸炎(UC)ではサイトカインが炎症の発生や持続に関与している.そこで,UCとCDにおける粘膜局所のサイトカインmRNAの発現をRT-PCR法で検出し,臨床像との関係を検討した. 対象と方法: 1 ) UC 79例, CD 18例,急性腸炎13例,健常者16例を対象とし,大腸内視鏡検査下に採取した直腸粘膜からmRNAを抽出しRT-PCR法でIFN- γ , IL-2, IL-4,IL―10, IL-13, IL-15のmRNA発現の有無を判定した.各疾患群におけるサイトカイン陽性率を比較し,さらにUCでは検査時および1年後の臨床的活動性,内視鏡所見,および組織学的炎症の程度と陽性率の関係を検討した; 2) CD 36例,急性腸炎14例,健常者16例を対象とし,同様の方法を用いて回腸粘膜におけるサイトカイン陽性率を比較検討した. 結果:1 ) UCでは健常者よりもIL-4, IL-10,およびIL-13の陽性率が高かった.また急性腸炎よりもIL-4の陽性率が高く,CDよりもIL-13の陽性率が高値を示し,いずれも有意差がみられた.臨床的活動性,内視鏡所見,組織学的炎症のいずれにおいても,活動期UCでは非活動期UCよりもIL-4とIL-13の陽性率が有意に高かったが,サイトカイン発現の有無と1年後までの治癒率や再発率に有意な関係を指摘できなかった. 2)CDでは健常者よりもIL-10の陽性率が有意に高かったが,急性腸炎とは差はなかった. 結論:UCとCDではサイトカインの発現が異なり,前者ではTh2系サイトカインの中でもIL-4とIL-13が病態や重症度と密接に関与すると考えられた.一方, IL-10は腸管の炎症で非特異的に発現する可能性が示唆された.       (平成11年9月16日受理)

1999.04.01

Analysis of serological cross-reaction between Chlamydiae and Bartonella henselae *

 Chlamydia trachomatis感染症の診断の多くは血清学的になされているが,クラミジア属とバルトネラ属間の血清学的交差反応が報告された. C.trachomatis感染症患者15例の血清及び免疫家兎血清のBartonella henselaeとの交差性を調べたところ, B.henselaeに対して15例中7例の患者血清が抗体価16~256倍の交差を認めた.これら患者血清をC.trachomatisで吸収すると,6例ではB.henselae抗体価が除去されたが,残り1例では不変であった.この結果から1例の患者血清の抗C.trachomatis抗体価はB.henselaeとの交差性による偽陽性であったことが示唆された.免疫プロット解析によって抗C.trachomatis血清はB.henselaeの40, 48, 60 kDa 蛋白に対する抗体を含むこと,抗B.henselae血清はC. trachomatisの48 kDa 蛋白と反応する抗体を含むことが判明した.これらの結果は抗C.trachomatis抗体測定に先立ってB.henselae菌体で被検血清を吸収し,交差性による偽陽性を排除する必要があることを示している.       (平成11年9月16日受理)

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