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Online edition:ISSN 2758-089X

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1980.04.06

Relationship Between Osmotic Resistance of Erythrocytes and Lipid Composition of Erythrocyte Membrane in Liver Diseases

肝疾患における赤血球膜脂質分析を行ない,赤血球浸透圧抵抗との関連につき検討した.赤血球膜脂質はIatroscan TH-10 TLC analyzerにより,遊離コレステロール(FC),ホスファティディルエタノールアミン(PE),ホスファティディルセリン(PS),ホスファティディルコリン(PC)およびスフィンゴミエリン(SM)に分離された.肝硬変や慢性肝炎ではFCの増加とPEの減少が認められ,急性肝炎や肝癌では,それ以外にPCの増加を認めた.溶血終末点(HEP)は総脂質, FC, SMとの間に高い相関があり(p<0.001),PEとも良好な相関(p<0.01)がえられた. HEPとPCとの相関は肝疾患ではみられなかった.

1980.04.05

Study on Cranial Computed Tomography in Infants and Children with Central Nervous System Disorders Part 2. Findings of Cranial Computed Tomography in Patients with Cerebral Palsy

脳性麻痺患者110名に対し頭部CTと脳波検査を施行し,以下の結果を得た.1)病型別にみたCT異常率は痙直型四肢麻痩69 %, 痙直型片麻痺75%, アテトーゼ型23%,混合型50%であった.2)痙直型四肢麻痺では広汎性脳萎縮,痙直型片麻痺では麻痺側と反対側の半球性脳萎縮が大部分を占め, アテトーゼ型では異常を示すものは少なく,異常があっても軽度の広汎性脳萎縮であった.3)知能の低いもの程CT異常率も異常の程度も強かった.4)てんかんを伴うものでは伴わないものよりCT異常率が高かった.5)基礎波の異常とCT異常はよく対応し,基礎波とCTの異常側は大部分の例で一致した.6)発作波出現側とCT異常側とは1/3~1/2で一致したが,発作波出現部位とCT異常部位とは11 %で一致したにすぎなかった.

1980.04.04

Study on Serum Concentration of Anticonvulsants given to Children with Convulsive Disorders Part 2. Diurnal Variation of the Serum Concentration of Anticonvulsant

抗てんかん剤服用中のてんかん患者について, EMIT法により Phenobarbital (以下PBと略す), Phenytoin (PHTと略す), Primidone (PRMと略す), Ethosuximide(ESMと略す), Carbamazepine (CBZと略す)の5種類の抗てんかん剤の血中濃度を測定し,その日内変動を検討し,次の結果を得た.1. PBの血中濃度の日内変動は12例中の10例において極めて少なく,血中濃度は安定しており, 2例においては±15~30% の変動を認めた.2. PHTの血中濃度の日内変動は12例中の9例において可成り大きかった.3. PRMの血中濃度の日内変動は9例中の8例において可成り大きく,ばらつきがみられた.4. CBZの血中濃度の日内変動は6例全例において大きかったが,朝服薬2~3時間後に,血中濃度が最高に達する傾向を認めた.5. ESMの血中濃度の日内変動は4例ともに僅少で,血中濃度は安定していた.

1980.04.03

Difference in the Resistance to Killing Action by Polymorphonuclear Leukocytes between two Strains of Staphylococcus aureus with and without Protein A

黄色ブドウ球菌の二種の異なる菌株,すなわちproteinA保有株CowanI株と非保有株Wood46株の多形核白血球(PMNと略す)による殺菌作用に対する抵抗性をしらべ,つぎの結果を得た.(1)両菌株を不活化ヒト血清でオプソナイズし,ヒトPMNに貪食させると,食菌2時間後におけるCowanI株のPMN内残存生菌数はWood46株のそれよりも1.5log高い値を示した.同様にモルモットPMNを用いた場合にCowanI株はWood46株よりも1.3log高い残存生菌数を示した.しかしモルモットPMNによる nitroblue tetrazolium (NBT)還元能には両菌株のあいだに有意の差は認められなかった.(2)オプソナイズしたCowanI株を0.001% (W/V) H202存在下4時間培養した時の生菌数は,同様に処理したWood46株の生菌数よりも1.1log高い値を示した.同様の結果がオプソナイズしない両菌株についても得られた.これらの結果は PMNの殺菌作用における両菌株問の抵抗性の相違が,両菌株に対するPMNの殺菌活性の相違に基づくものではなく, PMN殺菌効果を担うと考えられているH202に対する抵抗性の相違に依存することを示唆している.

1980.04.02

Evaluation of Plate-Thermography for Diagnosis of Breast Cancer and Study of Thermal Patterns for Normal Breast

乳腺疾患234例と正常女性408例について,プレートサーモグラフィーの熱画像を検討し,以下の結果をえた.1.乳房に腫瘤を触知する216例について,腫瘤の熱画像を4型に分類しえた.癌では,腫瘤に一致する青色高温の熱画像と集中する不規則な血管像(T-IIb.c型)や,腫瘤を取り巻く青色高温の血管像(T-III型)が高頻度に認められた.2.冷風冷却法(dynamic method)は,乳癌の鑑別に特に有用な方法であった.3.乳癌39例と良性疾患154例におけるプレートサーモグラフィーの診断率は true positive rate 82.1%, true negative rate 79.2%であった.4.プレートサーモグラフィーを,触診,マンモグラフィー,超音波断層法と同時に併用することは,乳癌の診断に有効であった.5.プレートサーモグラフィーにより,正常女性の乳房熱画像を4型に分類したが,それらには年齢との相関が認められた.

1980.04.01

Studies on the Growth of Varicella-Zoster Virus (VZV) III. Simple Titration Method of VZV Infectivity by Means of Nigrosin Staining Technique

Varicella-zoster virus (VZV)の簡単な力価測定法の確立のためにニグロシン染剤を利用したVZVフォーカス特異染色法を試み以下の結果を得た.1. VZVの感染によってフォーカス形成が認められた細胞シートを0.5% ニグロシン-PBS(+)で15分間染色を行なった. フォーカスは特異的に黒色に染まり,感染5日後肉眼的に計測可能となった.この染色法によるフォーカス数は光学顕微鏡下で計測したフォーカス数と一致した.2.接種に使用するVZV保有細胞を倍数的に希釈して新たな細胞に接種すると接種細胞数とそれによって出現したフォーカス数の間には明らかに比例関係が認められた.3.本法により計測されたフォーカス数は少なくとも9日間を必要とするブラック法で得られた値とよく一致した.以上の結果よりニグロシン液によるフォーカス染色法がVZVの感染価測定法として簡便で,きわめて有用であることが判明した.この方法を応用して経時的に感染細胞数の増加を調べた結果について述べた.

1980.03.11

A Clinical Case Showed Quadriceps Myopathy as a Manifestation of Limb-Girdle Muscular Dystrophy

50歳の男性が5年前から徐々に進行した歩行障害と,両側大腿部の筋萎縮を主訴として入院した.両側大腿四頭筋と大殿筋に筋力低下が認められたが,他の四肢筋の筋力は,ほぼ正常であった.筋電図で大腿四頭筋にわずかに筋原性と思われる所見が認められ,同部の筋生検で典型的な筋ジストロフィー症の病像が得られた.我々はこれを,肢帯型筋ジストロフィー症の1亜型と考えた.

1980.03.10

Effects of Parenteral Nutrition on Tumor Growth - An Autoradiographic Analysis -

経静脈的栄養法がラットに移植した佐藤肺癌腫瘍に与える影響を組織学的に,またautoradiographyを使用して検討した.1.腫瘍増大率は低カロリー輸液群で著明な低値を示したが(2.68±0.82, p<0.001),高カロリー輸液群と経口群には差を認めなかった(5.19±1.50, 5.72±1.69).2.高カロリー輸液群の腫瘍細胞は他の2群に比して大きい傾向が認められた.3.分裂指数,標識指数ともに低カロリー輸液群では低値で,この傾向は腫瘍中心部で強かった.4.標識指数は高カロリー輸液群で経口群に比して高値を示し,腫瘍中心部でも標識性が維持された.また,標識された分裂数は経口群に比して低値であった.5.以上の検討の結果,経静脈的栄養法では増殖相に動員される腫瘍細胞の増加ないしは維持が推定された.このことは抗腫瘍化学療法上,有利な点と考えられた.

1980.03.09

Study on Cranial Computed Tomography in Infants and Children with Central Nervous System Disorders Part 1. Findings of Cranial Computed Tomography in Normal Cases

頭部CT検査を行なった一般患児の中で,臨床所見上もCT所見上も頭部に器質的な疾患がないと判断できた282名のCT像を研究対象として,正常頭部のCT所見の年齢別基準を作製しようと試み,以下の結果を得た.1) bifrontal CVI, bicaudate CVIは共に1歳代, 1歳未満がやや大きく, 2歳以降はほほ一定の値であった.2)第3脳室の最大幅は各年齢を通じて0.9~6.0mmであったが, 1歳代では他の年齢群よりやや大きい傾向を示した.3)大脳縦裂は2歳未満では全例に認められたが,その最大幅はいずれも7.5mm以下であり, 6歳以上では3.2mm以下であった.4)大脳溝の最大幅はすべて7.5mm以下であったが, 2歳以上では3.2mm以下となり, 11歳以上では全例認められなかった.5)シルビウス裂溝は2歳未満では全例に認められ,最大幅は7.5mmであったが, 4歳以上では5.0mm以下, 10歳以上では1.4mm以下となった.6)前頭部のくも膜下腔は1歳未満では全例に認められ,最大幅は9.0mmであったが,6歳以上では全例認められなかった.

1980.03.08

Scanning Electron Microcsopic Studies on the Experimental Peritoneal Dissemination of the Rats and the Morphological Effects of Mitomycin C

腹膜播種の成立過程を追求するために AH130細胞の5×106個をラット腹腔内に注入し,腹膜面における着床増殖像の経日的変化を観察した.さらに,癌細胞移植後3日目より種々の量のMMCを腹腔内に投与して,腹膜播種に対するMMCの予防効果を検討した.また,移植後6日目より治療を開始して,腹膜播種癌細胞に対する効果を電顕的に観察し,以下のような結果を得た.I. AH130移植後3日目までは,癌細胞の着床は肝表面,壁側腹膜において観察されず,中皮細胞の微絨毛にのみ軽度の変化を認めた.II.移植後4日目以後になって,肝表面,壁側腹膜の中皮細胞上に癌細胞の着床像を認めた.中皮細胞は,移植後5~6日目になると,凹凸不整でやや丸みを帯び,中皮細胞間結合に間隙を生じ,微絨毛も短縮傾向を示した.III.移植後7日削こなると,中皮細胞上に一層の癌細胞の集合像が観察された.中皮細胞は変性して,紡錘型を呈していた.IV.移植8日目以後,癌細胞の集塊は多層化の傾向を示し,集塊同志があたかも融合する様な像が観察され,基底膜を破壊して浸潤していた.中皮細胞は変性し,一部では欠損して結合組織の露出が認められ,残存する細胞の微絨毛は短縮して瘢痕状となっていた.これらの中皮細胞の変性は肝表面では壁側腹膜に比べ軽微であった.V. AH130の着床増殖過程は,肝表面,壁側腹膜においてほほ同じ時期に始まり,差異は認められなかった.VI.実験的腹膜播種の予防を目的として AH130移植後3日目よりMMCの腹腔内注入を開始したラット群において,MMCの総投与量3,000mcg/kg未満では着床の早期にのみ有効であった.末期に至るまで予防効果を得るには, MMCに感受性の高いAH130においても,総投与量4,000mcg/kgの大量を必要とし,その際の中皮細胞の変性は強く,単独投与は予防法として適当であるとはいいがたい.VII. AH130移植後6日目より治療を開始したラット群において,MMCの投与量の増加に比例して腹水量は漸減し,腹水中の癌細胞の変性も高度になったが,腹膜播種癌細胞の増殖抑制効果はなく,総投与量3,000mcg/kgに至って有効であり,4,000mcg/kgにおいて著効を示した.この結果,腹水の減少,腹水中の癌細胞に対する治療効果と腹膜播種癌細胞に対する治療効果とは相関しているとはいいがたく,大量投与には限界があるために,投与法の工夫が今後の課題である.VIII. MMC治療群において,肝表面,壁側腹膜の中皮細胞の変性を比較すると,癌細胞の増殖部位を除けば,肝表面の方が,細胞の配列は良く保たれており,欠損部位もほとんど認めなかった.肝表面の中皮細胞の方が癌細胞の浸潤や MMCによる損傷に対して抵抗性を持つことが示唆された.

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