h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

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1985.02.02

Studies on Spatial Patterns of Regenerating- Axons as a New Factor Describing1 the Process of Nerve-Regener ation

末梢神経の再生過程を電子顕微鏡写真上における再生軸索の空間配置という観点から考察した.再生神経の組織学的研究で,計量的な変量としてとりあげられてきた指標は再生神経の個数と面積(径)であったが,著者はこれらの指標に加えて,神経再生過程をさらに全体的に把握するため縫合部での再生神経の空間分布を考察した.解析手法として空間パターン解析を用いたが,これは視察によるパターン分類を確率モデルを導入して,数量的見地から検証する方法である.ラットの腓骨神経の同所性移植に基づく実験データを空間パターン解析した結果,再生軸索の空間パターンは再生の初期から後期にかけて集塊型→ランダム型→規則型と推移することが示され,神経の再生時には軸索は時間経過と共に,その相互の位置関係が大きく変動することが.明らかにされた.また,この軸索の空間パターンの推移は再生神経の成熟過程(軸索径の成熟)ともよく対応し,神経軸索の空間パターンは神経再生の進行を記述する新しい因子であることが示された.

1985.02.01

Clinical Studies on Postlaryngectomy Speech Rehabilitation in Kawasaki Medical School Hospital ―Special Reference to Esophageal Speech―

1975年6月より1985年2月までに当科で喉頭全摘した38症例の音声獲得状況を,とくに食道発声について種々の面より検討し,以下のような結果を得た.(1)38症例の内訳は喉頭癌34例,下咽頭癌2例,喉頭外傷2例である.(2)食道発声獲得率は63%であった.(3)24例の食道発声者のうち17例が職を持っていた.(4)14例の発声不能者のうち8例に家族の過剰看護がみられた.(5)発声可能な癌症例22例中16例は術後放射線治療を施行していなかった.(6)これらの因子の分析によって,術前から,食道発声が可能か否かが推定できるようである.

1985.01.20

 

 

1985.01.19

Brunner’s Gland Adenoma of the Duodenum Associated with Multiple Early Gastric Cancer and Atypical Epithelial Lesion: A Case Report

多発性早期胃癌,異型上皮巣を合併した十二指腸ブルンネル腺腫の1例を報告し,本邦における十二指腸ブルンネル腺腫と胃癌合併例についての文献的考察を行った.症例は69歳男性,胃集団検診で十二指腸ポリープを指摘され精査目的で当院外科に入院した.術前に,早期胃癌(IIc+IIb),異型上皮巣を合併した十二指腸粘膜下腫瘤と診断した.切除標本では,十二指腸球部前壁に2.2×1.8cmの山田IV型の隆起病変,前庭部には0.8×1.2cm の扁平隆起病変が認められたが,胃体中部後壁の病変は,わずかに浅い陥凹を示すのみで肉眼的に病変の正確な局在を指摘することはできなかった.病理組織所見は,十二指腸ブルンネル腺腫,多発性胃癌(lIc + IIb, IIb, moderately differenciated tubular adenocarcinoma), ATPであった.

1985.01.18

Extraadrenal Pheochromocytoma ― A Case Report and Review of the Literature ―

67歳,女性の異所性褐色細胞腫を経験したので報告する.術前のCT scan および,血管撮影にて,腫瘤が腹部大動脈左側に在ることが判った. Prazocinにて良好な血圧が保たれ,容易に腫瘤を摘出できた.術後血圧は,140/70mmHgと正常化し,現在患者は,日常生活をおくっている.

1985.01.17

A Case of Carcinoma of the External Auditory Meatus

外耳道癌の1症例を報告した.症例は79歳男性で左血性耳漏を主訴に来院.肉眼的に腫瘤は左外耳道後壁を中心として存在し,表面不規則で易出血性であった.組織は扁平上皮癌であった.放射線,化学,免疫療法を併用し腫瘤は肉眼的に消失した.慢性中耳炎や耳として治療している中に外耳道癌が含まれている可能性がある.

1985.01.16

Subacute Necrotizing1 Lymphadenitis with Fever of Unknown Origin

症例は20歳の女性.入院45日前より,38~39゜Cの発熱が出没していた.近医に受診するも原因不明で,不明熱の精査目的のため当科へ入院となった.入院時より全身状態は良好で,左頸部に直径1~2cmのリンパ節を数個触知したが,その他の理学検査に異常はなかった.検査成績では,白血球数2200, ESR 47 mm/h, CRP 2.2 mg/dl 以外に特記すべき異常を認めなかった.入院後も発熱が持続するため,悪性リンパ腫との鑑別の目的でリンパ節生検を施行した.組織像では,好中球の浸潤を伴わない壊死病巣を認め,診断は亜急性壊死性リンパ節炎(SANL)と確定できた.その他に,リンパ節生検による確定診断こそできなかったが,不明熱の精査で入院し,原因がSANLと考えられる2例を経験している. SANLは,不明熱の原因のひとつとして比較的多く存在するのではないかと考える.

1985.01.15

Responses and Protective Proliferation of Stromal Collagen against Cancer in Double Xenografts Due to Highly Concentrated SSM (100 times: Special Substance, Maruyama)

T-細胞を欠除したヌードマウスヘヒト癌細胞を移植して長期間SSM注射をおこなうと癌間質に由来するcollagen増殖が促進され著しい癌増殖の抑制がみられる.本実験では同一個体にそれぞれ母細胞を異にしたヒト癌細胞HGC,HLCやマウス由来のNB41A3細胞を移植しdouble graftsを作製して,腫瘍細胞に反応する担癌体のcollagen反応と増殖を比較した.その結果, collagen反応様式の基本は個体の免疫基盤に左右されるよりも癌細胞自身に依存していることをさらに明らかにすることができた.今回使用したSSMは従来ヒトの治験に使用されているSSM-A (2μg/ml多糖体)のほかに100倍高濃度液(200μg/ml多糖体)を使用した.その結果, collagen増殖はさらに促進されSSM-Aでは著効の見られなかったHLC xenograftでも著しいcollagen増殖がおこり,癌細胞の封じ込めも著しかった. 濃度のほかにSSM注射時期も重要で,早期使用ほど有効であった.また,高濃度液といえども全く副作用はみられなかった.なお,肺癌移植の場合,高濃度注射により一部の腺癌は扁平上皮細胞への化生がみられた.以上の所見からヒト型結核菌体多糖体の抗癌への作用機序は腫瘍間質からのcollagen増殖促進が本質的なもので癌の母細胞の種類によって異なるが,腫瘍間質の少ない腫瘍では効が少なかった.このSSMとcollagen増殖との因果関係については,結核菌体多糖体が直接collagenの生合成に利用されるのか,副作用なく長期間使用可能なために,担癌個体の低下した免疫能を正常に復する結果,修復機転の回復促進が起こるのか,また,癌細胞が放出するImmunosuppressor acidic protein等の減少を起こすことによって担癌体の免疫基盤の正常化により,癌破壊組織の修復が促進されるかなど, collagen増殖がSSMの間接的作用によるのか今後の癌治療への重要な課題を提供した.既報の乳癌第II症例(50歳)は昭和54年43歳の時骨盤内転移を発見し,長年腰椎転移を認めているが,現在(昭和60年4月)生存加療中で,昭和58年1月に膣部の転移巣の脱落を認め生検組織で,癌転移組織は線維化消失を起こしながら増殖していた.

1985.01.14

Studies on the Platelet Saponin Test

連続平均容積測定装置を用いて,血小板容積(Initial mean particle volume ; I-MPV),サポニン添加後の膨張率(expansion ratio ; ER),低張溶液中での縮小率(Shrinkageratio ; SR)を測定した.血小板容積の測定には3.13%クエン酸ソーダを用いた方がEDTA-3Kよりも再現性がよかった.健康成人(20-35歳,男15人,女15人)のI-MPVは8.1±0.7μ3, ER は1.41±0.07, そしてSRは24±4であった.健康成人30人を含む100例, 112回の測定では血小板数とI-MPV,血小板数とSRそしてI-MPVとERは負の相関があり(p<0.001),血小板数とER, I-MPVとSRの間には正の相関(p<0.05)がみられた.急性期脳血管障害患者では,血小板容積は大で,脳出血例のSR(凝集能)は高値であった.熱傷患者の血小板容積は血小板数の動的変化に伴い変動し,ERとSRも同様に変化した.以上より,血小板容積を測定することは血小板数の測定により各種疾患の病態を把握するのと同様の意義があると思われた.

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