h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1990.03.07

Clinical and Pathological Studies of Cases with Long-Term Survival after Endoscopic Injection Sclerotherapy (EIS) for Esophageal Varices *

5% ethanolamine oleate (EO)による内視鏡的食道静脈瘤硬化療法(EIS)を行った68例のうち, EIS後3年以上生存した11例を対象とした.EISの施行は緊急例2例,待期例3例,予防例6例であった.基礎疾患は全例肝癌非合併肝硬変で, Child分類ではChild A 3例, Child B 8例で, Child Cの症例は認められなかった.11症例中9例は,1~3回の血管内注入法によるEISで,静脈瘤は完全消失し,3年以上再発を認めなかった.9例中2例が死亡し,肝不全死であった.剖検できた1例で,組織学的に静脈瘤は完全に器質化されていた.11症例中2症例は,血管内注入法によるEISで,静脈瘤は完全消失したが,その後atypical red-color signを示す静脈瘤の再発を認め,主に粘膜下注入法によるEISを4~7回繰り返し,3年以上静脈瘤出血死が防止できた.うち1例が死亡し肝不全死であった.組織学的には粘膜下層の高度の線維化を認め,静脈瘤は器質化していた.しかし粘膜固有層の静脈は一部拡張し,器質化は認められなかった.これは内視鏡所見のatypical red-colorsignに相当すると考えられた.以上より次の結論を得た.1)血管内注入ですべての静脈瘤の器質化が得られれば長期生存が可能であると考えられた.2) EIS後の再発例に対しては,繰り返しEISを行うことにより長期生存が可能であると考えられた.                       (平成2年12月26日採用)

1990.03.06

Diagnosis and Endoscopic Investigation of Amebic Colitis *

アメーバ性大腸炎を過去13年間で8例経験した.症例は男性7例と,女性1例.主訴は粘血便か血便.5例に海外渡航歴あり.診断は1例が既往歴と内視鏡で,1例が抗体法で,残りの6例が粘血便か生検組織の鏡検で赤痢アメーバ栄養型または嚢子を検出して確定した.また生検のHE.染色標本からの原虫検出率は4/6例(67%)であった.病変は全例直腸に存在し,1例盲腸にも認めた.内視鏡的には出血,発赤,びらん,潰瘍,浮腫状ひだ隆起を認め,5例で病巣間に健常粘膜に近い像をみた.なかでも多発生のタコ疣状・アフタ様のびらん・潰瘍と出血が散在性に目立つこと, Houston弁や直腸下部(Rb)の粘膜が非常に凹凸浮腫状でその表面にもびらん・潰瘍が存在することが特徴的であった.(平成2年10月5日採用)

1990.03.05

Ultrastructural Study of Human Hepatocellular Carcinoma by Ultrasound-Guided Fine Needle Biopsy ―Comparison of Regenerative Nodule and Adenomatous Hyperplasia― *

肝細胞癌(HCC)が疑われた肝硬変患者に超音波下細径針肝組織生検を施行し,37例より採取された再生結節(RN),腺腫様過形成(AH), HCCの組織を電顕的に観察してHCCの診断に関する臨床病理学的検討を行った. lateral surface (LS)の微絨毛突起は, RNでは増生し, AH, HCCでは減少する傾向があった.LSにおける細胞間隙(ICS)の幅と面積を計測すると, RN, AH, HCCの順で幅,面積ともに有意な狭小化を示した. Edmondson分類のGrade- I ~II型のHCC群とIIおよびIII型群を比較すると面積に差はなかったが,幅はIIおよびIII型群で有意に減少していた.超音波検査で被膜所見を有するHCCでは,なかった例より幅,面積ともに有意な狭小化を示した. ICSの狭小化は,周囲細胞組織を圧排しながら増殖するHCCの膨脹性発育と被膜の存在に関連していると推察された. RNとAHの鑑別診断あるいは高分化型HCCの診断には, ICSの狭小化が重要な所見と考えられた.                             (平成2年10月26日採用)

1990.03.04

Comparison of the Gene Expression of a Glucocorticoid Receptor by Diffusion-Based CAT Assay *

ステロイドホルモン受容体遺伝子の発現は, chloramphenicol acetyl transferase (CAT)を指標にしたCAT assay を用いて表すことができる.しかし,細かい実験条件の違いによりトランスフェクション効率が実験ごとに異なるため,直接その値を比較するのに問題があった.そこで我々はPSV2CAT系の発現プラスミドを用いて,シオノギ乳癌細胞とマウス野生型のグルココルチコイド受容体遺伝子のCAT活性を二層拡散法で測定し,その測定条件の吟味を行った.その際,各受容体のCAI(CAT activity index)をpositive control(pSV2CAT)のCAIの100分比をとったところ,各測定ごとの変動もなく,毎回トランスフェクション効率を測定しなくてもCAT活性を比較できることがわかった.(平成2年10月29日採用)

1990.03.03

Effect of Alcohol Administration on the Myoglobin of the Myocardium ―Immunohistochemical Study on the Myocardium of Mice― *

アルコール性心筋症の発生機序については不明な点が多い.ミオグロビン(Mb)は心筋細胞内で主に酸素の運搬と貯蔵を行い,その代謝にとって重要な働きをしている.前回,剖検心を用いた研究で,長期間のアルコール摂取が心筋細胞のMbを障害する可能性があることを報告した.本研究では,心筋細胞のMbに対するアルコールの影響を検討するために,マウス心筋を用いて心筋細胞のMb染色性の変化を免疫組織学的に検索した.ICR系マウスを対象とし,以下のような急性および慢性投与実験を行った.急性投与実験では, 33%エタノール(EtOH)を一度に腹腔内投与し(0.015ml/g weight),その後数回継時的に心筋細胞のMb染色性の変化を検索し,あわせて血清および心筋組織内EtOH濃度の変化をガスクロマトグラフィーにより検討した.慢性投与実験では, 10% EtOHを長期間経口摂取させた後に,心筋細胞のMb染色性を非EtOH投与群と比較検討した.Mb染色用には抗マウスMb家兎血清(lgG)を使用した.光顕用のMb染色は,マウス心筋のホルマリン固定.パラフィン切片を用い,ペルオキシダーゼ酵素抗体間接法によって行った.また,電顕用のMb染色は超薄切片上でprotein-A金コロイド法によって行った.急性投与実験では,心筋組織内EtOH濃度が最高に達した時期(EtOH投与後1~2時間)に心筋細胞のMb染色性が低下し,それは心筋組織内EtOH濃度の下降と相関して回復した.電顕的にも同時期に,心筋細胞の金粒子沈着の数が明らかに減少した.慢性投与実験では, EtOH投与群と非投与群との間で心筋細胞のMb染色性に有意差がなかった.以上の結果より, EtOHまたはその代謝産物が心筋細胞のMb抗原性に一時的な影響を与えることが明らかになり,それはさらに何らかのMb代謝障害につながる可能性が示唆された.                              (平成2年10月11日採用)

1990.03.02

Effect of Heart Rate on Cardiac Hemodynamics in Experimental Aortic Regurgitation ―Part 2 Studies under Administration of Hydralazine― *

実験的重症大動脈弁閉鎖不全(AR)犬を用いて, hydralazine (HY)投与前後において心拍数が心血行動態に及ぼす影響を検討した.雑種成犬9頭を対象に,バスケット型カテーテルを用いてARを作製した.重症AR(平均逆流率:69.2%)時に,右房ペーシングにて心拍数毎分90から段階的に増加(90 ・ 100 ・ 120 ・ 140 ・ 160 ・ 180)させ心血行動態諸指標を記録した後, HY 0.4 mg/kg を経静脈的に投与し,投与後20分から40分の間に重症ARと同様に段階的に心拍数を増加させ心血行動態諸指標を記録した.1)HY投与前:心拍数増加により,毎分140までは全末梢血管抵抗の減弱ならびに拡張期時間/収縮期時間比の急峻な短縮により逆流率が改善,前方心拍出量が増加し,心血行動態は改善した.しかし,心拍数毎分140以上では,心筋虚血に基づく左室拡張期特性の異常と収縮能の低下のため左室拡張末期圧が上昇し,全心拍出量が低下し,全末梢血管抵抗の増大による逆流率の増加が加わり前方心拍出量がさらに低下し心血行動態は悪化した. 2 ) HY投与後:心拍数毎分140までは,全末梢血管抵抗の減弱により逆流率は改善,前方心拍出量は増加,左室拡張末期圧は低下し,心血行動態はさらに改善した.心拍数毎分140以上では,全末梢血管抵抗は増加せず,逆流率は不変で前方心拍出量の減少は軽微であった.また,心筋虚血は示されず左室拡張期特性の異常と左室拡張末期圧の上昇が軽微であった.したがって重症ARに対しては,HY投与はいずれの心拍数でも心血行動態を著明に改善し,頻拍時の心血行動態悪化も軽微にとどまった.以上より,ARに対する薬物療法としては,血管拡張剤の投与が好ましく,さらに頻拍時に生じる血行動態の悪化を軽減させると考えられた.(平成2年9月17日採用)

1990.03.01

Resident Macrophages in Hematopoietic Tissues : Their Roles in Erythropoiesis and Granulopoiesis *

マウス造血組織(骨髄・脾臓)の定住性マクロファージは骨髄の前駆細胞に由来する細胞で,細網細胞,内皮細胞等の骨格構成細胞とはF4/80抗原によって明瞭に区別される.他組織のマクロファージおよび培養によって得られるマクロファージとはフォルスマン糖脂質を発現する点が異なる.後期赤芽球前駆細胞(CFU-e)はこのマクロファージに付着し,エリスロポエチンの下で増殖・分化する.このときマクロファージは赤芽球との接着によって形態変化を示し赤芽球を包むように胞体突起を伸ばす.その結果“赤芽球島”が形成される.一方顆粒造血亢進時には,顆粒球クラスター形成細胞が付着し,“顆粒球島”が形成される場合もある.このように定住性マクロファージは,造血の後期段階において造血支持細胞としての役割を果たす.              (平成2年11月26日採用)

1990.02.10

Congenital Antral Membranous Atresia Associated with Epidermolysis Bullosa Simplex *

単純型先天性表皮水疱症を合併した先天性胃前庭部謨様閉鎖症の1例を報告した.症例は生後3日目の男児.生後3日目より頻回に胆汁を混じない嘔吐をするようになったため当科に転科した.腹部立位単純写真では,左上腹部に単一の胃ガス像が認められるのみで,下部消化管にガス像は全くみられなかった’.よって先天性幽門閉鎖症と診断し,手術を施行した. antral membraneを切除し,Heineke-Mikulicz法で幽門形成術を施行した.術後経過は良好であったが,生後1年目より先天性表皮水疱症の合併がみられた.            (平成2年5月26日採用)

1990.02.09

A Case of Acute Hemorrhagic Rectal Ulcer *

急性出血性直腸潰瘍の1例を報告した.症例は78歳女性,右不全麻痺,言語障害で外来を受診し,左脳梗塞と診断され,本院神経内科へ入院.入院第9病日目,突然,無痛性の新鮮下血を大量に認めた.同日の緊急大腸内視鏡検査で,歯状線から2cm口側左側壁に約5~10 mm大の地図状直腸潰瘍を3個認めるも出血を認めなかった.翌日の大腸内視鐃検査では同部に一部,露出血管様病変を認めたが止血していた.同日夕方,再度大量出血し,前ショック状態となり,第3回目の大腸内視鏡検査を行った.前回内視鏡時認められた部位に動脈性出血点を認めレーザー凝固止血法を用いて止血し得た.出血後,19日目の大腸内視鐃検査では瘢痕状態を確認した.            (平成2年8月24日採用)

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