h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1999.03.07

a histological study of cell death in the developing olfactory epithelium of the mouse embryos *

 胎生12日,14日,16日および生後2日目のICRマウスを用いて,嗅上皮の発生とそれに伴う細胞死について光顕, TUNEL法および走査電顕で観察し,鼻腔の発生,嗅上皮の鼻腔内での分布,嗅上皮3層の分化および嗅上皮内における細胞死と細胞分裂の局在について検討した.胎生12日の鼻腔上皮は,大型明調核を有する上皮細胞からなる多列上皮で,嗅上皮と呼吸上皮とは明瞭に区別できないが,胎生14日では支持細胞層,嗅細胞層および基底細胞層の3層を持つ嗅上皮を鼻腔上部で区別できるようになり,嗅上皮表面に嗅小胞と長い嗅線毛を走査電顕で確認できる.嗅上皮内には濃縮核を有するTUNEL反応陽性の死細胞が出現する.胎生14日の嗅上皮に含まれる細胞分裂は嗅部と呼吸部に均等に多数認められるが,細胞死は嗅部に特に多い.死細胞は外鼻孔端より後部鼻腔まで広く出現し,特に鼻腔天蓋と外側壁に多く,鼻腔のいずれの部位でも鼻中隔上の内側壁嗅上皮には少ない.死細胞は嗅上皮内で特に浅層と中間層すなわち支持細胞層と嗅細胞層とに多く,基底細胞層には稀で,細胞死の分布に嗅上皮内の層で局所的な差違が認められる.嗅上皮内のアポトーシスの意義を鼻腔の発達と関遽して検討した.     (平成11年9月13日受理)

1999.03.06

Fundamental study for bone mass measurement in the cortical bone of the tibia with quantitative ultrasound *

 現在,種々の非侵襲的な骨密度(BMD)測定法が開発され,骨粗鬆症の臨床に供されているが,定量的超音波法(QUS)は被曝を伴わずBMDを評価できる方法として期待されている.今回, QUSのうち,皮質骨のBMDを測定できる脛骨超音波BMD測定装置(Sound Scan 2000)を使用し,基礎的検討を行ったので報告する. 対象は健常者および骨粗鬆症患者265例(女性261例と男性4例)である.脛骨の超音波伝播速度(SOS)の測定精度は,日内変動がCV =0.60%,日差変動についてはcv =0.99%であり,良好であった.6例(全例右側が利き手)のSOSの左右差に関しては,左側が右側よりも有意の高値を示した(p<0.01).また,測定位置によるSOSの変化は,5cm遠位部が中央部に比して+3.6±2.4%の高値cm近位部が-1.0±2.2%の低値を示し,前者が後者に比して有意に高値を示した(p<0.02).女性例のSOSの年齢分布は40歳代以降で加齢に伴い減少することが認められた.体格指標と若年女性のSOSの相関については,身長との間に軽度の相関が認められたが,体重やBMIとは相関が認められなかった.他部位のBMD値との相関については,皮質骨が主体の橈骨BMD (r =0.557,p<0.001)との相関が,腰椎BMD (r =0-383, p<0.01)および大腿骨頚部BMD (r =0.354, p<0.05)より良好であった. このように,基礎的検討からQUSによる頸骨皮質骨SOSの測定は,皮質骨のBMDの評価が可能で,測定精度が良好であるが,測定側および測定位置を一定に保つことに留意して行うことが必要であるということが示された.       (平成11年9月10日受理)

1999.03.05

Screening system for liver cancer in the general population *

 我が国における肝癌による死亡者数は年々増加の一途を辿っている.この背景には肝癌検診体制が確立していないこともその一因と考えられる.そこで,一般地域集団における肝癌の疫学を明らかにし,効率的な検診方法を検討した. 岡山県北西部の1市6町の40歳以上の住民を対象にし, 1997年6月と1998年1月の2年度にわたり「肝癌検診」を行った.検診方法は,スクリーニング検査で肝機能検査(AST,ALT, ALP, GGT, ZTT),肝炎ウイルスマーカー(HBs抗原, HCV抗体)を実施した.二次精検は,スクリーニング検査の異常者に対して超音波検査を行った.超音波検査で肝癌が疑われた受診者に対しては,医療機関において精密検査を行った. 受診者数は3709名(平均年齢62.0±9.9 (MEAN±SD)歳)であった.受診者のHBs抗原陽性率は0.9%, HCV抗体陽性率は8.4%, HCV抗体陽性者におけるHCV-RNA陽性率は58.7%,肝機能異常率は34.1%であった.二次精検の受診率は, 95.0%であった.発見肝癌は7例で全例がHCV-RNA陽性者であり,HCVの既感染例及び肝機能異常のみの受診者に肝癌は発見されなかった.肝癌発見率は,HCV抗体陽性者の2.22%, HCV-RNA陽性者の3.78%,受診者全体でみると0.19%であった.多重ロジスティク回帰分析ではZTT, ALT, AST,年齢がHCV感染における重要な因子であった. 肝癌発見率は今回検討を行った集団において0.19%で,HCV抗体陽性者では2.22%,HCV-RNA陽性者では3.78%と対象を絞り込むことにより高率となった.肝癌におけるhigh risk group の設定には, HCV-RNA陽性で肝機能異常者を対象とすることが最も有効であった.多重囗ジスティク回帰分析の結果やコストの面からAST, ALT, ZTT異常者に対しHCV抗体検査を行い,陽性者を対象に超音波検査を行う方法が最も効率的と考えられた.                               (平成11年8月20日受理)

1999.03.04

The changes of infarcted area and regional cerebral blood flow in rats subjected to reversible middle cerebral artery occlusion *

 再潅流可能なラットの中大脳動脈閉塞モデルを用いて虚血・再潅流後の梗塞範囲と局所脳血流量(rCBF : regional cerebral blood flow)の変化について検討した.実験群は雄性ラット43匹を1 , 2, 26時間の永久虚血群と, 1,1.5, 2, 3時間虚血負荷後に血流を再開し,虚血開始26時間後に観察する再潅流群とに分けて行った.また観察部位は,虚血中心部とその周辺部である虚血辺縁部,さらに直接虚血に曝されないが虚血中心部と密な神経線維連絡を有する虚血遠隔部の3部位について検討した. 梗塞範囲について,26時間永久虚血群では虚血中心部のみならず虚血辺縁部におよぶ広範囲の梗塞を生じていた.再潅流群において虚血負荷時間が1時間の場合は虚血中心部のみに梗塞を生じたが1,5時間では虚血中心部のみに梗塞を生じる群と虚血辺縁部までその範囲が及ぶ群の2つの梗塞パターンがみられた.さらに2時間では26時間永久虚血群と同等の範囲が梗塞に陥り,3時間の虚血負荷では26時間永久虚血群より増加した. 永久虚血群の虚血中心部,辺縁部では虚血時間に応じてrCBFは減少したが,虚血遠隔部の虚血側の黒質,視床後腹側核では虚血早期よりrCBFの増加を認めた.再潅流群では永久虚血群と異なり,虚血時間に応じてそれぞれ異なったrCBF変化を示し,虚血中心部では虚血時間1.5時間以内では高血流にそれ以上では低血流になった.虚血辺縁部では虚血時間に応じて進行性に血流が低下し,特に1.5時間を境に著しく低下した.また虚血遠隔部においては,部位によりその反応性に違いが見られた. 今回の実験モデルにおいては,再潅流群の虚血辺縁部のrCBF変化,梗塞範囲,梗塞率の結果から, 1.5時間以内の再潅流ならば回復の可能性があると思われるが,3時間以上の脳虚血の場合はむしろ病態を増悪させる可能性があると思われた.また虚血遠隔部のrCBF変化については,永久虚血群,再潅流群とも虚血中心部の障害に応じたtransneuronalな影響が示唆されたが,部位によりその反応性に違いがみられた.                               (平成11年8月19日受理)

1999.03.03

Otolaryngological clinic outpatient statistics: 1973-1996: A further report *

 1973年12月から1996年12月の期間における耳鼻咽喉科外来患者の統計的観察を行った. 急性中耳炎患者の数は徐々に減少していたが滲出性中耳炎患者数は変化を認めなかった.感音難聴患者やめまい患者数は徐々に増加していた.アレルギー性鼻炎患者数は増加していたが急性・慢性副鼻腔鼻炎患者数は減少していた.急性・慢性咽喉頭炎患者数は急速に増加していたが急性・慢性扁桃炎患者数はほぼ変化を認めなかった.外傷,異物,機能障害,顔面神経麻痺,反回神経麻痺などの患者数は徐々に増加していた.                                (平成11年8月6日受理)

1999.03.02

Clinical studies of colorectal cancer in patients over 80 years old *

 1974年から1996年までの23年間に当科において行われた80歳以上の超高齢者大腸癌手術症例は82例で,全大腸癌手術症例の7.0%を占めていた.これらの症例ついて,同時期における70歳代の症例を対照群とし,超高齢者大腸癌手術症例の臨床病理学的特徴と,周術期における問題点および手術成績について検討した. 超高齢者症例は,年々増加傾向にあり,組織型では分化型癌が82.6%を占め,深達度ss(a1)以上, stage Ⅱ以上の比較的進行した症例が多い傾向にあった. 術前併存疾患は33例(40.2%)に認められ,高血圧症が最も多かった.術後合併症は18例(22.0%)に認め,70歳代とほぼ同率であったが,イレウス,縫合不全,術後譫妄が多い傾向にあった.在院死亡は3例(3.7%)にみられた.術後遠隔成績において,他病死を8例(23.5%)に認めたが,他病死例とstage IV を除いた累積生存率は,70歳代に比べ低い傾向ではあるものの,統計学的な有意差はみられなかった. 大腸癌症例では高齢者といえど年齢のみから手術を制限すべきでなく,きわめて重篤な術前合併症がみられない限り非高齢者と同等の手術を行うことが可能と考えられ, QOLを重視したバランスのとれた治療法を選択していくことによって,良好な予後が期待できると考えられた.                       (平成11年8月4日受理)

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