h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1997.01.04

The property of myofibroblasts in cases of diffuse alveolar damage (DAD) and accelerated pulmonary fibrosis (APF) *

 臨床的に,成人呼吸促迫症候群(Adult respiratory distress syndrome, ARDS)と診断した症例を, Katzensteinらの定義に従い,明らかな病因を有するびまん性肺胞障害(Diffuse alveolar damage, DAD)と病因不明の急性間質性肺炎(Acute interstitial pneumonia,別名Accelerated pulmonary fibrosis, APF)に分類し,両病態の肺内線維化巣にどういった性状の筋線維芽細胞が認められるか比較検討した.硝子膜形成を特徴とするDADの浸出期(急性期)では,間葉系細胞はビメンチンのみ陽性の線維芽細胞であったが,増殖期(器質化期)になるとビメンチン陽性,α一平滑筋アクチン陽性,デスミン陰性の筋線維芽細胞に変化していた.一方, APF症例では, intraluminal diffuse fibrosisが優位な1例でビメンチン,α一平滑筋アクチン,デスミンすべてが陽性の筋線維芽細胞が認められたが,大半はDADと同じ性状の筋線維芽細胞であった.以上のことから. DAD,APFの両者とも肺胞腔内の線維化形成には筋線維芽細胞が関与するが,筋線維芽細胞の性状は線維化の時期によって異なることが明らかとなった.    (平成9年4月12日受理)

1997.01.03

induction of apoptosis in human peripheral blood lymphocytes with silicate in vitro *

 著者の所属する教室では,作業関連物質に起因する自己免疫疾患の発症機序について,特に珪酸化合物を中心に解析を行ってきたが,既にその発症機序に珪酸化合物のスーパー抗原作用が関係している事を報告してきている,著者は今回の実験では,珪酸化合物のーつであるクリソタイルにより活性化されたリンパ球におけるアポトーシスの誘導について検討した.まず,ヒト末梢血単核細胞を分離,クリソタイル繊維を添加,培養し,培養後の細胞の形態の観察やTUNEL (TdT-mediated dUTP-biotin nick end labeling)法によるアポトーシスの定量的解析を単核細胞のサブセットについて行った.その結果,リンパ球,特にクリソタイルにより活性化を受けるCD4陽性細胞にアポトーシスが誘導されている事が証明された.またFas陽性細胞におけるアポトーシスの誘導の経時的変化の解析より,このアポトーシス誘導にFas分子が関与している可能性が示唆された.これらの結果からアポトーシス誘導が活性化を受けたクローンの除去に働いている可能性が示唆される.                                (平成9年4月2日受理)

1997.01.02

Histological study of the renal lymphatic tissues in mice *

 マウス腎臓内リンパ組織の発達と細胞構成を加齢と関連させて明らかにすることを目的として,生後各期の腎臓を光学顕微鏡レベルで観察した.生後30日,90日,180日および1年の雌雄両性ICRマウス総計52匹を用い,摘出した腎臓からパラフィン連続組織切片および1μm厚の水溶性樹脂準超薄切片を作成した.また画像解析装置を用いて連続切片からリンパ組織の立体構築を行った. マウスの腎臓は単一の腎葉からなり,腎臓実質にはネフロンが密在し,結合組織は腎被膜下,および血管周囲や腎盂にわずかに認められる.生後30~90日齢の腎臓内の結合組織中には形質細胞やリンパ球などの免疫担当細胞が少数含まれる.免疫担当細胞は180日齢になると増加・集合し,結節状の一次リンパ小節を形成する.免疫担当細胞の集合は腎臓内の異なる2ヵ所すなわち皮髄境界領域部の結合組織と腎門部の腎盂結合組織中に形成される.腎門部では腎盂粘膜上皮と静脈の間の腎門結合組織内に,皮髄境界領域では弓状動・静脈に隣接ないしは動脈分岐部を取り囲んで約0.1~0.2mm径の結節状リンパ小節が形成される.両リンパ組織は共に形質細胞を多く含み,なかにはラッセル小体を含有するものもある.リンパ小節中には幼若リンパ球や核分裂像も少数含まれるが,胚中心の形成はない.形質細胞は皮質の被膜下結合組織内や尿細管間結合組織中にも単独ないし数個が集合して分布する. 本研究から老齢マウスの腎臓は実質内に一次リンパ小節を含有すること,腎臓リンパ組織は形質細胞を多量に含むことが明らかになった.       (平成9年3月29日受理)

1997.01.01

Clinicopathological study of primary lung carcinomas at Kawasaki Medical School Hospital *

 1986年から1995年までの過去10年間に川崎医科大学附属病院病理部で扱った原発性肺癌294外科手術例について臨床病理学的に解析した.とくに年次推移,病理組織像,性差,死亡年齢などに注意を払ったが,年次推移,性差については先に報告した1986年~1995年までの剖検例の解析結果と比較検討した.本学では腺癌が最多の組織型で,その増加傾向はここ2~3年でピークに達しているが,小細胞癌は未だに増加傾向を示すとともに,男性の発生率が非常に高いという特異性がみられた.        (平成9年3月10日受理)

1996.04.07

Use of an Expandable Metallic Biliary Stent in the Management of Recurrent Choledocholithiasis *

症例は86歳,女性.8年前に胃癌と胆石症のため胃全摘術と胆摘術をうけRoux-en Y 法で再建された.以後総胆管結石の発作を3回繰り返した.高齢であり胃全摘術後でもあることよりいずれも経皮経肝胆道鏡下電気水圧衝撃波破砕術を施行した.当初本例の結石発生には手術時の迷走神経切断や胆嚢切除による胆汁うっ帯が大きな要因と考えていた.しかし結石破砕後も胆道内圧が著明に上昇していることから乳頭筋機能不全に伴う胆汁うっ帯も関与しているものと考えられた.そこで本例は総胆管末端部から十二指腸にわたり金属ステントを留置し胆道内圧の低下をはかったところ,以後約3年間総胆管結石の再発を認めていない.ステント留置により胆汁うっ帯が改善され結石再発の防止に役立った可能性が示唆された.                            (平成8年12月24日採用)

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