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Online edition:ISSN 2758-089X

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1988.01.19

Two Cases of Cystic Lesion in the Roof of the Acetabulum *

右股関節痛を主訴としX線像で寛骨臼蓋に嚢腫様骨透亮像を呈した2例を経験した.1例は病理組織診断から変形性股関節症に伴う嚢腫であった.もう1例は骨内ガングリオンであった.症例1: 47歳,女性.主訴は右股関節痛.X線上,軽度の臼蓋形成不全があり臼蓋外縁に直径1.5 cm大の周囲が骨硬化像で縁どられた骨透亮像を認めた.治療として掻爬骨移植及び臼蓋形成術を施行した.術後早期から変形性股関節症への進展を認めた.症例2: 44歳,女性.主訴は右股関節痛.X線上,臼蓋外縁に直径1.5 cm大の骨透亮像が認められ,掻爬骨移植術を施行した.術後経過は良好と思われた.これまでに報告された臼蓋に発生した骨内ガングリオンには明らかな臼蓋形成不全や変形性股関節症が認められた症例がある.骨内ガングリオンの発生機序が変形性関節症の嚢腫の発生機序と類似するとの考えもある.骨内ガングリオンと変形性股関節症の嚢腫の鑑別は,X線像で変形性関節症変化が軽度の場合には鑑別が困難であり病理組織所見・手術所見など総合的判断が必要と考えられたので報告した.(昭和62年9月22日採用)

1988.01.18

A Case with Gastric Cancer in the Course of Multiple Myeloma *

1年以上の長期にわたって経過観察し得た多発性骨髄腫例で腫瘍マーカーの上昇により胃癌の併発を疑い,胃内視鏡下の生検にて印環細飽癌の合併と診断し得た1例を経験したので報告した.また日本剖検輯報より得た,本邦で初めて症例報告された昭和39年から21年間の多発性骨髄腫と他の腫瘍の合併例180例に統計学的検討を加えた.合併腫瘍として消化器癌(特に胃癌)が最も多く,性別では男性に多い傾向があった.(昭和62年9月16日採用)

1988.01.17

A Case of Hepatocellular Carcinoma with Various Autoimmune Diseases *

患者は60歳男性で,昭和58年3月に口腔内と腹部,下肢に水疱及び糜爛が生じ生検にて尋常性天疱瘡と診断された.同年6月に肝機能異常を指摘され腹部超音波, CT,血管造影検査にて肝細胞癌と診断された.更に同年10月には眼瞼下垂や上肢挙上困難が出現し,テンシロンテスト陽性,抗アセチルコリン受容体抗体陽性,誘発筋電図等にて重症筋無力症と診断された.また経過中,甲状腺機能低下症も合併しシェーグレン症候群も疑われた症例を経験した.これらの疾患に共通の病因を想定するのは困難であるが細胞性免疫の異常を認めており,何らかの自己免疫的素因を共通の基盤として多彩な病態が併発したものと考えられた.(昭和62年7月9日採用)

1988.01.16

Our Operative Procedures for Pressure Sores *

褥創に対しては従来保存的治療が主で,外科的治療法も行われてきたが,共に十分な治療効果は期待できなかった.しかし最近になり,保存的療法も多種の治療薬が開発され効果を上げてきており,また,筋皮弁,筋弁の普及により外科的療法の面でも大きく進歩してきた.ここでは,私たちの症例に対する外科的療法について述べ,併せて文献的考察を行いたい.(昭和62年7月16日採用)

1988.01.15

Super Bone Scans on Bone Scintigraphy in Patients with Metastatic Bone Tumor *

骨シンチグラフィ上,び漫性の集積増加を認めた悪性腫瘍(胃癌3例,前立腺癌4例,移行上皮癌1例)8例について,組織型,血清アルカリフォスファターゼ(ALP),カルシウム,リン,クレアチニン,尿素窒素濃度,骨シンチグラム所見,骨x線像及び肝,肺転移の有無を検討した.び漫性の集積増加と組織型との間にはー定の傾向がみられなかった.血清パラメーターのうち,血清ALP値は全例著明な高値を示し,造骨細胞の活性が亢進していることが示された.骨x線像では,転移巣は骨硬化像が主体であり,一部骨融解像が混在していた.胃癌例について,肝転移との関係をみると,肝転移が認められないにもかかわらず、び漫性の骨転移が存在した例が3例中2例に認められた.このように,び漫性の骨集積を示す例は,99mTc標識リン酸化合物の集積機序や骨動態を知る上で興味深いことが示された.(昭和62年9月25日採用)

1988.01.14

A Report of Nasopharyngeal Cancer *

川崎医科大学附属病院開院後当科で治療をした上咽頭癌17症例について考察した.1)年齢は男性40歳代,50歳代に集中し,女性は各年代に平均的にみられた.男女差は2.4倍で男性が多かった.2)初発症状は頸部腫瘤が最も多かった.3)当科への受診経路として他院耳鼻科,他科からのものが多かった.4)病理組織は未分化癌が最も多かった. 5) Stage分類ではStage IV 症例が最も多かった. 6) EBV特異抗体をみるとEBV感染が引き金になっていることが推測された.7)治療は化学療法ではその副作用に注意を払うべきであり, 5FU等の緩やかな化学療法の併用が効果的であると推測する.(昭和62年9月8日採用)

1988.01.13

A Study of Neonatal Muscle Growth ―With Special Reference to Postnatal Muscle Fiber Increase in Neonatally Denervated Mice ― *

新生児期脱神経筋を用いて電顕的形態分類,形態計測学的観察を行い,新生児期骨格筋の発達過程における脱神経の筋線維数の増加におよほす影響について検討した.形態的に,脱神経筋では多くの筋線維において直径の増加がみられず,日を経るに従って空胞変性, pseudomyelin figureを呈する変性物を含む筋線維が増加したが,一部の筋線維においては肥大がみられた.筋線維の数的増加に関しては,脱神経筋においてはコントロール筋でみられた生後5日間における増加が存在しなかった.脱神経によってマウス骨格筋に通常みられる生直後の筋線維増加は抑制され,また,生直後の筋線維増加の源とされる単一の基底膜内に複数の筋線維を有した集合線維から,個々の筋線維が分離する過程が,障害されたものと考えられた.電顕的形態分類においては,脱神経筋では筋衛星細胞を含む筋線維がコントロール筋に比し少なく,衛星細胞の形成についても末梢神経線維の関与が示唆された.(昭和62年9月21日採用)

1988.01.12

Clinical Features of Gastric and Duodenal Ulcers in Elderly Patients *

昭和61年1月より12月までの1年間に初回内視鐃検査で胃・十二指腸潰瘍と診断された325例のうち60歳以上の老年者は118例, 36.3 %であり,潰瘍別に老年者の占める率をみると胃潰瘍では43.5%,十二指腸潰瘍では23.6%,胃・十二指腸併存潰瘍では34.6%であった.老年者の胃・十二指腸潰瘍のなかで胃潰瘍は71.2%で十二指腸潰瘍は21.5%であり,若年者,壮年者に比べて胃潰瘍の占める割合が明らかに高く,高齢になるにつれてこの傾向が大であった.胃・十二指腸併存潰瘍では,各年齢層で明らかな差はなかった.老年者胃潰瘍の存在部位は,胃体部,特に胃体上部に多かったが,十二指腸潰瘍の存在部位では各年齢層による差は認められなかった.老年者では,自覚症状がしばしば認められなく,高齢になるにつれて潰瘍出血例は頻度を増していた.(昭和62年9月4日採用)

1988.01.11

Three Dimensional Analysis of Arteriography of the Cephalic Arterial Pattern in Primates ― Part 2 The Maxillary Artery of the Lorisidae in Prosimii *

原猿類ロリス科における顎動脈とその関連動脈について頭部動脈造影写真を立体的に観察し,系統発生学的な解析を行い,ヒトおよびヒト胎児動脈系と比較検討した.1)ロリス科は特異な走行を示す内頸動脈とrete-mirabileを有し,その内頸動脈は上行咽頭動脈に由来していると考えられる.rete-mirabileは各属間の形態的相違だけでなく,個体間,左右間にも異なった形態を持つており,顎動脈と吻合し,またその分枝は上行咽頭動脈の走行と類似している.2)ロリス科のアブミ骨動脈は消失し,末梢部は背側眼動脈の硬膜枝となり,眼動脈は顎動脈と2,3本の吻合枝を持っている.3)ロリス科の口蓋動脈は大小2本存在するが,特に大口蓋動脈はヒトとは異なり口蓋の正中寄りを走行し外側に分枝する.4)ヒトの胎生期40~44日にみられるアブミ骨動脈-顎動脈吻合はロリス科には認められないが,眼動脈一顎動脈吻合という異なった形が認められる.(昭和62年8月25日採用)

1988.01.10

Achalasia ― Report of 25 Cases and Method of Pneumatic Dilatation ― *

食道アカラシア25症例について検討した.性別は,男性16例,女性9例であった.年齢は19歳より81歳に及び,平均42.7歳であった.発病年齢は10歳代から30歳代に多く,平均31.1歳であった.病悩期間は,5年以内の人が多かったが,平均11.4年であった.症状は,嚥下困難,嘔吐,体重減少,胸痛が多かった.食道造影の拡張度ではgradeIが2例, grade Ⅱが15例, gradeⅢが6例で,拡張型では紡錘型が14例,フラスコ型が5例,S状型が4例であった.食道内圧曲線では,A型が5例,B型が10例であった.21例に拡張術が施行され,全例自覚症状は消失した.食道造影では17例で食道拡張幅の減少を,食道内圧測定では9例で静止圧の低下を確認できた.拡張術には3種の拡張器を使用したが, Microvasive社製のRigiflex dilator は,操作性,耐久性において最も優れた拡張器であった.(昭和62年8月15日採用)

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