h_kaishi
Online edition:ISSN 2758-089X

topimage01

1984.03.15

Two cases of leiomyogenic tumor of the small intestine – Their roentgen manifestations –

我々は小腸の管外性発育型平滑筋腫癌を2例経験したので呈示した. レ線学的に2つの特徴的な所見を得た. 1つは充満像での小腸係蹄の変形像であり,片側性に一部が伸展され,内側に陥凹している. これを我々はコップの一種のゴブレットに似ているので,ゴブレットサインと呼称した. もう1つは二重造影での平坦な輪状の突出であり,中央のニッシエは伴うときと伴わないときがある.我々はこれをリングサインと呼称した. 選択的小腸造影を行うことにより,より早期に小腸腫癌の粘膜面の変化がとられらえると考えた.

1984.03.14

Renal Function in the Nephrotic Syndrome with Minimal Glomerular Change and Membranous Nephropathy

微小変化群9例と膜性腎症9例において,ネフローゼ期と回復期の腎概能について検討した.膜性腎症のネフローゼ発症年齢は,微小変化群に比し有意に高齢であった.蛋白尿と低蛋白血症は,微小変化群と膜性腎症で有意な差を認めた.ネフローゼ期間は膜性腎症でかなり長期間であった.ネフローゼ期から回復期で,微小変化群において低下していたCthioとFFは増加し,一方膜性腎症では,CthioとCPAHは低下した.微小変化群のCPAH及び膜性腎症のFFは,一定であった.微小変化群と膜性腎症における腎機能のこういった変化に対する,発症年齢,光学顕微鏡レベルでの病理組織学的変化,蛋白尿,低蛋白血症,薬剤などの因子の関与は少ない.微小変化群と膜性腎症においての腎機能変化の差異は,腎内血行動態の変化に関与する免疫学的あるいは内分泌学的病態因子の違いによる可能性が考えられ,これら因子についてのより詳細な解明が待たれる.

1984.03.13

Evaluation of Misplaced Event Count Rate Using a Scintillation Camera

種々の散乱体厚におけるシンチレーションカメラのMisplaced event count rateについて以下の結果を得た. 1. Misplaced event count rateの一部を示すと思われる関心領域内計数値は,アクリル厚5cmをピークに低下する傾向を示した. 2.関心領域内計数値対トータルカウントの比においては,散乱体厚を大きくするに従い値が大きくなった. 3.散乱体厚を大きくすることにより,光電ピークの高エネルギー領域側よりも低エネルギー領域側での増加が大きかった. 4.光電ピーク以外のエネルギー領域においては,今回の実験設定で最も低エネルギーレベルであった76keVで散乱体の影響が大きかった.

1984.03.12

Quality control of digital curie meter

キュリーメータは,核医学分野において放射能量を測定するために広く用いられている.今回Aloka IGC-2型ディジタルキュリーメータの特性を, 日本アイソトープ協会医学薬学部会核医学イメージ規格化専門委員会の報告に基づき検討した.放射能指示値は,標準線源(60Co, 183Ba, 137Cs)を用い,標準線源における照射線量率定数に対するレスポンスを示すK値と,指示値における照射線量率定数に対するレスポンスを示すJ値を求めた.直線性およびレンジ間誤差は線源に99mTcを,再現性は137Csを用いて,経時的に測定することにより行った.また,溶液量および容器依存性は種々の溶液量,容器を組み合わせて行った.その結果,直線性,レンジ間誤差および再現性については良い精度が得られ,溶液量および容器依存性は最大約10%の誤差が認められたが,実験により補正係数を求めることにより解決された.しかしながら, K値, J値からキュリーメータの性能として最も重要な指示値の値づけに問題があることが判明し,全ての核種について検出感度が低く,57Co, 67Ga, 197Hgについては校正の必要があった.

1984.03.11

Studies on Several Practical Problems in Determination of Red Cell Glutathione Reductase Activity

ヒト赤血球グルタチオン還元酵素(GR)の測定の実際に関する諸問題点,特に,標晶としての洗滌赤血球及び溶血液の調製,自動記録装置を備えた光電比色上の問題点,酵素活性に及ほす基質,補酵素,反応液pH, FADによる活性化などについて検討した.また本酵素のMichaelis定数を基質(GSSG)及び補酵素(NADPH)について検討し,あわせて,成人及び新生児の赤血球GR活性について,正常値を設定した.

1984.03.10

PULSES evaluation and ambulatory ability of hemiplegic patients

臨床的な意味で歩行の自立は移動の自立と同様の意義を持ち,極めて重要である.脳卒中による片麻痺,脳動脈硬化症を主体とする老人病院でリハ医療の評価法については,現在まで種々発表されているが,我々は筒単に行え,老化も考慮に入れたモスコビッツのPULSESの得点と,独自に作成した歩行評価点との比較検討を統計学的に行った. 対象と方法については次の通りである.昭和58年6月末,リハ治療を行っていた症例121名のうち,無作為に抽出した40名について行った.PULSESについて:そのアルフ ァベットはP:全身状態,U:上肢, h:下肢, S:知覚, E:排尿.排便, S:精神,感情を示し,これら6項目を異常無しから重度異常の四段階に分けた. 歩行評価についてはI補助具. II補装具.III介助. IV安定性を分類し, 20m歩行速度を測定した. 解析の対象とした項目はPULSES (6項目)と歩行評価4項目(評価の順序づけの困難な補助具を除く)の計10項目で,データー数は40であった. 結果については次の通りである.各項目間の相関について, PとLの相関は極めて高かった.また安定性と介助,歩速とP,歩速と安定性に相関が深いところから,多忙な日常診療では,患者の疲労,排便をも考慮して, PULSESが歩行の実用性の評価にも,かなり信頼性をもって適応できる事が示された.

1984.03.09

Studies on Human Chorionic Gonadotropin Accumulation to Rat’s Ovary by Light-and Electron-microscopic Radioautographies

Human Chorionic Gonadotropin (hCG)の卵巣集積動態の詳細を形態学的に検討する目的でSprague Dowly系(S.D.系)正常成熟雌ラットと疑妊娠状態とした同ラット125I標識hCG (125I-hCG)を投与し,その卵巣各組繊細胞成分におけるhCG分布を光学顕微鏡,並びに電子顕微鏡radioautographyにて観察を行い,以下の結果を得た. 1.ラット尾静脈より125I-hCGを投与し,一定時間後に卵巣を摘出し,摘出卵巣の125I放射活性を測定,卵巣湿重量mgあたりの125I-hCG集積状態(CPM/mg tissue weight)を検討してみると,性周期estrus 1期の正常卵巣.疑妊娠ラット卵巣いずれにおいても,125IhCG投与後2時間から6時間にかけて125I放射活性高値が見られた. 2.ラット尾静脈より125I-hCGを投与後摘出した卵巣の光学顕微鏡radioautographyによれば125IhCGの存在を示す銀粒子は非妊娠成熟ラット性周期estrus 1期の卵巣二次卵胞の英膜細胞,間質の一部に多く見られ,疑妊娠ラッ卜卵巣では黄体に多量,間質に少量見られた125IhCG投与後2時間から6時間の各時点で上述の細胞に多く銀粒子が見られ, 12時間後に銀粒子はほとんど消失した. 3.ラット尾静脈より125IhCGを投与後摘出した卵巣の電子顕微鏡radioautographyを作製,観察,125IhCGの存在を示す銀粒子が細胞内小器官のいずれに所属するかの判定はSalpeterらの判定法に従い,細胞内小器官の面積測定は点計数面積計測法によって行い,銀粒子の分布状態を検討した.非妊娠成熟ラット性周期estrus 1の卵巣二次卵胞では125I-hCG投与後2時間と6時間の時点で莢膜細胞細胞膜に,又,疑妊娠ラット卵巣では黄体細胞細胞膜,微絨毛に有意に銀粒子が認められた.前者の顆粒膜細胞にも銀粒子は認められたが, back ground silver grainsと有意な差は認められなかった.細胞膜,微絨毛以外の細胞内小器官にも銀粒子は認められたが,有意に認められると判定されたものはなかった.又,両時点での各細胞小器官における銀粒子の増減も見られなかった. 4. hCGの細胞内internalizationについては,現在これを肯定する報告もあるが.本検索では各細胞内小器官に銀粒子の存在を思わせる所見はあるものの,統計学的に有意な存在の確証は乏しく.今後の課題と考えられた.

1984.03.08

Calculation of Axon Packing- Density from Mean Diameter and Mean Number of Axons

軸索の充填密度とは, 「神経束断面積の中で,軸索面積が占める割合」を表す指標である. 計測領域の面積をA,その中にある軸索数をn,各軸索の面積をSi (i=l,2, …, n) とすると軸索の充填密度は S=nΣi=1A (1)と定義できる.このSを軸索の平均直径と単位面積当たりの平均個数より計算する方法を研究した.つまり,軸索の平均直径をdとすると, (1)式は S=π/4・nd2/A (2)で推定できる.そのとき(2)式で問題となるのは径の変数,つまりdに何を使用するかである.これについて,分布の適合度検定をおこない,統計学上最も理論的なdが何であるか調べた.その結果,有髄軸索の径についてのヒストグラムは対数正規分布であり,その横断面は楕円であることが明らかとなった.したがって, dには Iog√長径×短径 の平均を採用すべきであると推定された.実際の移植神経のデータにおいても,このような補正をしないと,悪いはずの再生神経が正常より過大評価されるものが多数出現した.

1984.03.07

Aromatization of C19 Steroid by Human Fetal Lung* Tissue

卵巣から分泌されるestrogenは主としてestradiolで,estroneは末梢組織で生合成されることは現在一般に認められている.それらの末梢組織としてはヒト肝,毛嚢,脂肪組織,ヒト胎児脳があげられているが,その他の部のestrogen生合成とその詳細な生成機序は不明である.ヒト胎児肺組織により,C19 steroidがaromatizationを受けることについて検索し,下記の結果が得られた.(1)ヒト胎児肺組織由来とされるWL-38培養株細背の培養液中に,対照としたヒト卵巣embryonal carcinoma由来の培養株細胞の培養液中より, radioimmunoassayにより estroneの有意の高値が, estradiol, estriolの値に差はないことが得られた.(2)川崎医科大学衛生学教室植木助教授により樹立,維拝されているヒト胎児肺由来HEL-53培養株細背を14C-androstenedioneを基質としてincubate し,生成物を培養液より抽出,数回のクロマトグラフィーにより純化を行い,再結晶法にてestroneが0.81%の転換率で生合成されることを確認した.(3)合法的人工妊娠中絶により患者の同意を得て得られた妊娠16週2日のと卜胎児肺組織を14C-androstenedioneを基質としてincubate し,クロマトグラム上estradiolと近似のRfを示す生成物を得,estradiolとして再結晶を行ったが,操作中に放射能が喪失し,結果としてその生成物がestradiolでないことが確認された.(4)妊娠19週5日の合法的人工妊娠中絶により,患者の同意を得て得られたヒト胎児組織につき下記の4種のincubationを行った. ① 14C-androstenedioneを基質として肺組織,② 14C-testosteroneと肺組織, ③ 14C-androstenedioneと腎組織,④ 14C-androstenedioneと腓腹筋.その結果①においてはestrone, estriolの生合成をそれぞれ0.15%,0.04%の転換率で同定し, ②においてはestrone生合成を0.26%の転換率で同定した. ③④においてはestrone生合成はみられなかった.( 5 ) HEL-53培養株細胞を14C-cholesterolを基質としてincubation したがestrogenの生合成は認められなかった.(6) HEL-53培養株細胞を新生児臍帯血中値に近い培養液ml当たり20.3ngのestrone, 3.86ngのestradiolを加え,14C-androstenedioneを基質としてincubateしたが, estrogenの生合成は認められなかった.上述の検索結果よりin vitroでヒト胎児肺組織はandrostenedione, testostroneよりestroneを生合成するaromatization活性を有することが認められ,またestriol生合成の酵素活性も有することも示唆された.しかし,このaromatization活性のinvivoにおける意義については不明で,今後さらに検索されるべきであると考える.

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