h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1988.03.11

Antitumor Effect of Polysaccharides of Human-type Mycobacterium Tuberculosis by Stromal Collagenation and Cicatrization on High Differentiated Adenocarcinoma and Squamous Cell Carcinoma *

癌細胞を取り巻く血管構築を基盤とする間質成分をはじめ, extracellular matrix, および癌細胞自らが産生するcollagen増生は,発癌または癌移植時にみられる生体の示す重要な生体防御機転である. collagenの増殖は免疫亢進により増強されるがcollagen産生の始動は本質的には癌細胞の性状特に細胞膜の相異により異なるものである.腺癌の場合についてはすでに述べたが,抗原性の知られている扁平上皮癌をはじめ,肺癌の腺癌に端を発し高分化化生を来した類表皮癌,扁平上皮癌は原発巣,転移巣を問わずオリジナルの腺癌に比して著明な間質細胞の増殖とcollagen増殖を伴う間質反応が極めて顕著となる.この事実を証明するため,ヌードマウスにヒト胃扁平上皮癌・ヒト肺高分化型腺癌(類表皮癌)を移植し,他方肺未分化癌のヒト燕麦細胞癌やマウスLewis肺癌を移植して,ヒト結核菌抽出多糖体(SSM)による間質反応,特にcollagen増殖を検討したが,生検所見と同じく無処理の場合でも著明なcollagen増殖のみられる扁平上皮癌ではcollagen増殖はさらに促進され,癌増殖の抑制と限局化による癌巣の瘢痕化が促進した.これに反して燕麦細胞・Lewis肺癌等の極めて未分化でcollagen産生の全くみられないか,乏しい癌細胞の増殖は急速でSSMも無効であった.SSMの扁平上皮癌細胞へのcytocidal effect は高濃度のものを除いて弱いが,殺癌効果の顕著な放射線治療等との併用は将来癌浸潤,転移抑制に極めて期待できるものと考えられる.(昭和63年2月19日採用)

1988.03.10

Patients’ Preferences and Satisfactions with Outpatient Care in Primary Care Unit *

川崎医科大学総合診療部の新患外来患者628名に対して,同病院を選択した理由や,同科へ振り分けられたことに対する感想について,アンケート調査を行った.大多数の患者(77.7%)が大病院志向・専門医志向で,掛かりつけとしての診療を希望している患者は9名(1.4%)とごく少数であった.はじめから総合診療部を希望して受診した患者でも,同様の傾向がみられた.これらの結果から,家庭医の養成には,大病院・専門医志向患者の少ない,一般病院・診療所での研修が必要と思われる.また,総合診療部が家庭医を養成していることを患者へ更に啓蒙する必要があると考えられる.さらに今回の調査を通じて,患者の受療行動パターンを知ることの重要性が明らかとなり,今後は医療人類学的見地からも検討を加えていく必要があると思われる.(昭和63年2月8日採用)

1988.03.09

Continuous Intraarterial Chemotherapy and Hyperthermia for Pain Control in a Patient with Recurrent Rectal Cancer *

再発直腸癌の骨盤部疼痛に対し,抗癌剤持続動注療法と温熱療法の併用療法を行った.方法は以下のごとくである.経皮的にリサーバーを植え込み,内腸骨動脈にANTHRONP-U CATHETERを留置する.そして,持続動注を14日間施行し,同時に温熱療法を3回併用する.抗癌剤は5-Fluorouracil(5FU)を使用し,量は体重kg当たり10 mg,1日量500 mg, 総量7gとした.副作用は貧血と局所の皮膚炎症状を認めた.温熱療法と抗癌剤の持続動注の併用療法は再発直腸癌の疼痛に対する治療として安全かつ優れた方法と考えられる.(昭和63年1月19日採用)

1988.03.08

Indices of Health for All Municipalities in Okayama Prefecture; Based on the Mortalities of Three Major Diseases between 1981 and 1983 *

岡山県下78市町村における死因による地域差の有無を三大成人病について確かめた.すなわちそれらの死亡数を用い,市町村別,男女性別の標準化死亡比(SMR)を求め, SMRによる各疾患相互の相関を調べ,次の結果を得た.1)人口の多い都市部のSMRは平均的な値を示し,人口の少ない町村部ではSMRの差が大きかった.2)男性に比べて,女性の方が地域差があらわれやすかった.3)心疾患,脳血管障害については,男女性の間に相関があったが,悪性新生物総計については,相関がなかった.4)男女性とも,悪性新生物総計と胃癌の間に相関がみられた.(昭和63年2月3日採用)

1988.03.07

Effect of Filling1 Condition in the Intramyocardial Capacitance Vessels on Diastolic Coronary Artery Flow Dynamics *

拡張期の心筋内容量血管には,血管内圧変化を伴わずに血液を貯留しうる, unstressedvolume(UV)が存在する.本研究では,UV内への血液貯留状態(UVが満たされている時とそうでない時)が,拡張期冠動脈血流動態にいかなる影響を与えるかを明らかにせんとした.ここで,心筋内容量血管の血液貯留状態は,冠静脈血流の有無によって評価される.なぜなら,冠静脈血流が存在することは,心筋内血液量がUVを超えて,通常のキャパシタンスの内圧が冠静脈圧より上昇していることを示す.そこで,UVが満たされていない状態(UV unfull)とUVが満たされている状態(UV full)における冠動脈圧一流量関係(PFR)を解析して,拡張期冠動脈血流動態のパラメータを求め,互いに比較した.AVブロックを施した麻酔開胸犬7頭の左冠動脈本幹と左冠動脈前下行枝(LAD)にカニュ-ラを挿入し,灌流圧を制御した. LAD血流量と同時に,大心静脈(GCV)血流速度をレーザドプラ法で計測した.冠血流途絶(15秒間)後の延長した拡張期に,冠動脈をステップ状の種々の圧で灌流し,その後まず得られるGCV血流が出現しないuvunfullの状態と,つづいて得られるGCV血流が再出現するuv fullの状態とにおいて,LADの圧と流量よりPFRを求めた. uv unfull とuv full のPFRはいずれも高い直線性(r=0.97~0.99)を示した. uv unfull のゼロ流量時圧(Pf=0, 19.9±2.2mmHg)は右房圧(7.5±0.9mmHg)より有意に高かった(P<0. 05).冠静脈圧は右房圧より高々2~3 mmHg高値であるので, uv unfull 時のUVの内圧はほほ10 mmHg前後と考えられる.これよりPf = 0の発生部位は,心筋内容量血管よりも上流であることが窺われる. uv full の冠血管抵抗(0.69±0.8 mmH g/ ml/min)は, UV unfullのそれ(0.55±0.07 mmHg/ml/min)より有意に高く(P<0. 05),心筋内容量血管に, uvを超えて血液が貯留することは,拡張期冠動脈血流に対して血管抵抗を上昇させることにより阻止的に作用することが示された.(昭和63年3月18日採用)

1988.03.06

A Phylogenetical Analysis of the Arteries of the Superficial Face in Primates Part 1. Relationship to the Differentiation of Facial Muscles *

原猿類および下等な真猿類においては顔面筋の筋原基とされる Sphincter colli が成体でも残存し,未分化な顔面筋形態を呈することが知られている.このような形態を有する原猿類キツネザル科,ロリス科,真猿類マーモセット科の顔面筋及び顔面浅層に分布する動脈について系統発生学的に比較解析した.頬骨部の筋は,キツネザル科,ロリス科では側頭部より上唇に至る側頭唇筋であった.マーモセット科では側頭部に筋線維は認められず,頬骨を起始とし上唇に終わる頬骨筋が存在していた.著者はロリス科において側頭唇筋の深部に頬骨と結合する新たな筋束を観察した.この筋束は頬骨筋の原型と考えられている側頭唇筋が頬骨筋の形態を獲得する上で重要な役割をはたすと考えられる.頬骨部に分布する主な動脈は,キツネザル科,ロリス科では顔面横動脈であり,マーモセット科では頬骨顔面動脈であった.頬骨部の筋形態の推移に関連して,この部の動脈分布は著しく変化しており,顔面筋の分化発育程度は,顔面浅層の動脈分布形態に影響を及ぼす要因の一つと考えられる.(昭和63年2月27日採用)

1988.03.05

Studies of the Mechanical Strength of Grafted Artificial Bone (Synthetic Hydroxyapatite) ―Biomechanical and Histological Analysis of the Bone-Synthetic Hydroxyapatite Interface― *

骨の無機質と同一の化学構造を持つ多孔性合成ハイドロキシアパタイトを成犬大腿骨および脛骨に埋入した.術後4, 8, 12週で周囲骨組織を含めてアパタイトを採取し,組織学的および力学的に検索を行い次の結果を得た.1)合成ハイドロキシアパタイトは結合織を介さず,新生骨と直接に結合していた.また,合成ハイドロキシアパタイトの気孔内には新生骨の進入を認めた.更に,炎症細胞の浸潤や異物反応はみられなかった.このように,合成ハイドロキシアパタイトは優れた骨親和性と骨伝導性を有していた.2)大腿骨に埋入した円柱型の合成ハイドロキシアパタイトに打ち抜き試験を行った.その結果骨とアパタイトは強く結合しており,術後4週におけるアパタイトの打ち抜きと,正常海綿骨の打ち抜きに必要な力の大きさはほほ同程度であった.3)合成ハイドロキシアパタイトの骨親和牲を数量化するため,アパタイトの表面に接触した骨組織の量を計算して,骨組織接触率(bone contact ratio)を算出した.また,アパタイトの気孔内に進入した骨組織の量を計算して,骨組織進入率(bone ingrowthratio)を算出した.その結果,合成ハイドロキシアパタイト周囲の骨新生は術後約8週でプラトーに達し,アパタイト中央部では術後12週以降でも骨新生が進行していることがわかった.4)合成ハイドロキシアパタイトは骨親和性がよく,骨との十分な接着強度が得られ,供給量も豊富で保存,消毒,成形も容易であり,優れた骨補填材として利用価値が高い.(昭和63年2月26日採用)

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