h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

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1988.03.21

Three Cases of Gastric Inflammatory Fibroid Polyp Diagnosed by Endoscopic Polypectomy *

内視鏡的ポリペクトミーで診断された胃inflammatory fibroid polyp の3例を報告した.症例1は60歳,男性,症例2は57歳,女性,症例3は36歳,男性であった.胃X線検査,内視鏡検査ではすべて胃ポリープと診断された.いずれも前庭部に発生し,症例1,3は無茎性,症例2は亜有茎性であった.摘出標本はそれぞれ,8×8×9mm大,13×9×9 mm大,10×10×5mm大であった.組織学的に症例1は主に粘膜下層に,症例2は粘膜深層から一部粘膜下層に,そして症例3は粘膜深層に好酸球,リンパ球の浸潤を伴う線維性結合組織の腫瘤を認めた.症例1は特に疎な間質(粘液腫様)を有し限局性であったが,他の2例は周辺組織との境界が非常に不鮮明であった.我々の症例と文献的考察から胃のinflammatory fibroid polyp は粘膜層から発生し,粘膜筋板を疎開させて粘膜下層へ広がり,比較的小さなポリープでも粘膜性病変と粘膜下病変の両者の特徴を有すると考えた.(昭和63年5月7日採用)

1988.03.20

Four Cases of Microgeodic Disease *

生検を施行した1例を含む4例のmicrogeodic disease を検討し報告した.指中節骨のX線像所見では小円形透明像と骨皮質の硬化,吸収像を認めた.骨髄の組織像ではわずかな小円形細胞浸潤をともなう幼弱な結合織の増殖が認められた.予後は一般に良好であるが,1例の中節骨に山形の骨端線いわゆる“cone-shaped epiphysis ” を認め,中節骨は短縮し骨幅は増大していた.したがって治療はたんに経過観察のみならず,時には副子固定による関節の安静やsplintageが必要と思われる.(昭和63年3月31日採用)

1988.03.19

An Autopsy Case of Recurrent Hepatic Hydrothorax with and without Ascites Developing in Liver Cirrhosis *

腹水の有無と無関係に肝性胸水を繰り返した肝硬変症の1例を呈示した.初回入院時には胸,腹水ともに認められたが,以後は腹水を伴わない右胸水貯留を来した.剖検で右横隔膜の開孔部と,そこを通る大網の一部が証明された.開孔部を経て腹水の大部分が胸腔に移動し,腹水のみられない右胸水の原因となったものと考えられた.(昭和63年2月3日採用)

1988.03.18

An Intractable Case of Ulcerative Colitis *

内科的治療に抵抗する潰瘍性大腸炎の症例を報告した.患者は39歳女性でほとんど全大腸に炎症が及んでいた.結局,大量下血の合併症のため大腸全摘が行われ長年の病苦から解放された.潰瘍性大腸炎の内科的治療として一般にステロイド(プレドニゾロン)とサラゾピリンR が主要であり,非経口的高カロリー栄養は炎症に対する直接効果はないが,腹痛,出血の軽減に役立つと思われる.外科的治療は主に大量出血などの合併症のあるときに必要であるばかりでなく長期入院を余儀なくされる症例でも有効である.(昭和63年2月1日採用)

1988.03.17

Effect of Ketotifen on Serum Concentration of Theophylline *

経口抗アレルギー剤であるケトチフェンがテオフィリン血中濃度に影響を及ぼすか否かについて,健康成人ボランティアを用いて検討した.その結果,ケトチフェン併用投与後のテオフィリン血中濃度はテオフィリン単独投与時(対照)と有意差がなかった.ケトチフェンはテオフィリンの薬物動態に影響を与えないと考えられる.(昭和63年5月6日採用)

1988.03.16

Interferon Therapy of Chronic Hepatitis B *

インターフェロン(IFN)療法を行ったB型慢性肝炎5例の血清学的および肝生検組織からみたIFNの有効性について検討した. IFN-βを1日3×106~6×106 IU, 4週間連続投与した.投与期間中,全例でDNA-Pの低下がみられた. HBe抗原は1例のみに陰性化が認められた.投与初期にトランスアミナーゼの上昇傾向がみられたが,投与終了後改善した.好中球減少が1例でみられたが一過性であり,投与中止せずに回復した.治療後の肝生検では2例で改善,3例で不変であった.肝実質内の壊死巣の改善や門脈域の細胞浸潤の減少が認められた.(昭和63年5月6日採用)

1988.03.15

Introduction and Present Status of Intraocular Lens Implantation in Kawasaki Medical School Hospital *

当院における眼内レンズ手術は,前講師の一人が宮田眼科病院で1年10ヵ月研修を積み, 1986年6月から導入した.術式は計画的嚢外摘出と後房レンズ挿入であり,前房レンズ挿入は行っていない.術者は嚢外摘出に習熟したものである.手術適応は極めて厳格にしている.今回,手術開始時から1987年12月までの間に術後1ヵ月以上観察できた100眼について検討した.その結果視力0.5以上は91%と良好であった.重篤な合併症は水疱性角膜症の1例であったが,手術器具の厳格な洗浄により最近は経験していない.今後の問題として,角膜乱視のコントロール,新しい手術法や新しいレンズの導入,新しい視機能の評価法,手術教育および倫理について述べた.(昭和63年4月19日採用)

1988.03.14

Studies of Method of Measurement of Pulmonary Diffusing Capacity *

1.肺拡散能力測定(一回呼吸法)におけるForsterの方法とMcGrathの方法を比較検討し,以下の成績を得た.1)Forsterの方法によるDLcoとMcGrathの方法によるDLco´の間には高い相関があるものの, Forsterの方法によって得られた値の方が, McGrathの方法による値より高値を示した.2)両者の肺拡散能力値の差は,測定時の肺胞内気量の差に相関した.3)肺胞内気量の差は, ⊿N2とは相関せず,機能的残気量と有意な相関を示した.2. 一回呼吸法(McGrathの方法)と恒常状態法における肺拡散能力値を比較検討し,以下の成績を得た.1)両者の間には高い相関があり,DLco´が(一回呼吸法)=1.57xDLco(恒常状態法)+3.92の式を得た.2)恒常状態法に比し,一回呼吸法の方が⊿N2との相関が高かった.(昭和63年4月15日採用)

1988.03.13

Diagnostic Nuclear Medicine in Acute Suppurative Osteomyelitis: Special Reference to Evaluation of Disease Activity *

99mTc標識リン酸化合物による骨シンチグラフィと67Gaシンチグラフィを急性化膿性骨髄炎患者35例に行い,その診断と治療効果の評価における有用性を検討した.両シンチグラフィの集積度を4段階に分類し,治療による変化を観察するとともに,炎症の指標である赤沈値との比較・検討を行った.病巣の早期検出に関しては,骨シンチグラフィ(34/35, 97%)および67Gaシンチグラフィ(19/20, 95%)はともにほほ同等の陽性率であった.治療導入後67Gaシンチグラフィは骨シンチグラフィよりも早期に集積度の低下を示した.さらに, 67Ga-citrateの集積は,赤沈値や臨床症状と良好な相関を示した.このように,67Gaシンチグラフィは急性化膿性骨髄炎の早期発見や治療効果の評価に有用であることが示された.(昭和63年4月5日採用)

1988.03.12

A Study of the Heterogeneity in Depression through Cluster Analysis ―A Suggestion from the Therapeutical Effect of Zimelidine Administration― *

うつ病をクラスター分析を用いて分類することを試みた結果,自律神経型,抑制型,心気型,強迫型の4群に分類できた.心気型と強迫型は神経症的傾向が強かったが,自律神経型と抑制型は内因性うつ病の病像を呈していた.セロトニン選択的再取り込み阻害薬のzimelidineに対する反応性は,自律神経型が100%,抑制型が44.4%であり,自律神経型が抑制型よりも良好な反応性を示した(p<O. 1).また,躁病の既往は自律神経型がO%,抑制型が55.6%であり,抑制型が自律神経型よりも躁病への親和性が強かった(p<O. 1 ).これらの結果からは,自律神経型と抑制型の間には生物学的異種性が存在する可能性が示唆される.(昭和63年2月25日採用)

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