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Online edition:ISSN 2758-089X

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1988.02.22

A Case of Lung Cancer with a Giant Thin-walled Cavity *

肺気腫のある81歳男性が血痰を主訴に入院した.入院時の胸部X線写真にて左上肺野に長径8cmの薄壁空洞を認めた.断層写真,胸部CTにおいてもほほ同様の所見で,一部壁の肥厚を認めた.気管支ファイバーによる空洞部の擦過細胞診から角化傾向のある異型細胞を検出し,またtumor marker のSCCの上昇を認めたことより,扁平上皮型肺癌と診断した本例のように巨大薄壁空洞を呈する肺癌はまれなものと考えられ,経過より考えその形成にはvalvular obstruction の関与が考えられた.(昭和63年1月8日採用)

1988.02.21

Clinical Studies on Gangrene and Ulcer of the Legs with Chronic Arterial Occlusive Diseases *

昭和50年1月から昭和61年12月末までに当教室で入院加療した慢性動脈閉塞性疾患患者のうち,下肢の壊死・潰瘍を伴うものは142例であり,これを対象として,原疾患,血管造影上の動脈閉塞部位,初回治療と壊死・潰瘍に関する予後等について検討した.また,患肢の皮下及び骨格筋内の組織酸素分圧(PtO2)を測定し,虚血領域における組織変化についても検討した.疾患別では壊死・潰瘍例は,慢性閉塞性動脈硬化症(ASO)より閉塞性血栓血管炎(Buerger病,TAO)が高率であった.腸骨・大腿動脈など太い動脈の閉塞性病変を主とするASOにおいても,壊死・潰瘍を伴う例では,動脈閉塞が膝窩動脈以下の末梢に及ぶ例が多かった.末梢病変を主とするTAOではほほ全例で膝窩動脈以下に閉塞が見られた.major amputation を免れたものを治療有効とすると,初回治療の有効率はASOで64%,TAOで92%であった.100%酸素吸入時のPtO2が10mmHg未満の部位では骨格筋に不可逆性変化を認め,40mmHg以上の部位で切断を行えば創の一期的治癒が期待できる.(昭和62年12月23日採用)

1988.02.20

A Case of Metaphyseal Chondrodysplasia Schmid Type *

低身長,0脚を主訴とする, metaphyseal chondrodysplasia Schmid typeを経験した.四肢短縮の小人症であるこの疾患は,クル病,その他の骨系統疾患と類似し,低身長,O脚,内反股を呈し,X線学的には,四肢長管骨のmetaphysisが漏斗状を呈し,骨端軟骨線に接した部位では, flaring, cupping, irregularityを示していた.変形は,大腿骨近位及び遠位端,脛骨近位及び遠位端,上腕骨近位端,橈骨遠位端に認められた.手指骨の短縮はなく,手根骨における骨年齢も正常であった.頭蓋骨では,冠頭蓋などの異常はなく,また,脊椎,肋骨,骨盤骨に著変は認めなかった.血清Ca値,血清P値などの血清生化学検査等異常なく, metaphyseal chondrodysplasia Schmid type と診断した.O脚矯正の目的で両側脛骨骨切り術,両側大腿骨骨切り術が施行された.現在,0脚,内反股は矯正されているものの低身長である.早期に診断を付け,予想される変形に対して,できるだけ早く矯正手段を構ずるべきであると考える.(昭和62年12月7日採用)

1988.02.19

Accidental Exposure to Hepatitis B Virus among Hospital Personnel *

医療従事者におけるHBV感染の実態を明らかにするため,著者らは,川崎医大附属病院医療従事者を対象に昭和57年4月より,62年3月までの5年間の事故内容の検討を行った.5年間の発生件数は131件で医師(40.5%)と看護婦(49.6%)で90.1%を占めていた.原因として注射針刺傷(60.3%),傷口への血液付着(16.8%)および手術中の刺傷(14.5%)が主なものであった.事故によると思われる急性肝炎の発生は5例みられ,うち3例はHBIGの投与にもかかわらず発生した.これらの結果は感染事故時, HBIGによる受動免疫のみならずHBワクチンによる能動免疫の併用が肝炎の発症の予防に有用であることを示唆している.またhigh risk 病棟に勤務する医師や看護婦に対するHBワクチンの接種が可及的早く施行されるべきであると考えられる.(昭和62年10月21日採用)

1988.02.18

A Case of Dentatorubropallidoluysian Atrophy with Pseudo-Huntington’s Form *

歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症のpseudo-Huntington’s form の1例を報告した.45歳女性, 1976年35歳頃より動作がぎこちなくなり, 1979年頃より記憶,感情障害,四肢や顔面のchorea,歩行障害が出現し, 1983年頃より症状が増悪したため, 1986年6月に入院した.患者の家系図からは常染色体優性遺伝の疾患が疑われた.神経学的には,爆発性断綴性構音障害,顔面,頸部と四肢のchorea,四肢の協調運動障害を認め,歩行はwide-base, IQ (WAIS)は64であった.脳波では群発性高振幅徐波を認め,頭部X線CTでは,脳幹部が中等度萎縮,小脳が軽度萎縮していたが,大脳半球,尾状核,中小脳脚に萎縮はなかった. 123I-IMPによるSPECTでは,基底核に集積低下を認めたが,大脳半球,小脳半球は正常であった. MRIはX線CTの所見以外には,基底核,歯状核,赤核に異常な信号域はなかった.haloperidolの投与にてchoreaは消失し,背後に隠れていた小脳失調症状が前景に現れた.本症のchoreaは淡蒼球ルイ体系,小脳症状は歯状核赤核系の病変によるものと考えた.これらの系統が連合性に変性する常染色体優性の遺伝疾患,つまり本症は歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)か, Joseph病の可能性があるが,臨床症状,脳波,X線CT, SPECT, MRI所見から,臨床的にはDRPLAとするのが妥当と思われた.しかし,両疾患とも独立疾患としてはまだ確定されておらず,本症の位置づけについては,以後の詳細な検討が必要である.(昭和62年10月1日採用)

1988.02.17

Endoscopic Examination for Mallory-Weiss Syndrome *

1981年より1986年の6年間に21例のMallory-Weiss症候群を経験した.性別では男性は20例で,女性は1例であった.年齢は平均47歳で,15歳から73歳に及んでいた.9例ではアルコールが原因であった.内視鐃検査では,裂創は11例(52%)が胃限局型,3例が食道限局型,4例が食道胃併存型であった.また,壁在性では,小彎に存在するものが多かった(55%).裂創の数は,1条が12例,2条が7例,3条が1例であった.裂創の長さは30 mm までで,平均11.1 mmであった.輸血は5例で施行されたが,手術を必要とした例はなかった.(昭和62年11月6日採用)

1988.02.16

Juvenile Polyp of the Large Intestine Removed by Endoscopic Polypectomy ― Report of 3 Cases ― *

大腸若年性ポリープの3例を経験した.症例1は14歳男性例で,下血を主訴として来院した.S状結腸に有茎性ポリープを認め内視鏡的ポリペクトミーを施行した.組織所見では若年性ポリープであった.症例2は5歳女性例で,下血を主訴として来院した.直腸に有茎性ポリープを認め内視鏡的ポリペクトミーを施行した.組織所見では若年性ポリープであった.症例3は14歳男性例で,下血を主訴として来院した.直腸に有茎性ポリープを認め内視鐃的ポリペクトミーを施行した.組織所見では若年性ポリープであった.内視鏡的ポリペクトミーは,若年性ポリープの診断と治療に有用である.(昭和62年10月30日採用)

1988.02.15

A Clinical Aspect of 6 Cases of Drug* Induced Esophageal Ulcers *

過去13年間に当院内視鏡センターで明らかに潰瘍,びらんのみを形成し薬剤性(主に抗生剤)と判断できた計6例の食道潰瘍につきその臨床像,内視鏡所見を検討した.男女比は2対4,平均年齢は36.5歳.原因薬剤は抗生剤5例(ドキシサイクリン3例,バカンピシリン2例),排卵促進剤1例,症状は急性の胸骨後部痛または胸やけ.食道潰瘍発生部位は抗生剤によるものはすべて中部食道と一部下部食道,排卵促進剤の例は食道下端であった.数は多発が4例,単発が2例,食道X線検査は4例に行われたが確実にニッシェを指摘できたのは1例のみだった.明らかに抗生剤によるものは中部食道に潰瘍・びらんが発生し内視鏡的診断が有用だった.できるだけ投与薬剤の確定と早期の内視鏡検査が必要であると考えられた.(昭和62年10月17日採用)

1988.02.14

A Case of Carcinoma Occurring- in Duplication (Congenital Diverticulum) of the Esophagus *

食道拡張部に発生した食道癌の1例を経験した.症例は47歳女性で,8歳頃より嚥下障害があった.昭和56年に嚥下障害のため当科に入院した.食道造影では上部食道に嚢状の拡張部とその肛門側に狭窄を認め,この拡張部に隆起性病変を認めた.嚢状の拡張部の大きさは7×10 cm 大で,隆起性病変は5×8cm大であった.内視鏡検査では,拡張部に隆起性病変を認め,その部の生検より扁平上皮癌と診断された.放射線療法を施行したところ,腫瘍は消失し,5年間経過観察するも再発を認めていない.食道造影では,この拡張部は二つの部分よりなり,食道に連続する本来の食道と思われる部分の前方に嚢状に拡張した部分が存在し,食道重複症(先天性食道憩室)と診断した.このような大きな食道重複症内に食道癌が発生することは極めてまれである.(昭和62年9月30日採用)

1988.02.13

A Case of Intussusception Caused by Cancer Originating from a Polyp of the Ascending1 Colon *

症例は50歳女性で, 1977年に上行結腸ポリープと診断されていたが放置していた. 1987年5月に腹痛を主訴として入院した.注腸造影と内視鐃検査を施行したが,10年前にポリープが存在した部位に4×4cm大の腫瘤を認め,この腫瘤が横行結腸へ重積を起こした.右半結腸と領域リンパ節を切除した.切除標本は, 4.9×4.1 cm大のBorrmann l型の癌で,組織学的検査では高分化型腺癌で漿謨への浸潤を認めた.(昭和62年9月29日採用)

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