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Online edition:ISSN 2758-089X

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1989.02.17

Statistical and Clinical Studies of Malignant Lymphomas Treated during the Last 10 Years *

1978年より1988年までの10年間に入院治療を行った悪性リンパ腫25症例について統計学的・臨床的検討を行った.1)発症頻度は男性:女性で2:3とやや女性に多く,50歳以降に漸増する傾向にあった.2)主訴は頸部リンパ節腫脹が7例(28%)と最多で以下耳下部腫脹4例(16%),咽頭異常感4例(16%)であった.3)初発部位はWaldeyer咽頭輪が11例(44%)と最多で,頸部リンパ節は9例(36%)であった.4)病期分類では,I期1例(4%),Ⅱ期5例(20 %)Ⅲ期1例(4%),IV期18例(72%)でⅢ期・IV期の90%以上が50歳以上であった.5)最近5年間は初回から強力な化学療法(CHOP, COPP)で寛解導入が行われ放射線療法を大多数に施行するようになった.6)治療効果判定基準(木村ら)1)に従うと寛解効果は64.5%であったが,Ⅲ期とIV期における5年生存率は皆無であった.(平成元年3月18日採用)

1989.02.16

Smoking among Physicians of a Medical School Hospital *

川崎医科大学附属病院における医師の喫煙率および喫煙に対する態度についてのアンケート調査を実施した.対象は教授35名,助教授25名,講師68名,助手・研修医110名の計238名の男性医師である.アンケートの回収率は50.4% (講師以上60.9%,助手・研修医38.2%)であった.医師全体では24.2%が喫煙者であり, 33.3%が元喫煙者, 42.5%が非喫煙者であった.講師以上の喫煙率は12.8%であるのに対して,助手・研修医の喫煙率は45.2%と高かった.年齢階級別に喫煙率をみると,年齢が若い方が喫煙者の割合が多かった(35歳未満35.0%, 35~49歳19.4%, 50歳以上6.9%).現在のわれわれの病院における問題点は,若年医師の喫煙率が高いことである.西暦2000年までには病院からタバコの煙がなくなること(smoke-free hospital)が達成できるよう希望する.(平成元年3月2日採用)

1989.02.15

Quality Assurance Program in Surgical Pathology Service *

本学附属病院病理部で行っている精度管理体制をまとめた.これは,過去,外科病理学発展の中で築き上げられてきたものを我々なりに,そして我々の部門に利用できるように修飾し作り上げたものである.病院内における外科病理部門は臨床の一部門として機能し,患者を直接世話する臨床医のコンサルタントとしての役割を果たす.また,病理診断は,一般に最終診断的要素をもっている.したがって自らの診断が独断的にならないために,また,病理診断の精度を向上させるために,このような精度管理体制作りが必要であることを強調したい.(平成元年2月16日採用)

1989.02.14

Vascularized Composite Grafts Made Using a Microsurgical Technique *

高度先進医療として厚生省からマイクロサージャリーによる血管柄付組織移植が指定された昭和61年1月から昭和63年3月末までに整形外科で施行した21症例について報告した.血管柄付皮弁移植8例,同骨移植7例,同骨皮弁移植4例,同筋皮弁移植2例で,全例に活着が得られ,腸骨移植の1例を除きすべてに所期の目的の良好な結果を得た.高度の技術を必要とするが,従来の手術では処置し得ない皮膚,骨,筋肉などの大きな組織欠損を一期的手術で再建できる有用な方法である.(平成元年3月30日採用)

1989.02.13

Structural Analysis of Abnormal Hemoglobin with Amino Acid Substitution in the γ Globin Chain―HbF-Onoda *

健康な新生児の臍帯血から得た溶血液を等電点分画すると,HbFとHbAの間に泳動される異常ヘモグロビンがあることを示した.この異常ヘモグロビン含量は全ヘモグロビンの26.4 %を占め,またHbF含量は48.7%であった.グロビンのCM-セルロースカラムクロマトグラフィーぱγ鎖異常を示した.構造解析は,異常γ鎖のトリプシン消化物のフィンガープリントにみられた異常ペプチドのアミノ酸分析や,カルボキシペプチダーゼAによるC一末端アミノ酸分析によって行われた.この結果,異常γ鎖では,C一末端位(γ-146)においてHis→Tyrの置換が起こっていた.またγ-75位とγ-136位のアミノ酸は,それぞれ11eとGlyであった.このアミノ酸置換をもつヘモグロビンの例は,これまでに報告はなく,我々はこの臍帯血液の採取された病院のある市名にちなんでHbF-Onoda [a2 GγI2 146 (HC3)His→Tyr]と命名した.(平成元年4月4日採用)

1989.02.12

Transient Potentiation of Tension during Recovery from Treatment with Nifedipine and Verapamil in Bullfrog Atrium Trabecullae *

ウシガエル心房壁筋にnifedipineを与えると,収縮は減弱ないし消失するが,ここでnifedipineを分解する目的でxenon光を照射すると,その作用からの回復期において収縮力が一過性に増大する.この一過性収縮増強は30%以上にも達し数分持続した後,対照値にもどる.この収縮力増大は単にnifedipineを洗い去るだけではおこらない. xenon光は紫外線を含み,それ自体収縮を増強する作用を有しているが,その程度は10%にすぎないnifedipine作用後の一過性収縮増強作用は, nifedipine作用中Ca流入が減少して細胞内のCa除去機構は抑制された状態にあり, nifedipineが速やかに分解されるときはCa流入は回復するが,Ca除去機構の抑制が残存していることが,収縮の一過性増大をもたらす原因と推測される.このCa除去機構のーつとしてNa-Ca交換の抑制が考えられる.(平成元年2月28日採用)

1989.02.11

Effect of Hypoxia on Monoamine Content in the Rat Brain *

ラットを用いて60分間の低酸素負荷中および負荷後における脳含有monoamine (noradrenalin : NA, dopamine : DA, serotonin : 5-HT)の変動を測定し,低酸素がこれらのmonoamineに及ぼす影響を検討した.低酸素負荷は,6%02および94 % N2Oの混合ガスを流入した密封chamberにラットを留置することによって行った. monoamineの測定は,ラットを断頭した後,脳の各部位をすみやかに摘出し. high performance liquid chromatography (HPLC法)で,皮質,線条体,視床下部,海馬,脳幹の5か所について,負荷中および負荷120時間後まで経時的に行った.その結果,NAは皮質,視床下部,脳幹で低酸素負荷により増加し,30分でピーク値を示した.その後減少し,これらの部位ではよく似た変化様式を示した.いずれの部位も低酸素負荷終了120時間後にはcontrol値に復した.DAは海馬を除くすべての部位で低酸素負荷により増加し,30分で最高値に達した.その後徐々に低下し,負荷後120時間後にはcontrol値に復した.ただし,海馬は, 120時間後には最も低値を示した.5-HTはいずれの部位においても低酸素負荷により徐々に上昇し,負荷後も高値を示した. 120時間後においても皮質,線条体,視床下部,および海馬ではcontrol値より高値を示した.以上,脳における低酸素負荷は, monoamineの活性化を促進するが,この場合, NAやDAが一過性であるのに対し, 5-HTは持続的であるのが特徴であった.このことは,5-HTの神経細胞もしくは線維における低酸素による障害の機序が,NAやDAと異なることが示唆された.(平成元年2月23日採用)

1989.02.10

A Trial for Bone Mineral Determination in Lumbar Vertebrae from a Lateral View Using by Dual Photon Absorptiometry *

二重光子吸収測定法による腰椎側面の骨塩定量を可能にするため,解決すべき種々の問題点についての検討を行った.検討項目は,①直接線が入射することによって引き起こされる高計数率に起因する問題として,計数率の数え落とし, pile-up, misplaced event count rate および背部体厚報償フィルタの検討を行い,②前後像に比して被写体厚が増加することに伴う影響として, beam hardening と spill-overの検討を行った.また,臨床的検討として,測定精度および椎体部と関節・突起部との骨塩量の比を求めた.その結果,高計数率の問題点は,現在の線源強度(50 mCi)であれば,体厚補償フィルタを使用することによって解決されるが,計測時間を短縮するために線源強度を増加させることは不可能であった.被写体厚の増加に起因する諸問題は,体厚が25cmを超えるときに認められた.これは,153Gdを線源に使用していることによるものであり,X線を使用すれば解決できる.また,測定精度は,臨床に要求される値よりも劣っていた.骨塩量の比に関しては,側面像の有用性が示された.このように,153Gdを線源に使用した二重光子吸収測定装置では腰椎側面の骨塩定量は難しいことが認められた.ただし,X線を線源とした装置では実現の可能性があり,今後更なる検討が望まれる.(平成元年1月10日採用)

1989.02.09

Clinical Observations on Jaw Cysts in Children ―Comparison with Adult Jaw Cysts― *

最近10年間に当科において,顎骨嚢胞と診断され処置を受けた患者のうち,病理組織学的に検索が可能であった症例について,臨床的に検討した小児の顎骨嚢胞を中心にその概要を報告する.対象となった顎骨嚢胞全症例数は122例で,その内訳は歯根嚢胞が68例と最も多く,ついで濾胞性歯嚢胞26例であった.その他残存嚢胞,歯原性角化嚢胞,顔裂性嚢胞,術後性上顎嚢胞,外傷性骨嚢胞などがあった.15歳以下の小児の顎骨嚢胞は18例で全体の14.8%を占めた.このうち最も多くみられた嚢胞は濾胞性歯嚢胞の14例で全濾胞性歯嚢胞の過半数を占め本嚢胞の発生年齢の若年傾向がみられた.また残存嚢胞,歯原性角化嚢胞,顔裂性嚢胞,術後性上顎嚢胞は小児例ではみられなかった.(平成元年3月17日採用)

1989.02.08

Analysis of the Effect of Cisplatin on Prolongation of the Survival Duration Period in Ovarian Cancer Cases *

卵巣癌に対する化学療法としてcisplatin (CDDP)使用群と非使用群を臨床期別・cytological grading 別・pattern grading 別・腫瘍別に分け,その生存率を比較検討した.1.臨床期別ではⅡ期においてCDDP使用群に生存率が有意に良好であった.2. cytological grading 別ではG2においてCDDP使用群に有意に良好であった.3. pattern grading別ではwell patternにおいてCDDP使用群に有意に良好であった.4.腫瘍別ではserous cystadenocarcinoma において全症例を比較した場合にCDDP使用群に有意に良好であったが.Ⅱ期及びⅢ期では有意差はなかった.(平成元年3月10日採用)

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